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フィリーは3ヵ月ぶりに分岐点を回復、エンパイアは低迷継続

by • November 22, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off1055

Manufacturing Sentiment Shows Some Signs For Improvement.

先週は、ニューヨーク連銀をはじめ各地区連銀が製造業景況指数を発表しました。ひとつずつ、おさらいしていきましょう。

▽米11月NY連銀製造業景況指数、4ヵ月連続で分岐点割れ

米11月NY連銀製造業景況指数(エンパイア)はマイナス10.74となり、市場予想のマイナス6.5を下回った。金融危機の衝撃が冷めやらぬ2009年8月以来の水準へ沈んだ8月のマイナス14.92ほど悪化しなかったとはいえ、4ヵ月連続でマイナスをたどる。項目別では新規受注をはじめ出荷、雇用が改善した一方、平均労働時間や在庫が下げ幅を広げた。なお10月公表分のベージュブックでは製造業を下押しする圧力であるドル高をはじめ世界景気、中国動向のほか、シリア問題が指摘されていた。

項目別動向は、以下の通り。

・新規受注 マイナス11.82>前月は18.91、2010年11月以来で最低
・出荷 マイナス4.10、4ヵ月連続で分岐点割れでも下げ幅は最低>前月はマイナス13.61
・在庫 マイナス17.27、5ヵ月連続で分岐点割れ<前月はマイナス7.55

・雇用 マイナス7.27、2ヵ月連続で分岐点割れ<前月はマイナス8.49
・平均労働時間 マイナス14.55、2011年7月以来で最低<前月はマイナス7.55

・仕入れ価格 4.55、4ヵ月ぶり高水準>前月は0.94、2009年6月以来の分岐点割れ接近
・販売価格 マイナス4.55、3ヵ月連続で分岐点割れ>前月はマイナス8.49、2009年12月以来の低水準

・入荷時間 マイナス10.91、2009年12月以来の低水準<前月はマイナス11.32
・受注残 マイナス18.18、年初来で最低<前月はマイナス15.09

現況指数は分岐点割れを維持、見通し指数も下振れ。
Empire
(出所:Federal Reserve Bank Of New York)

6ヵ月先見通し指数は20.33となり、前月の23.36を下回った。2012年12月以来の水準へ沈んでいる。ただ全般的にはそれほど悪くない。内訳をみると新規受注(20.82<前月は24.00)と出荷(21.07<前月は24.63)が落ち込んだ程度に。雇用(16.36>前月は10.38)、平均労働時間(5.45>前月は0.94)、在庫(1.82>前月はマイナス6.60)、設備投資(12.73>前月は12.64)、販売価格(11.82>前月は7.55)、仕入れ価格(29.09>前月は27.36)が前月を上回った。受注残と入荷時間も、それぞれ分岐点を回復した。

BNPパリバのブリックリン・ドワイヤー米エコノミストは、結果を受けて「ISM製造業景況指数換算では前月から0.9%ポイント上昇し44.9となり、引き続き分岐点の50を割り込んだ」と指摘。見通し指数は分岐点どころか12ヵ月平均も下回っており、エンパイアには回復の兆しは現れていない。

▽米11月フィラデルフィア連銀製造業景況指数、3ヵ月ぶりに分岐点を回復

米11月フィラデルフィア連銀製造業景況指数(フィリー)は1.9となり、市場予想のマイナス0.5より強い結果となった。前月のマイナス4.5から分岐点を回復。2012年夏以来となる連続でのマイナス圏から、3ヵ月ぶりに脱した。エンパイアと一線を画し、製造業活動が改善する兆しを反映させている。

主要な項目の内訳は、以下の通り。雇用が分岐点を回復したほか、新規受注や出荷など主要項目がそろって分岐点を維持しつつ前月から下げ幅を縮小した。一方で、仕入れ価格と販売価格など物価関連はともに下向いた。

・新規受注 マイナス3.7、2ヵ月連続で分岐点割れ>前月はマイナス10.6、2013年5月以来の分岐点割れ
・出荷 マイナス2.5、2ヵ月連続で分岐点割れ>前月はマイナス6.1、5ヵ月ぶりに分岐点割れ
・在庫 マイナス7.9>前月はマイナス17.4、2013年4月以来で最低

・雇用 2.6、分岐点を回復>前月はマイナス1.7、3ヵ月ぶりに分岐点割れ
・週当たり平均労働時間 マイナス16.2、2ヵ月連続で分岐点割れ>前月はマイナス7.3、5ヵ月ぶりに分岐点割れ

