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日銀と米中関係に関する備忘録

by • September 28, 2016 • Finance, NewsComments Off1749

日が射していたかと思ったら急に雨にたたられた28日、日銀と米中関係に関する識者のご意見をうかがったので以下の通り備忘録としてしたためておきます。

日銀のQQE

●10年債利回りをゼロ%付近での維持を目指すと発表したため金利上昇局面では指値オペを通じ国債を取得していき、必要に応じて80兆円を超える可能性を残す。金利低下局面ではどうかというと日銀は国債を売ることはなく、80兆円という金額に満たない場合があり得る。
●インフレ目標2%というのは、リスクが発生した場合ののりしろであったり、グローバル・スタンダードに基づく。欧米にならい2%を採用した一因は、為替への影響を鑑み一律とした。
●マイナス金利の深掘りの下限をめぐり、長期金利がマイナスに陥った場合などといったような明確な水準を示す資料はない。同時にマイナス金利導入での金融機関の悪影響(利ザヤ縮小→自己資本縮小→貸出減少など)は、常に意識している。
●黒田総裁が為替市場の安定を目指した外債購入を行わない意志を表明済みだが、プライスへのインパクトを判断すると財務省の管轄だから。
●円高の影響は認識済みで、資源価格の回復や賃上げ動向とのプラス効果をどれだけ削ぐかの問題。

米中関係

●米国は4つの変数から成る方程式、あるいは四重人格をもって中国を見つめている。
●まず、宣教師の視点がある。建国からたった8年後の1784年に”エンペレス・オブ・チャイナ”号で中国を訪れたアメリカ人の胸に宿っていたような、中国の保護者たる精神といったもの。アメリカ人が言う「民主化」の裏には、米国にとって有益なパートナーシップ構築への夢が盛り込まれているようだ。
●第2に、軍人の視点がある。かつてのソ連は軍事という一次元的な脅威だったが、中国は軍事、経済、人口と三次元的。こうした観点から、中国脅威論を有する。
●第3に、商人の目がある。米中関係の悪化、あるいは米政府の干渉を好まないエコノミック・アニマルたる米国の本領発揮といった感のある姿勢。ただし最近では、中国政府による自国内企業の優遇や米国技術の盗用を警戒し米政府への支援を仰ぐ状況。
●最後に、リバタリアンの視点がある。モンロー主義、孤立主義とも言い換えられ共和党のトランプ候補が代表例。日本が最も警戒すべき考え方で、台湾放棄論や日本核武装論などがこれにあたる(ただし米国内で台湾放棄論は全くもって主流ではない)。

●「中国の夢」はチャイナ・ドリームであってチャイニーズ・ドリームではない。アメリカン・ドリームのように個人の発展ではなく、国が繁栄してこそ国民が豊かになるとの意味が込められているからだろう。
●天安門事件前は、異化論が流行していた。つまり自然と共存していた人間がいつしか自然を破壊する存在になったように、人民のために発足した共産党体制がいつしか人民を支配するようになったとの考え方。胡耀邦の時代に既得権益の撤廃に努めたが、死後に天安門事件が発生し政治改革は禁句となった。
●しかし競争性があり公正な市場を育成するため、政治改革は経済発展のカギである。習近平による反腐敗キャンペーンは政治改革の一部と言える。
●国営企業は潰せないだろう。地域、親族など複雑に深く絡み合っているため破綻させれば組織的に甚大な影響が発生しかねない。

●TPPは中国包囲網を狙った政策というより、世界経済のなかで最も勢いのあるアジアを通じアメリカン・スタンダードをグローバル化するための戦略ではないか。BREXITを決定した英国をTPPに引き入れる余地もある。中国はTPPへ関心が高く自ら「中国が入らなければ完成しない」とすら断言する者も。ただ、中国がTPPに加盟すれば「NATOにロシアが加盟するようなもの」という笑い話がある。
●習近平は南シナ海の岩礁を埋め立て滑走路まで整備するほどだが、海水にコンクリートがさらされている事情もありメンテナンス費用は膨大なはずだ。それでも継続している理由は、ナショナリズムを活用しせざるを得ないほど習体制が盤石ではないと解釈できる。
●中国の経済発展に必要なのは、地方の財政基盤の整備である。1994年に分税制改革を断行し中央政府と地方政府と区分したが、地方政府の取り分が減り乱収(法律に根拠がない税金を徴収すること)に追いやってきた。不動産バブル時には地方政府が土地転がしのようなかたちで財源を得てきたが、人民の負担軽減を目指し乱収を抑制させるシステムを導入すべきだろう。

●米国でトランプ大統領が誕生した時に米中関係がどうなるかは、正直分からない。クリントンが大統領に就任すれば、現状の路線を維持していくなど予見性が高まる。そもそもクリントン財団に中国人が寄付していた通り、クリントンと中国の関係は決して悪くない。

(カバー写真:Lei Han/Flickr)

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