Trade Deficit Rises Less Than Expected In May.
米4月貿易収支は374.36億ドルの赤字となり、市場予想の410億ドルから縮小した。ただし、2015年2月以来の低水準だった前月の355.36億ドル(404億ドルから修正)を5.3%上回る。輸出と輸入がそろって増加に転じつつ、輸入の増加率が上回り前月比で赤字が拡大した。
内訳をみると、輸出が前月比1.5%増の1827.96億ドルだった一方で、輸入が2.1%増の2202.32億ドルとなった。国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの赤字は、576.18億ドル。2015年2月以来で最低にとどまった前月の561.09億ドルから、増加した。なお2015年の貿易赤字は前年比4.6%増の5315億ドルと、2012年以来で最大を記録した。2014年の5050億ドルに続き、2009年以来の水準まで改善した2013年の4715億ドルから増加した。
大和キャピタル・マーケッツのマイケル・モラン米主席エコノミストは、結果を受けて「4月の貿易赤字は前月比で拡大したとはいえ1~3月期平均より改善を示し、純輸出がGDPに少なからず寄与する可能性が出てきた」と評価した。またベンチマーク改定を受けて、「2013年から2015年の3年間において、2013年と2014年は赤字が3.5%、2015年は7.3%改善した」とし、特にサービスでの上方修正が寄与したと説明した。
貿易収支、輸出も輸入も世界景気減速の影響か伸び悩み中。
(作成:My Big Apple NY)
輸出の内訳をみると、モノは前月比2.5%増と過去5ヵ月間で2回目の増加を示した。資サービスを除き、軒並み増加を遂げている。
(増加項目)
・自動車 6.9%増、前月の7.4%減から増加に反転
・産業財 5.8%増、前月の2.5%減を上回り7ヵ月ぶりに増加
・食品/飲料 4.5%増、前月の5.1%減から反転
・消費財 1.2%増、前月の6.8%減から反転
・資本財 0.3%増、前月の0.8%増を含め3ヵ月連続で増加
(減少項目)
・サービス 0.4%減、前月の0.7%増から反転
輸入の内訳をみると、モノが2.4%増となり前月の5.5%減から転じた。過去5ヵ月間で2回目の増加を示す。原油価格が持ち直すなかで、量ベースでの原油関連輸入は4.8%減と減少に転じていた。石油製品を除いた場合は2.3%増と、前月の5.7%減から増加に反転。消費財から資本財まで、そろって増加した。
(増加項目)
・消費財 1.1%増、前月の11.4%減から反転
・資本財 5.3%増、前月の4.5%減から反転
・食品/飲料 2.1%増、前月の6.9%減から反転
・自動車 1.8%増、前月の3.8%減を上回り3ヵ月ぶりに増加
・産業財 3.4%増、前月の3.2%減を上回り4ヵ月ぶりに増加
(減少項目)
なし
国別でのモノの貿易収支動向をみると、中国への赤字は前月比16.3%増の243.06億ドルと3ヵ月ぶりに増加に転じた。なお中国が2015年8月に3日連続で人民元を切り下げた後に対中赤字は減少トレンドをたどり、今年1月6日にも人民元切り下げに踏み切っていた。日本への赤字は7.3%減の62.20億ドルと、減少に反転。欧州への赤字額も4.6%増の132.02億ドルで、減少に転じた。主な原油輸出国への貿易収支は、まちまち。カナダへの貿易収支は8.7億ドルの黒字と、前月の1.2億ドルの赤字から6ヵ月ぶりに黒字に転じただけでなく過去最高の黒字額となる。石油輸出国機構(OPEC)との貿易収支は2.7億ドルと2ヵ月連続で黒字ながら、前月の7.9億ドルの黒字から縮小。一方で、メキシコのみ赤字額が5.7%増の57.13億ドルへ拡大した。以下は、今回の貿易収支における輸と輸入の内訳のほか各国ごとのモノの貿易収支動向。
(作成:My Big Apple NY)
▽米4月製造業受注、コア資本財が上方修正
米4月製造業受注は前月比1.9%増となり、市場予想と一致した。前月の1.7%増(1.1%増から上方修正)を含め、過去6ヵ月で3回目の増加を示す。伸び率は、6ヵ月ぶりの高水準だった。民間航空機など輸送機器を除く場合は0.5%増と、2ヵ月連続で増加。コア資本財(企業の設備投資を示す航空機を除いた非防衛財)は0.6%減と、速報値の0.8%減から改善している。前月の0.3%増からは反転した。
国内総生産(GDP)に反映されるコア資本財出荷は0.4%増と、速報値の0.3%増から上方修正。前月の±0%から回復した。製造業出荷は0.5%増と、2ヵ月連続で増加した。製造業在庫は0.1%減と、過去分が下方修正されたように減少トレンドを継続した。在庫相当は出荷が増加したものの在庫が減少したため、4ヵ月連続で1.37ヵ月を経て1.36ヵ月へ短縮した。
アトランタ連銀は、米4月製造業受注や米4月貿易収支を受けて、4~6月期のGDP予想を2.5%増で据え置いた。NY連銀は4~6月期を2.4%増、7~9月期を2.2%増と見込む。
――米4-6月期GDP確報値は、米4月貿易赤字が低水準にとどまったほか4月製造業受注のコア上方修正が効き上方修正の期待が残ります。とはいえ、貿易動向は縮小傾向を鮮明にしており、必ずしも経済にポジティブとは言えない状況。製造業受注も米5月ISM製造業景況指数など製造業景況指数を振り返ると好転する兆しは見えず、2015年4~6月期のような4%近い回復は難しそうです。
(カバー写真:Luke Price/Flickr)
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