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Q4GDP確報値は上方修正も、ダラス連銀総裁は政治リスクを懸念

by • March 31, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off1675

 Q4 U.S. GDP Growth Revised Up On Stronger Consumer Spending.

米10~12月期国内総生産(GDP)確報値と米新規失業保険申請件数をおさらいしていきます。

2016年の米10〜12月期GDP確報値前期比年率2.1%増と、市場予想の2.0%増を上回った。速報値並びに改定値の1.9%増から上方修正されつつ、2年ぶりの高水準を達成した7~9月期の3.5%増から鈍化している。個人消費が大きく上方修正され、全体に寄与。また企業の設備投資や在庫投資も上方修正されている。ただし、前期に大豆輸出急増という特殊要因が剥落し純輸出がマイナス寄与に転落し全体の重石となった。

10〜12月期のGDPは前年同期比で2.0%増と改定値と、速報値の1.9%増や前期の1.7%増を上回り1年ぶりの高水準に並ぶ。2016年通期のGDPは1.6%増にとどまり、3年ぶりに2%台を割り込み、2011年以来で最低となる。2015年は2.6%増で、2006年以来で最高を示していた。

GDPの7割を占める個人消費は3.5%増と、改定値の3.0%増と速報値の2.5%増から上方修正された。新車販売台数の加速やガソリン価格の上昇に支えられている。GDPの寄与度は2.4%ポイントと、改定値の2.05%ポイント並びに速報値の1.70%ポイントから上方修正されただけでなく、前期の2.03%ポイントも上回った。

▽個人消費の内訳

・耐久財 11.4%増<改定値は11.5%増、速報値は10.9%増、前期は11.6%増と2014年4〜6月期以来の高水準
・非耐久財 3.3%増>改定値は2.8%増、速報値は2.3%増、前期は0.5%減と2012年10〜12月期以来の減少
・サービス 2.4%増、3期ぶりの低水準>改定値は1.8%増、速報値は1.3%増、前期は2.7%増

民間投資はまちまちながら、全体としては上方修正となる。項目別では、企業の設備投資の一角を担う構築物投資が改定値から引き上げられた。企業の設備投資である機器投資は2015年7~9月期以来の増加に転じたものの、改定値と変わらず。ただし、無形資産投資も下方修正されている。住宅投資は改定値通りだった。民間投資の寄与度は1.47%ポイントと、改定値の1.45%ポイントから引き上げられたものの、速報値の1.67%ポイントに届かず。前期の0.50%ポイントからは改善し、2015年1~3月期以来の高い伸びを遂げた。

▽民間投資の内訳
・民間投資 9.4%増、2期連続で増加しただけでなく2015 年1~3月期以来の高水準>改定値は9.2%増、速報値は10.7%増、前期は3.0%増
・固定投資 2.9%増、2期連続で増加し2015年7~9月期以来の高水準<改定値は3.2%増準、速報値は4.2%増、前期は0.1%増
・非住宅(企業の設備投資) 0.9%増、3期連続で増加<改定値は1.3%増、速報値は2.4%増、前期は1.4%増と1年ぶりの高水準
あ構築物投資 4.5%減>速報値は5.0%減、前期は12.0%増と2014年1〜3月期以来の高水準
あ機器投資 1.9%増、2015年7~9月期以来の増加=改定値は1.9%増、速報値は3.1%増、前期は4.5%減
あ無形資産 1.3%増、2015年7〜9月期以来の低水準<改定値は4.5%増、速報値は6.4%増、前期は3.2%増
・住宅投資 9.6%増、3期ぶりに増加し2015年1~3月期以来の高水準=改定値は9.6%増、速報値は10.2%増、前期は4.1%減

Q4GDP改定値、個人消費と民間投資が共に上方修正。

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(出所:MGSSI)

在庫投資の寄与度は1.01%ポイントと、改定値の0.94%ポイントや速報値の1.0%ポイントから上方修正された。前期の0.5%ポイントに続き、2期連続でプラスとなる。逆に政府支出の寄与度は0.03%ポイントと、改定値の0.06%ポイントと速報値の0.2%ポイントから引き下げられた。純輸出の寄与度は速報値と改定値の1.70%ポイントから下方修正となり、4期ぶりにマイナスに反転した。前期は2013年10〜12月期以来の力強さだったがブラジル悪天候による大豆輸出急増が背景にあり、今回はこの特殊要因が剥落したほかドル高も悪影響を与えたとみられる。

▽その他
・純輸出の寄与度 マイナス1.82%ポイント、4期ぶりにマイナスに転じ2015年1~3月期に並ぶ弱さ<改定値と速報値はマイナス1.70%ポイント、前期は0.85%ポイントと2013年10〜12月期以来で最大
・在庫投資 496億ドル、2015年10~12月期以来の高水準>改定値は462億ドル、速報値は487億ドル>前期は71億ドル増

