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米12月雇用統計・NFPは絶好調も、賃金に鈍化の兆し

by • January 10, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off2379

December Jobs Report Missed Slam Dunk.

米12月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比29.2万人増と、市場予想の20.0万人増を上回った。ホリデー商戦向け臨時雇用に押し上げられ2014年12月以来の高水準を迎えた10月の30.7万件(29.8万件から上方修正)に次ぐ高水準を達成。過去2ヵ月分は、11月分(21.1万人→25.2万人)と合わせ、5万人の上方修正となる。10−12月期平均は28.4万人増で、7−9月期平均の20.2万人増を超え、2015年で最大の伸びを示した。

2015年のNFPは約270万人となり、2014年の約310万人を下回ったとはいえ1999年以来で2番目の高水準を達成した。月平均は22万人増で、2014年の24万人増を下回った。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が27.5万人増となり市場予想の20.1万人増を上回った。前月の24.0万人増(19.7万人増から上方修正)を超え、直近で最大の伸びに。民間サービス業が23.0万人増となり、11月の20.1万人増(16.3万人増から上方修正)から加速。今回はITが大幅増だったほか、ホリデー商戦の影響か派遣が急増している。半面、小売や娯楽はホリデー商戦終盤を受けて鈍化した。

(サービスの主な内訳)
・専門サービス 7.3万人増、増加トレンドを維持>前月は2.1万人増、3ヵ月平均は6.3万人増
(そのうち、派遣は3.4万人増>前月は1.2万人減で4ヵ月ぶりに減少、3ヵ月平均は1.9万人増)
・教育/健康 5.9万人増、増加トレンドを維持>前月は5.0万人増、3ヵ月平均は6.1万人増
・貿易/輸送 3.1万人増、増加トレンドを維持<前月は6.3万人増、3ヵ月平均は4.4万人増
(そのうち、小売は3.1万人増<前月は6.3万人増、3ヵ月平均は2.0万人増)

・娯楽/宿泊 2.9万人増、増加トレンドを維持<前月は4.7万人増、3ヵ月平均は4.1万人増
(そのうち、食品サービスは3.7万人増、過去1年間の平均は3.0万人増)
・政府 1.7万人増、2ヵ月連続で増加>前月は1.2万人増
(そのうち、連邦政府は0.4万人増、2ヵ月連続で増加<前月は0.5万人増)
・情報 1.6万人増>前月は0.9万人減、3ヵ月平均は0.4万人増
・金融 1.1万人増、増加トレンドを維持<前月は1.5万人増、3ヵ月平均は1.2万人増

財生産業は4.5万人増と、2015年で最大を記録した。前月の3.9万人増に続き、3ヵ月連続で増加。3ヵ月平均では3.9万人増となる。建設が前月から小幅鈍化したものの全体を支え、製造業は前月から加速した。米12月チャレンジャー人員削減予定数で明らかになった通り鉱業もわずかながら回復の兆しをみせた。

(財生産業の内訳)
・建設 4.5万人増、増加トレンドを維持<前月は4.8万人増と2007年以来で3番目の高水準、3ヵ月平均は4.3万人増
・製造業 0.8万人増、2ヵ月連続で増加>前月は0.2万人増、3ヵ月平均は0.4万人増
・鉱業 0.8万人減、12ヵ月連続で減少(石油・ガス採掘は7500人減)>前月は1.1万人減、3ヵ月平均は0.8人減

12月NFP、10月に続き30万件近い増加を達成。
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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比±0%の25.24ドル(約2950円)となり、市場予想及び前月の0.2%以下となる。前年比は2.5%の上昇となり、市場予想の2.7%以下に。11月の2.3%は上回り、2009年7月以来の力強さを誇った10月の2.5%に並んだ。

週当たりの平均労働時間は34.5時間と、市場予想および前月値と一致した。製造業の平均労働時間は40.6時間となり、10−11月の40.7時間から縮小。2007年以来の高水準に並んだ2014年11月の41.1時間以下にとどまる。

失業率は3ヵ月連続で5.0%となり、市場予想にも並んだ。リーマン・ショック以前にあたる2008年4月以来の低水準を維持している。12月米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2015年末予想のレンジ下限に並んだ。長期失業率の見通しにも接近している。マーケットが注目する労働参加率は62.6%となり、市場予想および11月の62.5%から上昇し1977年9月以来の低水準だった9−10月の62.4%から改善が進んだ。

失業者数は前月比0.2万人減となり、前月の2.5万人増から減少に転じた。雇用者数は48.5万人増で、前月の24.7万人増から加速し3ヵ月連続で増加。就業率は59.5%と前月の59.4%を超え約5年ぶりの高水準だった。

