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米9月ADP全国雇用者数は5ヵ月ぶり低水準、完全雇用の接近が背景か

by • October 6, 2016 • NewsComments Off1318

Private Payrolls Shows Smallest Gain In 5  Months.

米9月ADP全国雇用者数は前月比15.4万人増となり、市場予想の16.5万人増を下回った。前月の17.5万人増(17.7万人増から下方修正)にも届かず、5ヵ月ぶりの低水準。2015年の平均値20.7万人増からも距離を開けつつ、2010年2月以来の増加トレンドは維持した。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。

ADP全国雇用者数、2011年以降の平均値以下が続く。

adp
(作成:My Big Apple NY)

内訳は、以下の通り。

▽企業規模別
中小企業 9.0万人増<前月は12.4万人増、6ヵ月平均は12.5万人増
大企業 6.4万人増<前月は6.7万人増、6ヵ月平均は4.5万人増

▽業種別
サービス業 15.1万人増<前月は18.4万人増、6ヵ月平均は18.0万人増
(米9月ISM非製造業景況指数の雇用は57.2と前月の50.7を超え2015年10月以来の高水準)
・専門/ビジネス・サービス(派遣を含む) 4.5万人増<前月は5.3万人増、6ヵ月平均は5.6万人増
・貿易/輸送/公益 1.5万人増<前月は2.6万人増、6ヵ月平均は2.7万人増
・金融 1.1万人増<前月は1.5万人増、6ヵ月平均は1.2万人増

財生産業 0.3万人増、6ヵ月ぶりに増加>前月は0.9万人減、6ヵ月平均は0.9万人減
米9月ISM製造業景況指数の雇用は49.7と、前月の48.3から改善も分岐点割れ継続)
・建設 1.1万人増、4ヵ月ぶりに増加>前月は0.2万人減、6ヵ月平均は0.4万人増
・製造業 0.6万人減<前月は0.4万人減、6ヵ月平均は0.6万人減

ADPとともに統計を担当するムーディーズ・アナリティクスのマーク・ザンディ主席エコノミストは、「雇用の伸びは力強さを維持するものの、完全雇用に接近するなかでゆるやかになってきた」との見方を示す。とはいえ「求人数が過去最高近くにある通り、企業は人材確保が益々困難になっている」と指摘。米国経済の問題点は、雇用創出より「適切な人材不足」になると予想した。

――米9月ADP全国雇用者数は、8月から鈍化しました。もっとも、ISMでは製造業景況指数と非製造業景況指数がそろって前月から改善。ホリデー商戦をめぐって雇用を確保する動きがあれば、米9月雇用統計・NFPは強含む可能性を残します。完全雇用に達したか否かは、こちらをご紹介した通り筆者はそこまで回復が進んだとは考えていません。従って失業率には低下余地があり雇用増加もハイペースを維持する底力があると考えていますが、設備投資など企業投資が上半期に減速するなかで積極的な採用活動が手控えられているようにも受け止められます。

▽MBA住宅ローン申請件数指数、金利低下で借換が切り返し

全米抵当貸付銀行協会(MBA)住宅ローン申請件数指数は、9月30日週に前週比2.9%上昇し542.2だった。前週の0.7%の低下を上回り、3週ぶりにプラスへ反転、借換が4.7%上昇し2380.1だった半面、新規は0.1%低下の222.5と小幅に反落した後で金利が低下し、借換の需要を押し上げたとみられる。米連邦公開市場委員会(FOMC)が利上げを見送り金利が低下したほか、ドイツ銀行問題で金利が低下し借換の需要を支えたとみられる。MBA住宅ローン申請件数指数の前年比(季節調整前)は1.6%上昇し、前週の24.0%上昇からは減速。新規が13.7%の低下(前週は10.2%の上昇)と押し下げ、借換も13.0%の上昇(前週は34.0%の上昇)伸びを縮小した。

30年固定金利型の住宅ローン金利(平均)は、前週の3.66%から3.62%へ低下した。1年前の3.99%以下にとどまる。15年固定金利型(平均)は前週の2.95%から2.93%へ低下。FHAのローン金利は、前週の3.52%から3.50%へ下振れした。

MBA住宅ローン申請件数指数、金利が低下し借換仁寄与。

mba
(作成:My Big Apple NY)

申請全体に占める借換の割合(件数ベース)は63.8%と、前週の62.7%から低下した。ただ、2009年6月以来の低水準を示した2015年7月3日週の48.0%から切り返した水準を維持。2013年5月以来の高水準となった2015年1月16日週の73.9%からは、大きく遠ざかったままだ。

――MBA住宅ローン申請件数指数は、金利低下に遅れて借換が全体を押し上げました。ただ、新規は住宅価格の高止まりや在庫ひっ迫に加え、ドイツ銀行問題がくすぶり金融市場並びに経済への影響が考慮されたのか手控えられました。長期金利は1)年末の利上げ観測、2)日銀の長短金利操作目標、3)欧州中央銀行による資産買入終了の報道――などから長期金利をはじめ一転して上昇し始めており、来週のMBA住宅ローン申請件数指数は低下に転じる可能性をはらみます。

(カバー写真:Jens Schott Knudsen/Flickr)

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