Draghi Signals Boost to Stimulus Program.
欧州中央銀行(ECB)は22日、マルタで開催した定例理事会で市場予想通り政策金利にあたるリファイナンス金利を0.05%で据え置いた。上限金利の限界貸出金利も0.30%、下限金利の中銀預金金利もマイナス0.2%で維持している。
ドラギECB総裁は記者会見で、明確にハト派路線へ軸足を移した。会見の導入で読み上げる声明にて「成長並びにインフレ見通しは、海外及びエマージング市場のほか、金融市場、商品市場の動向によって下方修正する懸念がある」を指摘。インフレに対しては「中期的にインフレ参照値『2%付近』の達成を困難とさせる要因が根強く残る」と説明し、質疑応答では「警戒(vigilance)を持ちたい」とVワードを放った。その上で「スタッフ経済見通しが公表される次回12月(3日)の理事会では、あらためて緩和策を精査する必要があるだろう」と明言し、追加緩和への扉を開いた。なお前回9月の理事会では、資産買い入れの際の一銘柄の上限を25%から33%への引き上げた経緯がある。
QEをはじめとする支援策については、前回に続き「完全実施(full implementation)」を確約した。資産買い入れプログラムは、予定通り2016年9月まで実施する構えをあらためて表明。今後「必要とあれば延長する(or beyond. if necessary)」構えを再度強調した。
マルタでの理事会で、追加緩和へ向け地ならし。
(出所:ECB/Flickr)
経済活動については「ダウンサイド・リスクを引き続きたどる」とし、背景に「エマージング市場」を挙げ不透明性が高まったと説く。また「外需の低下につながり輸出が減少すると見込まれるほか、金融市場の動向がユーロ圏需要に悪影響を及ぼす」可能性にも触れた。質疑応答では中国から派生するユーロ圏へのリスクについて言及し、1)ユーロ圏の中国向け輸出の比率は全体の6%で特段大きくはない、最大でも独で10%、2)原油価格、商品先物、金融市場から通じた中国リスクは間接的で傑出していない、3)世界における信頼感はそれほどでもない――とし、下振れ余地が残るにしても中国成長率が6%以上で推移するならば深刻な不安材料ではないと述べた。前回のように、比較的楽観的なトーンを残す。
BNPパリバのケン・ウォトレット欧州担当主席エコノミストは、結果を受けて「定例次回前に予想していた1)金融政策の選択余地を協議する、2)12月公表のスタッフ経済見通しを強調する(政策対応と整合性をつけるため)、3)低インフレへの『警戒(vigilance)』を表明する、4)金融市場状況への気配りを図る――といった項目全てが当てはまった」と指摘。記者会見での導入部分も「ECBメンバーの全会一致を経て修正されるだけに、数多くの変更点を確認したことは重要」と分析する。その上で「12月の理事会では預金準備金利を10bp引き下げ」を見込み、バランスシートの変更などは環境が悪化した場合の選択肢として残すとの考えを示した。
——前回から大きくハト派路線へ舵を切ったドラギ総裁の発言を受け欧州株高・欧州債高・ユーロ安で反応しました。米株をはじめ世界株式高を支え、リスク・オン相場の火に油を注いだ格好です。
(カバー写真:ECB/Flickr)
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