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米9月NFIB中小企業楽観度、夏の終わりに4ヵ月ぶりの低水準

by • October 12, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off1776

NFIB Small Business Optimism Falls To 4-month Low.

米9月NFIB中小企業楽観度指数は94.1となり、市場予想の95を下回った。年初来で最高だった7月の94.6、8月の94.4にも届かず、4ヵ月ぶりの低水準。2006年10月以来の高水準でありリセッション前の平均値100を回復した2014年12月の100.4でピークアウトした状況を確認した。なお同指数は、米連邦準備制度理事会(FRB)が公表する労働市場情勢指数(LMCI)に含まれる。

発表元である全米独立企業盟(NFIB)のウィリアム・ダンケルベルグ主席エコノミストは、結果に対し求人数が多いものの、そのうちの半分が「応募者の能力不足が目立ち人員を補充できない」と振り返る。希望する人材と保有する技術のミスマッチが生じており、特殊技能職での人材不足を指摘し続けるベージュブックの内容と整合的だ。また米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策に批判的な立場を示し、低金利は株式市場を押し上げたが「工場や機器、並びに研究開発への投資によって創造された富ではない」と指摘。結果的に低成長をもたらした事実を、Fedは認識すべきとの見方を示した。

楽観度指数、リセッション前の平均値を回復した後は伸び悩み。

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(作成:My Big Apple NY)

内訳をみると、13項目中プラス圏にのせた項目は7項目と6~7月に並び、8月の8項目を下回った。今回は「設備投資を拡大する」がトップを飾り、これまで1位だった「求人件数」は2位に転落しパーセンテージ自体も直近で最低を示す。ただ「採用見通し」は直近最低から小幅改善した。明るい材料として、マイナス圏がひとつ減っている。これまでマイナス圏をたどった「経済がより良くなる」がゼロ%となり、2015年3月から続いたマイナス圏から脱却した。「売上の拡大を予想」も、前月からマイナス圏からプラス圏へ切り返している。反対に「販売価格の上昇」はプラス圏からマイナス圏へ落ち込んだ。マイナス圏を維持する項目は、全て前月より悪化している。以下は、項目ごとの変化。

「設備投資を拡大する」27%→前月の28%から低下、6ヵ月平均は26%
「求人件数」24%→ 前月の30%から低下、6ヵ月平均は28%
「賃金」22%→前月の24%から低下、6ヵ月平均は24%
「賃上げ見通し」14%→前月の14%で変わらず、6ヵ月平均は15%
「採用見通し」10%→ 前月の9%から上昇、6ヵ月平均は11%
「事業拡大に良いタイミング」7%→ 前月の9%から低下、6ヵ月平均は8%「売上の拡大を予想」4%→ 前月の−1%から低下、6ヵ月平均は1%

「経済がより良くなる」0%→ 前月の−12%から改善、6ヵ月平均は−10%

「販売価格の上昇」−1%→前月の3%から低下、6ヵ月平均は0%
「在庫を増加させる」−1%→ 前月の0%から上昇、6ヵ月平均は−2%
「在庫満足度」−7%→ 前月の−2%から悪化、6ヵ月平均は−4%
「信用状況が緩和する」−7%→ 前月の−5%から悪化、6ヵ月平均は−6%
「黒字トレンドにある」−20%→ 前月の−23%から悪化、6ヵ月平均は−21%

――米9月NFIB中小企業楽観度指数は、米大統領選が近づくなかでゆるやかに低下しています。共和党のトランプ候補の過去の女性侮蔑発言などを背景に米上院だけでなく米下院での共和党の過半数獲得が危ぶまれる以上、法制度を意識して楽観度に振り切れないのでしょう。米7~9月期国内総生産(GDP)は2%台を確保する見通しですが、トランプ候補が勝者となれば不透明性拡大、クリントン候補が制しても規制強化や最低賃金引き上げなどで業績の打撃となる恐もあり、センチメントが急伸できるかは微妙な情勢です。

▽米9月LMCI、2ヵ月連続でマイナス

米連邦準備制度理事会(FRB)が発表した米9月労働市場情勢指数(LMCI)は2.2ポイント低下し、市場予想の1.5より弱い結果となった。前月のマイナス1.3(マイナス0.7から下方修正)に届かず、年初来で7回目のマイナスを示す。7月まではサブプライム危機が火を噴く直前に低下トレンドへ突入した2007年5月から2009年6月までのサイクル以来で最長の6ヵ月連続でマイナスを示した。米9月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)の鈍化に合わせ、19項目で弾き出されるLMCIは再び弱含んでいる。

景気後退に陥った2007年12月から2009年6月まで417.8ポイント低下した後、回復サイクルに入ってから349.6ポイント取り戻した。景気が改善していく過程での平均上昇幅は約4ポイントであることを踏まえれば、18ヵ月以内に低下幅を相殺する見通しだ。ただし、足元で低下が続くだけに景気後退に陥った後の穴埋めに時間が掛かる可能性は否定できない。

LMCI、年初来では1月と7月しか上昇せず。

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(作成:My Big Apple NY)

――米9月雇用統計ではNFPと失業率で改善ペースに失速がみられたものの、労働参加率と平均時給が上昇したため労働市場は必ずしも弱い環境にはありません。労働市場が完全雇用に達したのであれば就業者数の伸びが鈍化しかねず、労働参加率が改善して求人数とのミスマッチが起これば就業者数が増加する期待が裏切られる。労働市場は、分岐点に差し掛かりつつあるようです。

(カバー写真:Ken Walton/Flickr)

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