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米11月雇用統計、12月利上げに追い風

by • December 5, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off2101

Jobs Report Clears The Way For Fed To Raise Rates.

米11月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比21.1万人増と、市場予想の20.0万人増を上回った。ホリデー商戦向け臨時雇用に押し上げられ2014年12月以来の高水準を迎えた前月の29.8万件(27.1万件から上方修正)に届かなかったとはいえ、年初来平均に並ぶ。過去2ヵ月分は10月の29.8万人増(27.1万人増から下方修正)、9月分(13.7万人増から14.5万人増へ上方修正)を合わせ、3.5万人の上方修正となる。9−11月期平均は21.8万人増で、4−6月期平均の23.1万人増以下ながら1−3月期の19.5万人増を上回った。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が19.7万人増となり市場予想の19.0万人増を小幅ながら上回った。前月の30.4万人増(26.8万人増から上方修正)に及ばなかったとはいえ、堅調な水準に。民間サービス業が16.3万人増となり、10月の27.4万人増(24.1万人増から上方修正)からは伸びを狭めた。今回もホリデー商戦前とあって小売がけん引し、金融も前月から伸びを加速。政府も3ヵ月ぶりに増加した。半面、派遣が4ヵ月ぶりに減少に転じ、ITも3ヵ月ぶりに減少した。

(サービスの主な内訳)
・貿易/輸送/ 4.9万人増、増加トレンドを維持>前月は4.3万人増
(そのうち、小売は3.1万人増<前月は4.1万人増)
・専門サービス 2.7万人増、増加トレンドを維持<前月は9.0万人増
(そのうち、派遣は1.2万人減と4ヵ月ぶりに減少<前月は2.8万人増)
・教育/健康 4.0万人増、増加トレンドを維持<前月は7.1万人増

・娯楽/宿泊 3.9万人増<前月は4.8万人増
(そのうち、食品サービスは3.2万人増、過去1年間の平均は3.1万人増)
・金融 1.4万人増>前月は1.0万人増
・政府 1.4万人増、3ヵ月ぶりに増加>前月は0.6万人減
(そのうち、連邦政府は0.6万人増>前月は0.1万人減)

・情報 1.2万人減<前月は0.2万人増

財生産業は3.4万人増と、1月以来の高水準を記録した。前月の3.0万人増に続き、2ヵ月連続で増加。3ヵ月平均では0.2万人増となり、プラス圏を回復した。建設が引き続き、全体を押し上げている。ドル高・原油安・世界景気の減速が響く製造業が前月の増加を打ち消し、米11月チャレンジャー人員削減予定数で明らかになった通り鉱業も弱含んだ。

(財生産業の内訳)
・建設 4.6万人増、増加トレンドを維持し2007年以来で3番目の高水準>前月は3.4万人増
・製造業 0.1万人減<前月は0.1万人増
・鉱業 1.1万人減、11ヵ月連続で減少(石油・ガス採掘は1900人減)<前月は0.5万人減

11月NFP、年初来平均に並ぶ。
NFP
(出所:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.2%上昇の25.25ドル(約3030円)となり、市場予想に並んだ。前月の0.4%以下となる。前年比は2.3%の上昇となり、2009年7月以来の力強さを誇った10月の2.5%に届かなかった。

週当たりの平均労働時間は34.5時間と、前月の34.6時間から短縮。製造業の平均労働時間は40.7時間となり、前月の40.6時間から延びた。もっとも、2007年以来の高水準に並んだ2014年11月の41.1時間以下にとどまる。

失業率は5.0%で、市場予想および前月に並んだ。リーマン・ショック以前にあたる2008年4月以来の低水準を維持している。9月米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2015年末予想のレンジ下限に並んだ。長期失業率の見通しにも接近している。マーケットが注目する労働参加率は62.5%となり、1977年9月以来の低水準だった9−10月の62.4%から改善した。

失業者数は前月比2.9万人増となり、前月の0.7万人減から増加に転じ6ヵ月ぶりのプラスを示した。雇用者数は24.4万人増で、前月の32.2万増に続く。就業率は59.3%と前月と変わらず。約5年ぶりの高水準だった8月の59.4%には届いていない。

一方で経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている不完全雇用率は9.9%と、2008年5月以来の改善を遂げた10月の9.8%から上昇した。失業期間の中央値は10.8週と、前月の11.2週から短縮、少なくとも2009年以来の低水準を達成。ただし平均失業期間は28.0週で、前月と変わらず。27週以上にわたる失業者の割合は25.7%となり、前月の26.8%から低下し2009年3月以来の水準へ改善した。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比微増の1億2203万人と2ヵ月連続で増加した。パートタイムは0.5%増の2732万人と、2ヵ月連続で増加。増減数ではフルタイムが3000人増、パートタイムは13.7万人増となる。

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-×
11月は9.9%と、2008年5月以来の低水準に達した10月の9.8%から上昇。不完全雇用者数は前月比5.5%増の608.6万人と、前月の減少分を打ち消した。