・受注残 2.4、5ヵ月ぶりに分岐点を回復>前月はマイナス11.7、4ヵ月連続で分岐点割れ
・入荷時間 0.5、分岐点を回復>前月はマイナス1.2、3カ月ぶり低水準

・仕入れ価格 マイナス4.9、6ヵ月ぶりの低水準<前月はマイナス0.1、5ヵ月ぶりに分岐点割れ
・販売価格 マイナス0.4、分岐点割れへ戻す<前月は1.3、3ヵ月ぶりに分岐点乗せ

6ヵ月先見通し指数は、43.4。前月の36.7を超えただけでなく、6ヵ月平均の41.4を抜ける上昇をみせた。10ヵ月ぶりの高水準となる。項目別をみると、そろって強含んだ。新規受注(48.8>前月は38.9)は2014年8月以来、出荷(43.9>前月は37.1)は4ヵ月ぶり、雇用(28.2>前月は14.0)は2014年9月以来で最高に。設備投資(25.9>前月は7.2)も、2014年7月以来の高水準を記録するなど、目覚ましい上昇を示す。そのほか平均労働時間(16.6>前月は0.5)、在庫(1.2>前月はマイナス5.1)、仕入れ価格(20.7>前月は17.0)、入荷時間(1.6>前月はマイナス4.2)、受注残(15.5>前月は8.1)など、そろって上向いた。

現況(オレンジ)、見通し(グレー)はそろって上昇。
Philly (1)
(出所:Federal Reserve Bank Of Philadelphia)

今回の特別質問項目は、物価見通しについて。販売価格の上昇率平均は1.0%、自社のある地域での物価上昇率の平均は3.0%、米国平均の物価上昇率は2.0%だった。自社がある地域での10年後予想は、平均2.5%の上昇を示した。

JPモルガンのジェシー・エドガートン米エコノミストは、結果を受け「ここ数ヵ月で最も下振れが目立ったフィリーで回復を確認できた」と評価する。ただ「当方がまとめる総合指数では10月の46.3から11月に48.9へ上向いたが、未だ分岐点割れにある」とも指摘。製造業景況指数は「ドル高、世界景気の鈍化、在庫余剰が今後も重石となる」とも付け加えた。

▽米11月カンザスシティ連銀製造業景況指数、10ヵ月ぶりに分岐点を回復

米11月カンザスシティ連銀製造業景況指数は1.0となり、市場予想のゼロを上回った。前月のマイナス1を超え、10ヵ月ぶりの分岐点回復を達成している。項目別動向は、以下の通り。

・新規受注 5<7、7ヵ月ぶりに分岐点を回復
・出荷 5、8ヵ月ぶりに分岐点を回復>前月はマイナス2、7ヵ月ぶりの分岐点回復に接近
・輸出 7、11ヵ月ぶりに分岐点を回復>前月はマイナス10、10ヵ月連続で分岐点割れ

・在庫(最終財) マイナス6、7ヵ月連続で分岐点割れ>前月はマイナス7
・雇用 マイナス8、10ヵ月連続で分岐点割れ<前月はマイナス3

・平均労働時間 2、9ヵ月ぶりに分岐点を回復>前月はマイナス5、8ヵ月連続で分岐点割れ
・仕入れ価格 マイナス7<前月は0、3ヵ月ぶりに分岐点回復

見通し指数は8となり、前月のマイナス1を超え3ヵ月ぶりに分岐点を回復した。内訳では生産、新規受注、出荷、新規輸出受注、設備投資、雇用、仕入れ価格など主要項目がそろってマイナス圏から脱するなど前月を上回った。

——エンパイアはドル高と原油安の爪痕を色濃く残し、分岐点回復が遠い状況です。7~9月期決算でも産業セクターは素材、エネルギー関連に続き減益・減収を計上し、それぞれ1株当たり利益が3.4%減、6.2%減でした。

Empirephilly
(出所:My Big Apple NY)

ただしフィリーとカンザスシティ連銀は、そろって分岐点を回復しています。2016年1~3月期にはベース効果を背景に増収へ転じる見通しで、伸び率予想平均では3.0%増に。アトランタ地区連銀の成長予想も10~12月期は2.3%とリセッション以降にプラス成長を回復してからの平均値2.2%を小幅ながら上回り、ドル高の逆風に耐性が出てきたようにも映ります。利上げ局面を迎え、このまま上昇トレンドを維持できるのか注目ですね。

(カバー写真:Washington State Dept of Transportation/Flickr)

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