▽政府支出
・政府支出 0.2%増、2期連続で増加<改定値は0.4%増、速報値は1.2%増と2015年7~9月期以来の高水準、前期は0.8%増
・連邦政府 1.2%減=改定値と速報値は1.2%減、前期は2.4%増と3期ぶりに増加
(連邦政府は防衛支出が3.6%減と押し下げ、非防衛財は2.3%増とプラスながら前期の3.0%増から鈍化)
・州政府・地方政府 1.0%増、3期ぶりに増加<改定値は1.3%増<速報値は2.6%増 、前期は0.2%減

GDPデフレーターは前期比2.1%上昇し、改定値の2.0%から上方修正され速報値に並んだ。原油価格の上昇を背景に前期の1.4%を超えたが、2016年4~6月期の2.3%には届いていない。PCEデフレーターも2.0%の上昇にとどまり、改定値1.9%から上方修正され速報値へ切り返した。前期の1.5%を上回り、原油価格がピークアウトする以前である2014年1〜3月期以来の水準を示す。コアPCEデフレーターは1.3%の上昇と、市場予想並びに改定値の1.2%から上方修正。ただ前期の1.7%から減速した水準を維持し、FOMCのインフレ目標値「2%」が遠のいたことに変わりはない。

企業利益は在庫価値・資本支出調整前で前期比0.5%増と、2期連続でプラスを示した。前年比も9.3%増と2期連続で増加し、伸び率は4年ぶりの力強さをみせた。税引き後(在庫価値・資本支出調整前)で前期比1.6%増と前期の2.9%増には届かなかったが、5期連続で増加した。前年比では14.1%増と前期の4.8%増を超え、原油価格の戻りを受け2期連続で増益を示す。

直近は原油価格の戻りが企業利益の改善促す。

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(出所:My Big Apple NY)

――米10~12月期GDP改定値は、結局ホリデー商戦が好調で個人消費が下支えしました。企業利益も改善を示し、2017年も2%超えの成長率が期待できます。問題は、政治動向。医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃・代替案への移行で保守強硬派をまとめきれず失敗し、税制改革でも国境調整税は保守強硬派だけでなく上院の反対もあり調整は必至。国家経済会議(NEC)のコーン議長やムニューシン米財務長官と同じく、ゴールドマン・サックス出身で副会長を務めたダラス連銀のカプラン総裁が、3月30日に「ワシントンの動向」が経済の向い風要因になると言及した点は留意しておきたい。同総裁は今年の投票メンバーでタカ派寄りとみなされる一方、サンフランシスコ(SF)連銀総裁やボストン連銀総裁と一線を画し現時点で年内あと3回の利上げに汲みしていません。

同じくGS出身であるNY連銀のダドリー総裁は同日、財政刺激が経済に「上振れ」リスクを与えると懸念を寄せました。利上げは景気過熱の抑制策として適切、との見解も表明しています。ただしバランス感覚を忘れず、3月FOMCでただ一人据え置き票を投じたミネアポリス連銀のカシュカリ総裁の見方はFOMCとかけ離れていないとも説明しました。ミネアポリス連銀総裁もGS出身で、何よりGSの最高経営責任者(CEO)だったポールソン元財務長官の目に止まり財務次官補に就任した過去があります。

ダラス連銀のカプラン総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁、NY連銀のダドリー総裁のGSトリオは、今のところ三者三様の見解でバランスを取ります。政権との関係悪化を防ぎつつ金融政策の自由度を確保するためなのか、3名は投票メンバーなだけに今後のレトリックに要注意です。

▽米新規失業保険申請件数、2週連続で25万件オーバー

米新規失業保険申請件数は3月25日週に25.8万件と、市場予想の24.7万件を上回った。年初来で最高となる前週の26.1万件から減少しつつ、2週連続で25万件の節目を超えている。米労働省によると、特殊要因を確認していない。4週平均は25万4,250件と、前週の24万6,500件から増え年初来で最大となる。

季節調整前の州別動向では、ニューヨーク州をはじめテキサス州、カリフォルニア州での増加が目立つ。また前週に続きペンシルベニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州などが製造業が盛んな州で増加し、オハイオ州のみ大幅減を示した。

3月18日週までの継続受給者数は205.2万人と、2000年以来の200万人割れを示した前週の198.7万を上回った。被保険者に占める失業者の割合は1.5%と、年初来初めて過去最低に並んだ前週の1.4%から上昇した。

米新規失業保険申請件数は減少も、4週平均は年初来で最大。
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(作成:My Big Apple NY)

――原油価格が47ドル台まで調整したタイミングで、米新規失業保険申請件数が増加しました。3月30日には50ドル台を回復したものの、税制改革など成長を促す政策が成立に向け動き出さなければ、新規失業保険申請件数が徐々に増加してこないとも限りません。

(カバー写真:frankieleon/Flickr)

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