2)長期失業者 採点-○
失業期間が6ヵ月以上の割合は全体のうち25.7%と、前月の26.8%から低下。2009年3月以来で最低を更新した6月の25.8%を下回った。平均失業期間は28.0週で、前月と変わらず。6ヵ月以上の失業者数は205.0万人で、前月の214.2万人から減少した。

3)賃金 採点-○
11月は前月比0.2%となり、10月の0.4%から鈍化。前年比も2.3%の上昇となり、2009年7月以来の高水準を達成した10月の2.5%に届かず。非管理職・生産労働者の平均時給も前月比微増の21.19ドル(約2540円)で、管理職を含むヘッドラインに及ばなかった。前年比も2.0%の上昇となり、管理職を含めたヘッドラインを下回る。平均の週当たり賃金は非管理職・生産労働者で前年同月比1.7%上昇の714.10ドル(約8万5690円)で、管理職を含む全体の労働者の2.0%上昇の871.13ドル(約10万4540円)と伸び率は変わらなかった。

非管理職・生産労働者の時給、伸びは直近で管理職を含む全体と比較すると鈍い伸び。
hourlywage
(出所;My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-△
11月は62.5%となり、1977年9月以来の低水準だった9−10月の62.4%から小幅改善。軍人を除く労働人口は0.2%増の1億5730万人だった。労働人口の増加を背景に、非労働人口は前月比0.1%減の9445万人と2ヵ月連続で小幅に減少した。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、ケイト・デビッドソン記者の署名による「力強い雇用統計で、Fedの利上げにゴーサイン(Strong Jobs Report Clears Fed for Liftoff on Rates)」と題した記事を配信。賃金と合わせ、労働市場は利上げに耐えられるほど健全であることを確認したと報じた。

JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストは、結果を受け「Fedが無理なく利上げを開始できる水準」と評価する。むしろ、NFPの伸びがトレンドを上回る勢いであり「Fedの利上げペースに疑問が生じるのではないか」と指摘。Fedはあくまで緩やかな利上げとなる見通しを強調するが「2016年末の失業率見通し中央値までわずか0.2%ポイントであり、労働市場の改善がよほど停滞しない限り早い段階で到達しうる」。12月FOMCでは経済・金利見通しを含めこうした問題を乗り越える必要があり、「声明文で調整して来るのではないか」と予想した。

モルガン・スタンレーのテッド・ウィーズマン米エコノミストは「リセッション後、米労働統計局は15日のタイミングで平均時給を算出するにあたって、依然として問題を抱えているようだ」と指摘。11月は15日が日曜にあたり、2週間ごとに賃金を支払う米国の給与体系上、払込が15日以降にずれ込んだ可能性をはらむ。雇用統計から計算した労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は、平均時給と合わせ前月比0.1%と10月の0.9%から大きく減速していた。週平均労働時間は前月の34.6時間から34.5時間に短縮したため、総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は0.1%低下しと10月の0.6%の上昇からマイナスに転じた。

——米11月ADP全国雇用者数米11月チャレンジャー人員削減予定数と整合的で、雇用統計後に講演を行ったフィラデルフィア連銀のハーカー総裁は7月に就任してから初めて金融政策について言及するなかで、利上げ開始に前向きな立場を打ち出しました。今年の投票メンバーでタカ派寄りのセントルイス連銀のブラード総裁も、引き続き利上げ開始への支持を表明。FF先物市場は素直に反応し、12月利上げ織り込み度は80%と前日の79%から上昇しました。

米11月雇用統計を受け金融市場は株高、債券高、ドル高のトリプル高を達成。特に米株は、大幅に3日ぶりの反発を遂げました。ダウ平均は17,847.63ドル(369.96ドル高、2.12%高)、S&P500は2091.69p(42.07p高、2.05%高)で年初来リターンをプラスに反転、ナスダックは5142.27p(104.74p高、2.08%高)でした。セクター別は以下の通りで通信のほか、利ざや改善が見込まれる金融セクターが押し上げています。

1位 通信 2.68%    6位 裁量消費財 1.98%
2位 金融 2.66% 
      7位 素材 1.77%
3位 ヘルスケア 2.43%    8位 公益 1.54% 
4位 IT 2.42%           9位 産業財 1.46%
5位 生活必需品 2.27%    10位 エネルギー 0.52

エネルギー関連は、石油輸出国機構(OPEC)が4日に減産で合意できず生産枠上限を日量3000万バレルで据え置いたため原油先物が2.7%安で引けたため、独り負けしていまいました。利上げ開始でドル高が意識される産業財も他セクターと比べ伸び悩み。労働市場の改善は喜ばしいとはいえ、Fedはドル高の進捗をにらみながら利上げを舵取りせねばならず、Fedの悩みは尽きません。

(カバー写真:elysiumcore/Flickr)

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