FOMC Preview : Economists Divide Over Next Rate-Hike Path.
7月26~27日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。かつてFF先物で年内の利上げ織り込み度がゼロ近くまで低下した一方、足元で利上げ織り込み度は上昇中。今回のFOMCで、ズバリ利上げ示唆を与えてくるのでしょうか?エコノミストの見解をみてみましょう。
BNPパリバのポール・モーティマー-リー米国担当主席エコノミスト
当方は2月以降、2017年中まで利上げはないと見込んでいた。しかし緩和的な金融市場と金融環境を踏まえ、9月利上げへ予想を変更する。声明文でタカ派寄りのトーンへ転向した上で、議事録で地固めしてくるだろう。まず、英国民投票で欧州連合(EU)離脱を決定したが、英国並びに欧州での影響は限定的だった。米株が最高値を更新するなどリスク資産がラリーしており、スタンスを変えてくる可能性がある。また、小売売上高をはじめISM製造業景況指数、NFIB中小企業楽観度指数など米経済指標も当初より上向きを確認しており、米1~3月期国内総生産(GDP)は速報値から確報値にかけ上方修正された。当方のGDP予想も、底堅い経済指標を背景に4~6月期GDPをめぐって2月の2.2%増から2.7%増へ、7~9月期も従来の1.6%増から2.0%増へ引き上げている。もしかすると、年内の利上げが2回となる可能性すら残す。
バークレイズのマイケル・ゲイピン米主席エコノミスト
米6月雇用統計で5月分がトレンドから逸脱した一時的な結果だということを認識でき、FOMC参加者は安堵したことだろう。しかし、FOMCは単月の数字でスタンスを変更しない。7月と8月の結果を見た上で、当方のメインシナリオである9月利上げに打って出るだろう。ただ労働市場が鈍化を示せば、現状で市場が織り込むようなハト派寄り姿勢を正当化させるに違いない。声明文では労働市場のさらなる改善が利上げに必要との見解を挟み込むと予想しており、9月20~21日開催のFOMCでの利上げを明確に示唆しないと考える。
――ウォールストリートのハト派の極にあるBNPパリバが9月利上げへ予想を変更しただけでなく、米経済指標の改善に合わせ声明文で利上げ示唆を与えるの見通しを明らかにしました。一方で、タカ派寄りのバークレイズは9月利上げ予想を維持しつつ次回利上げを示唆しないと見込んでおり、見解が分かれた格好です。
個人的には、9月利上げ示唆なしを予想しています。確かに米株は最高値更新しこの世の春を謳歌しているようですが、理由は以下の3つ。
1)ドル高が進行中
→ここで利上げ示唆を与えてしまえば、ドル独歩高となり企業業績を始め輸出に悪影響を与えかねません。ドル高へ振れていた4月FOMC当時、声明文で利上げを示唆せず議事録で騙し討ちのごとく利上げを示唆した例もあります。
4月FOMC当時は、ドルが上昇途上に。
2)金融市場への配慮
→BREXIT問題が懸案事項と前回のFOMC声明文及び議事録で指摘した上、国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しを下方修正したほかBREXITの影響は展開中としており、2017年まで離脱の手続きを棚上げするとはいえ成長懸念が残ります。なお、IMFが年内利上げに反対した2015年、結局12月まで実施を見送りました。
3)ジャクソン・ホール会合
→米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は8月26日、ジャクソン・ホール会合で講演を行います。説明責任を果たせない7月FOMC声明文での利上げ示唆より、ジャクソン・ホール会合を選ぶ可能性が高いのではないでしょうか。過去には、バーナンキ前FRB議長がこの舞台で2010年に量的緩和(QE)、2012年にはQE3を示唆していました。ちなみに2015年、利上げ準備に入っていた当時は欠席しています。グリーンスパンFRB元議長も2005年には「経済の不均衡」を指摘した上で、任期切れを前に住宅市場バブルに懸念を表明。
筆者は、特に3)に注目。7月FOMC声明文で引き続き利上げの方向を指し示しつつ、米7月雇用統計の数字を見てジャクソン・ホール会合で9月利上げののろしを上げた方が得策と考えますが、はたしてイエレン議長率いるFOMC参加者はどのように対応してくるのでしょうか。注目はFOMCの風見鶏ことセントルイス連銀のブラード総裁で、彼が2018年まで据え置きとの姿勢を変えてタカ派に転じるか、要注意です。
(カバー写真:Federalreserve/Flickr)
Comments
MBA住宅ローン申請件数指数、金利上昇を背景に3週ぶりに下振れ Next Post:
クルーズ議員、共和党大会でトランプ候補不支持表明の暴挙に出る