Trump’s Tax Return Shows Little Ties With Wall Street.
不動産王のドナルド・トランプ氏、共和党の正式候補に指名されても暴言は変わりません。27日には、民主党のメール・ハッキング問題を受けロシアに協力を要請する始末。民主党のヒラリー・クリントン候補が私用メールを利用した件に触れ、「失われた3万件を見つけてほしい」と言及していました。さらに、NBCの“ミート・ザ・プレス”では、「世界貿易機関(WTO)から脱退するだろう」と放言する始末。米国企業がメキシコに移転して米国に商品を販売する際には輸入関税で対応すべしと主張し、司会のチャック・トッド氏にそうした輸入関税は違法ではないかと尋ねられた時に、呆気なく「脱退」の言葉を放ったのです。期待を裏切りませんね。
そのトランプ候補に、思わぬ援軍が到着しました。これまでトランプ米大統領誕生の可能性は「全くない」と断言していたオバマ米大統領、27日に放映されたNBCのインタビューで「何事も起こり得る」と姿勢を変化させたのです。
CNNの世論調査で勢いに乗るトランプ候補は、クリントン候補に勝利できるのでしょうか?民主党の米大統領指名争いで善戦したサンダース候補に近いその立場も、奏功する余地が残ります。クリントン候補の娘、チェルシーさんの夫が元ゴールドマン・サックス従業員であるほか、JPモルガンやモルガン・スタンレーから献金を受け取った経歴がある通り同候補はウォールストリートとの関係が深いことで知られていますよね?反対にトランプ候補は、ライセンス業務へ転換もあってウォールストリートとの関係は比較的希薄なんです。確かに財務長官候補は元ゴールドマン・サックスのスティーブ・ナチン氏ですが、例えば資産報告書で判明した借入先をみると、いわゆる伝統的なウォールストリートの名前は一切登場しません。
逆に、金額面を含め目を引くのは、ドイツ銀行。UBSやメリルリンチ関連の名前も見受けられますが、他は小規模系です。
共和党の政策綱領に「グラス・スティーガル法の復活」を追加して、文句を言わなかった理由が分かりますね。
ちなみに、共和党がグラス・スティーガル法の復活を組み入れた大義名分があります。一つ目はもちろんサンダース票の獲得ですが、オバマ政権が築いた制度の転覆が狙いなのですよ。
グラス・スティーガル法復活を「規制:静かなる独裁」の章に組み込み、銀行規制を柱に据えていない点がポイント。同章ではオバマ政権で存在感が強まった政府機関主導の規制を撤廃し、議会が中心となって簡素化を狙うと主張しています。その一環としてドッド・フランク法案を撤回し、グラス・スティーガル法を復活させようというのです。究極論でいうなら、共和党政権誕生の暁にドッド・フランク法を無効とさせ新たな政権で規制作りを進めれば目的を達成できたと判断され、グラス・スティーガル法を復活させる必要はありません。
対して「現代版」のグラス・スティーガル法導入を目指す民主党は「経済的公正と不均衡との戦い」にあり、ウォールストリートにファイティング・ポーズを構えたも同然で、共和党とは一線を画すわけですね。
正直なところ、こういった違いにアメリカの有権者がここまで読み込むかは不透明です。メディアの扱いはあくまでグラス・スティーガル法の復活に終始していますから、その違いを理解していない可能性をはらみます。
(カバー写真:Gage Skidmore/Flickr)
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