House GOP’s Obamacare Replacement Sparks Backlash.
共和党が6日、医療保険制度改革(通称オバマケア、正式名称は患者保護並びに医療費負担適正化法、PPACAで略してACA)の代替案をお披露目しました。その名は、米国医療保険法(American Health Care Act)です。
イースター(4月7~24日)までのオバマケア廃止・代替案の成立を目指します。野心的な見通しを含めた、ゴールドマン・サックス作成のカレンダーがこちら。
(出所:Goldman Sachsの資料にMy Big Apple NYが日本語追加)
カレンダー通り巡航速度で進んでいけば、トランプ・ラリー継続の期待は大きい。しかし、既に共和党下院が提出したオバマケア代替案は、共和党保守派から強烈な反発を招いおり前途多難な状況です。
下院の共和党はオバマケア撤廃・代替案の骨子は、以下の通り。
・医療保険加入者は、現行のカバレッジ条件を維持
・子供は26歳まで親の医療保険のもと被保険者として利用が可能(オバマケアと変更なし)
・医療保険費用の税控除を通じた補助金支払い(refundable tax credit、還付可能な税額控除で控除がゼロを超えた分を還付金が支払われる補助金のようなもの)を所得別ではなく、年齢別へ変更。29歳以下であれば年間2,000ドル、30~39歳は2,500ドル、40~49歳は3,000ドル、50~59歳は3,500ドル、60歳以上で4,000ドル。家族なら高齢な順から最大5人まで控除対象となり14,000ドルが上限。
・2020年から、独身で年収7万5,000ドル(夫婦で15万ドル)以上の世帯への税額控除を段階的に終了。独身で年収21万5,000ドルの場合は即時撤廃。
・医療貯蓄口座(Health Saving Accounts、HAS)の年間支払額の上限を独身の場合3,400ドル→6,550ドル、家族の場合6,750ドル→1万3,100ドルへ拡大。HASとは、高額免責医療保険に加入済みの企業が医療保険を提供しない従業員や個人事業主が主に開設する医療費負担向け口座。利子や医療費負担は免税だが、医療費以外の支出には課税され20%の罰金を支払う義務を負う。貯蓄は投資信託にも運用可能。
・失効した医療保険への再加入者に、保険料を30%上乗せ
・低所得者層向け医療保険(メディケイド)拡充を2020年1月から撤廃、新規加入者を凍結し加入者の年収増に伴い段階的に廃止へ。メディケイド拡充とは適用資格を貧困ラインの133%(独身で$14,856ドル、4人世帯で$30,675)へ引き上げ、扶養家族がいない成人も加入が可能とした。
メディケイド拡充に加え2014年から個人加入が義務付けられ、無保険者数は激減。
逆に、オバマケアから主に以下の内容が除外あるいは先送りされました。
・個人、従業員50人以上の企業に対する保険加入義務付け、未加入で罰金支払いの制度を撤廃、個人に限っては2016年12月末まで遡及し罰金支払いを不要とする。
・オバマケア財源確保を狙い導入された一連の課税措置を撤廃。医療機器(2.3%)、日焼けサロン(10%)、美容整形費用(5%)、高額納税者への課税(高額納税者の課税のうち投資所得の課税は独身で20万ドル、夫婦で25万ドルの上限を超える納税者の投資所得に3.8%、また年収が独身で20万ドル、夫婦で25万ドルを超える場合に医療保険税を追加で0.9%課税)など。
・避妊助成措置を含むプランド・ペアレントフッド(全米家族計画連盟)に対する連邦資金の拠出を廃止
・個人で1万200ドル、家族で2万7,500ドルを超える高額な医療保険へ40%課税(通称、キャデラック・タックス)導入を2020年から2025年へ先送り。
ご覧の通りメディケイド拡充をはじめオバマケアを踏襲した内容が、保守派の反感を買っています。長年にわたる共和党の大口支援者で億万長者のコック兄弟がバックアップする保守団体ヘリテージ・アクションやクラブ・フォー・グロース、フリーダム・パートナーズなどは、公表前から低所得者層向け公的医療保険(メディケイド)の拡充をはじめ税控除を通じた保険料への払い戻しに異議を唱えていました。
コーク兄弟と言えばウィル・フェレルとザック・ガリフィアナキスのコメディ映画「ザ・キャンペーン(The Campaign )」にデフォルメされたほどの権力者ですが、米大統領選挙中は共和党候補のトランプ氏に支持を表明しませんでしたよね。オバマケア撤廃・代替案への移行を意趣返しの機会と捉え、潰しに掛かるのではなんて妄想が働いてしまいます。
コーク兄弟がサポートする共和党下院の保守派グループのフリーダム・コーカスのマーク・メドウ委員長、共和党調査委員会のマーク・ウォーカー委員長、もちろん難色を示します。共和党の下院が237議席、フリーダム・コーカスだけで30人以上を擁する事情を踏まえれば、過半数に必要な218名に届きません。仮に下院が通過したところで、上院でも共和党の2016年の大統領選を戦ったクルーズ議員を含め右派3人が反対を表明済み。共和党の議席数は52であり、3人が賛成に回らなければ廃案に追い込まれる運命にあります。共和党下院が提出したオバマケア代替案は意気揚々と船出したものの、暗礁に乗り上げかねません。
(カバー写真:NOBama NoMas/Flickr)
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