一方で経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている不完全雇用率は11月と同じく9.9%となり、2008年5月以来の改善を遂げた10月の9.8%を上回る水準を保つ。失業期間の中央値は10.5週と、前月の10.7週から短縮、少なくとも2009年以来の低水準を達成。平均失業期間は27.9週で、前月と変わらず。27週以上にわたる失業者の割合は26.3%で、2009年3月以来の水準へ改善した前月の25.7%から上昇した。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.4%増の1億2260万人と3ヵ月連続で増加した。パートタイムも微増の2736万人と、3ヵ月連続で増加。増減数ではフルタイムが50.4万人人増、パートタイムは2.7万人増となる。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は週平均労働時間は前月と同じく34.5時間にとどまるなか前月比0.3%上昇し、11月の0.1%低下から改善した。労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比0.3%上昇し、11月の0.1%から反転。

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-△
12月は9.9%と、11月に続き2008年5月以来の低水準に達した10月の9.8%から上昇。不完全雇用者数は前月比3.0%減の602.2万人と、前月から減少に転じた。

2)長期失業者 採点-×
失業期間が6ヵ月以上の割合は全体のうち26.3%と、2009年3月以来で最低を更新した前月の25.7%から上昇。平均失業期間は27.9週で、前月と変わらず。6ヵ月以上の失業者数は208.5万人で、前月の205.4万人から増加した。

3)賃金 採点-○
12月は前月比横ばいにとどまり、11月の0.2%から鈍化。前年比は2.5%上昇し11月の2.3%から加速、2009年7月以来の高水準を達成した10月の2.5%に並ぶ。非管理職・生産労働者の平均時給は前月比0.1%増の21.22ドル(約2480円)で、足元のトレンドに反しわずかながら管理職を含むヘッドラインを超えた。前年比は2.4%上昇し、管理職を含めたヘッドライン以下にとどまる。平均の週当たり賃金は非管理職・生産労働者で前年同月比2.1%上昇の715.15ドル(約8万3700円)で、管理職を含む全体の労働者の2.2%上昇の870.78ドル(約9万8400円)の伸び率にあと一歩及ばなかった。

非管理職・生産労働者の平均時給、伸び率は理職を含む全体と比較すると鈍い。
averagewage
(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-○
12月は62.6%となり、1977年9月以来の低水準だった9−10月の62.4%から小幅改善を継続。軍人を除く労働人口は0.3%増の1億5783万人だった。労働人口の増加を背景に、非労働人口は前月比0.3%減の9410万人と3ヵ月連続で減少した。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、ジョン・ヒルゼンラス記者の署名による「力強い雇用統計で、Fedは利上げを継続へ(Robust Job Gains Should Reassure Fed on Continuing Rate Increases)」と題した記事を配信。1月第1週が過去最悪のパフォーマンスだったように、中国初の世界同時株安やサウジアラビアとイランの断交などの衝撃が金融市場を直撃するなか1月26−27日開催のFOMCは見送る公算だが、3月15−16日開催のFOMCで追加利上げを行うと予想した。

JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストは、結果を受け「Fedは実際のインフレ動向の改善を確認する必要があるものの、今回は平均時給が鈍化した」と振り返る。その上で「1月FOMCでの利上げの可能性は消滅し、3月の可能性すら幾分後退させた」と指摘。3月利上げを予想するものの、やや消極的にシフトさせた。

——米12月ADP全国雇用者数米12月チャレンジャー人員削減予定数と整合的で雇用の力強さを見せつけたものの、賃金が鈍化しています。新年早々、フィッシャーFRB副議長サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁など、年4回の利上げを利上げを支持する見解を表明したことと、整合的です。

好調な米12月雇用統計に反し金融市場は株安、債券高、ドル安の展開に。米株はダウ平均は16,346.45ドル(167.65ドル安、1.02%安)、S&P500は1,922.03p(21.06安、1.08%安)、ナスダックは4,643.63p(45.79安、0.98%安)となり、週足では続落しただけでなく、1月第1週としては過去最悪のパフォーマンス(ダウ 6.2%安、S&P500 6.0%安、ナスダック 7.3%安)に終わっています。セクター別は以下の通りで全滅で金融が最も売られ、次いでヘルスケアやエネルギーと続きました。

1位 公益 0.02%    6位 産業財 1.02%
2位 通信 0.47%       7位 裁量消費財 1.08%
3位 生活必需品 0.76%    8位 エネルギー 1.34% 
4位 IT 0.80%                 9位 ヘルスケア 1.44%
5位 素材 1.02%       10位 金融 1.57

今回の雇用統計での気になるポイントは、以下の通りです。

1)賃金の伸び鈍化
2)派遣社員の急増
3)スター・ウォーズ効果
4)エネルギー産業のリストラ再燃

1)については説明するまでもありません。2)は、契約満了の伴う就業者を下押しさせる要因となり得ます。3)のスター・ウォーズ効果も同じことで、WSJ紙によると映画産業が1.5万人増と12ヵ月平均の700人増を大幅に上回っていました。4)では原油先物が2008年以来の安値へ突っ込んだほか既にエネルギー大手が設備投資削減を目指すなか、リストラに手を伸ばしかねません。

(カバー写真:tec_estromberg/Flickr)

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