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米11月貿易赤字、2ヵ月連続で拡大も市場予想ほど悪化せず

by • January 11, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off1528

Trade Deficit Continue To Rise, But Less Than Expected.

米11月貿易収支、米11月製造業受注をおさらいしていきます。

米11月貿易収支は452.40億ドルの赤字となり、市場予想の454億ドルを下回った。前月の423.60億ドル(426.04億ドルから修正)を6.8%上回り、2ヵ月連続で増加したとはいえ、大幅悪化を回避している。内訳をみると、輸出が前月比0.2%減(2ヵ月連続で減少)の1858.33億ドルと、5ヵ月ぶりの低水準。夏場はブラジルの悪天候に伴う大豆輸出拡大が輸出増に寄与していたが、その分が剥落し減少が続く。輸入は1.1%増(過去5ヵ月間で3回目の増加)の2310.72億ドルと2015年8月以来の高水準となり、赤字拡大を促した。

国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの赤字は、635.82億ドル。前月の603.16億ドル(修正値)を上回り、5ヵ月ぶりの水準へ増加した。なお2015年の貿易赤字は前年比4.6%増の5315億ドルと、2012年以来で最大を記録した。2014年の5050億ドルに続き、2009年以来の水準まで改善した2013年の4715億ドルから増加した。

貿易収支、10月に続き輸出が減少すると共に輸入が増加し赤字拡大。

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(作成:My Big Apple NY)

輸出の内訳をみると、モノは前月比0.6%減と2ヵ月連続で減少した。ドル高が進行するなか自動車関連や資本財、食料/飲料の落ち込みが目立った一方で、産業財と消費財、サービスが増加した。

(増加項目)
・産業財 4.3%増、過去5ヵ月間で4回目の増加>前月は3.0%減
・消費財 3.0%増、過去5ヵ月間で3回目の増加>前月は5.4%減
・サービス 0.4%増、4ヵ月連続で増加>前月は0.1%増

(減少項目)
・資本財 4.1%減、過去5ヵ月間で3回目の減少<前月は0.1%増
・食品/飲料 1.7%減、3ヵ月連続で減少>前月は11.1%減
・自動車 3.0%増、過去5ヵ月間で2回目の増加>前月は5.4%減

前年比で輸出は食品・飲料がプラスを維持も他は伸び悩み。

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(作成:My Big Apple NY

輸入の内訳をみると、モノが1.4%増と2ヵ月連続で増加し過去5ヵ月間で3回目の増加を示す。原油価格が40~50ドルで安定推移するなか、量ベースでの石油製品輸入は5.9%増と前月の3.3%減から転じ、3ヵ月ぶりに増加。金額ベースでも3ヵ月連続で上昇した。石油製品を除いたモノの輸入は0.9%増と、前月の1.3%増を含め過去5ヵ月間で3回目の増加を示す。項目別では産業材が大幅増だったほか食品/飲料、自動車が支えた。

(増加項目)
・産業財 6.0%増、過去5ヵ月間で3回目の増加>前月は1.2%減
・食品/飲料 2.1%増、過去5ヵ月間で4回目の増加>前月は0.2%増
・自動車 0.5%増、過去5ヵ月間で3回目の増加>前月は2.4%減

(減少項目)
・資本財 2.2%増、過去5ヵ月間で3回目の増加>前月は3.3%減
・消費財 5.0%増、5ヵ月ぶりに増加>前月は1.8%減

国別でのモノの貿易収支動向をみると、中国への赤字は前月比2.0%減の305.01億ドルと4ヵ月連続で減少した。日本への赤字は0.5%減の58.95億ドルと、小幅ながら減少へ反転。欧州全体への赤字額も12.0%増の162.89億ドルと、増加へ転じた。そのうち英国との貿易収支は2.95億ドルの赤字と前月の5.04億ドルを含め2ヵ月連続で赤字だった。

主な原油輸出国への貿易収支は、まちまち。原油先物の上昇を背景にカナダへの貿易収支は前月比2倍増の26.80億ドルの赤字と、3ヵ月連続で赤字となっている。石油輸出国機構(OPEC)への赤字も17.8%増の16.89億ドルへ拡大した。メキシコに対する赤字額のみ、6.5%減の57.93億ドルと縮小に反転している。以下は、今回の貿易収支における輸出と輸入の内訳のほか各国ごとのモノの貿易収支動向。11月は貿易赤字のランキングで、ベトナムが韓国を抜いて6位に浮上した。輸出では、10位だった香港が9位に上昇、代わりにベルギーが10位に転落するなど、変化がみられている。輸入では10位のイタリアがアイルランドに交代、輸出では7位に韓国で8位がオランダと前月から入れ替わった。

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(作成:My Big Apple NY)

――米11月貿易赤字を踏まえると、米10~12月期GDPにおける純輸出の寄与が低下する公算です。前期は純輸出の寄与度が0.85%と個人消費に次ぐ水準だった事情もあり、個人消費が芳しくない状況を踏まえると米10~12月期GDPの3%乗せは困難と言えそうです。ただし、JPモルガンは米11月貿易赤字の拡大幅が予想以下だったとし、米10~12月期GDPの予想を1.5%増から2.1%増へ上方修正しました。

▽米11月製造業受注、企業の設備投資に改善の兆し

米11月製造業受注は前月比2.4%減となり、市場予想の2.3%減を下回った。前月の2.8%増(2.7%増から上方修正)を含め5ヵ月ぶりに減少している。民間航空機など輸送機器を除く場合は前月の0.1%増となり、前月の0.8%増を含め4ヵ月連続で増加。コア資本財受注(民間航空機を除く非防衛財)は0.9%増と、速報値と変わらず前月の0.5%増と合わせ2ヵ月連続で増加した。

製造業出荷は0.1%減と、前月の0.2%増から転じ4ヵ月ぶりに減少した。国内総生産(GDP)に反映されるコア資本財の出荷は0.2%増とこちらも速報値に並び、3ヵ月ぶりに減少した前月の0.3%減(修正値)から回復した。

製造業在庫は0.2%増と、前月の0.1%増を超え2ヵ月連続で増加した。出荷が減少し在庫が増加した結果、在庫相当は3ヵ月連続で1.34ヵ月だった。

――製造業受注では、コア資本財の受注や出荷が増加したため、米10~12月期GDPで企業の設備投資を表す機器投資が改善する可能性を示しています。機器投資は原油安の余波を受け輸送やその他産業を中心に落ち込んだため4期連続で減少してきましたが、ようやくプラスに乗せる見通し。ただ米10~12月期GDPへの寄与度は小幅にとどまると考えられ、やはり個人消費が振るわなければ成長率3%超えは難しいでしょう。

(カバー写真:Louis Vest/Flick)

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