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米7月雇用動態調査は過去最高、採用数も増加

by • September 9, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off1343

Job Openings Hit Highest, Hires Continue To Rise In July.

米労働省が発表した米7月雇用動態調査(JOLTS)で求人数は前月比4.0%増の587.1万人と、市場予想の563.0万人を上回った。前月の564.3万人(562.4万人から上方修正)だけでなく4月の584.5万人を超え、2000年の統計開始以来で最高を塗り替えている。なお米7月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、改定値で従来の27.5万人増となり、2015年10月以来の高水準を達成していた。2015年の平均22.9万人増を軽く抜けた半面、米8月雇用統計・NFPは15.1万人増へ鈍化した。

新規採用人数は前月比1.1%増の522.7万人と、2ヵ月連続で増加した。2006年11月以来の高水準を遂げた2月の551.0万人から鈍化しつつ、リセッションが開始した2007年12月時点の500万人という大台は23ヵ月連続で超えた。

離職者数は前月比0.5%減の493.7万人と5ヵ月連続で減少、2015年7月以来で最低を示した。定年や自己都合による退職者は微増の298.0万人と増加を2ヵ月で止め、統計開始以来で最高だった2015年12月の308.8万人が遠ざかる。解雇者数は2.4%減の164.3万人と、5ヵ月連続で減少し2013年11月以来の低水準だった。

求人数は過去最高、新規採用者数は増加も両者の乖離は続く。

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(作成:My Big Apple NY)

求人率は3.9%と前月の3.8%から上昇し、統計開始以来で最高に並んだ。民間が前月の4.0%から4.2%と、統計開始以来の最高の5月の数値に届いた。民間のうちサービスは上昇が優勢、貿易・輸送・公益のほか、専門・サービス、娯楽などが前月を上回った。一方で金融が横ばいで、教育・健康は前月以下となる。財部門(製造業、鉱業、建設)はそろって上昇した。政府は2.3%と前月と変わらなかった。

就業者に対する新規採用率は3.6%と前月と変わらず、2014年7月以来の低いレベルにとどまった5月の3.5%に近い水準を保つ。2007年10月以来の高水準に並んだ2月の3.8%向かい始めたようだ。サービスでは専門サービスが急伸したものの、貿易・輸送・公益のほか娯楽・宿泊は横ばい。教育・ヘルスケアは低下した。財部門はベライゾンのストライキ明けの情報が前月の2.5%から2.7%へ改善したほか、輸送・倉庫・公益、金融が上昇した。財部門は建設のみ上昇し、製造業と鉱業は低下した。政府は前月の1.6%から1.7%へ上昇した。

自発的および引退、解雇などを含めた離職率は前月と変わらず3.4%となり、2015年10月以来の水準へ低下した。民間が前月の3.8%で横ばいとなり、政府は前月と同じく1.2%となる。自発的離職率は2ヵ月連続で2.1%となり、2~3月に達成した2007年5月以来の高水準をたどる。解雇率は2ヵ月連続で1.1%となり、2000年12月に統計が開始してからの最低を保つ。

解雇者数とともに、離職者数も減少傾向。

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(作成:My Big Apple NY)

――以上の結果を踏まえ、イエレン・ダッシュボードをおさらいしてみましょう。達成項目は9項目中、6月の4項目から自発的離職率が増え雇用統計・非農業部門就労者数が増え5項目でした。 6項目を達成した2月、5項目だった3月には届いていません。以下は詳細で、()内の最悪時点とは、金融危機以降での最も弱い数字です。

1)求人率—○
2009年7月(最悪時点) 1.6%
2004-07年平均 3.0%
現時点 3.9%

2)解雇率—○
2009年4月(最悪時点)2.0%
2004-07年平均 1.4%
現時点 1.1%

3)自発的離職率 ○
2010年2月(最悪時点) 1.3%
2004-07年平均 2.1%
現時点 2.1%

4)採用率—×
2009年6月(最悪時点) 2.8%
2004-07年平均 3.8%
現時時点 3.6%

5)非農業部門就労者数—○
2009年3月までの3ヵ月平均(最悪時点) 82.6万人減
2004-07年の3ヵ月平均 16.2万人増
現時点の3ヵ月平均 23.2万人増

6)失業率—○
2009年10月(最悪時点) 10%
2004-07年平均 5.0%
現時点 4.9%

7)不完全失業率—×
2010年4月(最悪時点) 17.2%
2004-07年平均 8.8%
現時点 9.7%

8)長期失業者の割合—×
2010年4月(最悪時点) 45.3%
2004-07年平均 19.1%
現時点 26.1%

9)労働参加率—×
2014年9月(最悪時点) 62.7%
2004-07年平均 66.1%
現時点 62.8%

――米7月雇用動態調査は求人数こそ過去最高を記録するも、新規採用者数の増加が追い付かず、引き続き採用側と求職側の需要がマッチしていない様子が伺えます。西海岸の出張に赴いた筆者の大先輩いわく「アップルやグーグル、その他大手IT企業は拡大を続け、軍用施設を借り入れる企業もある」とか。特殊技能職の需要は旺盛な一方、一部セクターでは供給が追い付いていない可能性を示唆します。問題は米8月雇用統計の鈍化で、求人数も鈍化してくるのか見極めたいところ。Fedは完全雇用が近づいているとの認識でしたが、循環的な景気鈍化の可能性が見えた点は留意しておくべきでしょう。

(カバー写真:AIGA/NY/Flickr)

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