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米11月ADP全国雇用者数から求人件数まで、労働市場の減速を確認

by • December 7, 2023 • Finance, Latest NewsComments Off4142

ADP Private Payrolls, JOLTS And Other Indicators  Show Slowing Signs Of Labr Market.

米11月ADP全国雇用者数は前月比10.3万人増と、市場予想の13万人増を下回りました。前月の10.6万人増(11.3万人増から下方修正)から小幅減となり、2021年2月以降の増加トレンドのレンジ下限を保ちました。

チャート:米11月ADP全国雇用者数、年初来の21.1万人増を下回る水準

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(作成:Street Insights)

その他の労働指標を拾っていきましょう。

▽米11月チャレンジャー人員削減予定数は前月比で増加、採用予定者数は急減

米11月チャレンジャー人員削減予定数は前年同月比で40.8%減の4万5,510人と、4カ月ぶりに減少した。前月比では23.5%減と3カ月ぶりに増加した。

チャート:米11月人員削減予定数は、前月比では増加

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(作成:Street Insights)

チャート:過去4年間と比較、人員削減予定数は2019年以降で2020年を除き最多水準

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(作成:Street Insights)

年初来の人員削減予定数は前年同期比でほぼ2倍増の68万6,860人で、2020年を除けば、2009年以降で最多となる。

チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社のアンドリュー・チャレンジャー・シニア・バイス・プレジデントは、結果を受け「労働市場はゆるみつつあり、企業の採用意欲は低下している。労働市場は新年を迎えても通常の範囲内でのレイオフが続くと予想される」とのコメントを寄せた。

人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。

1位 小売 6,548人、前年同月は373人
2位 テクノロジー 5,049人、前年同月は5万2,771人
3位 金融 3,698人、前年同月は1,216人
4位 輸送 3,515人、前年同月は2,127人
5位 ヘルスケア 3,329人、前年同月は2,985人

年初来では、以下の通り。

1位 テクノロジー 16万3,562人、前年同月は8万978人
2位 ヘルスケア 7万8,730人、前年同月は2万564人
3位 小売 5万7,758人、前年同月は2万9,031人
4位 金融 5万792人、前年同月は1万7,571人
5位 倉庫 4万8,991人、前年同月は1万831人

採用予定者数は前年同月比48.5%減の1万5,566人と前年比で2カ月連続で減少した。前月比では53.7%減となり、年初来で8回目の減少となった。

チャート:採用予定者数、9月の急増後は低水準に

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(作成:Street Insights)

年初来の採用予定者数は前年同期比82.6%減の77万5,501人で、少なくとも、2016年以降で最低となる。年末商戦としては57万3,300人と、2013年以来で最低だった。

チャート:年末商戦の臨時雇用者数(計画発表ベース)は、2013年以来の低水準

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(作成:Street Insights)

セクター別では、単月で以下の通り。配送大手のUPSやフェデックス、小売などが押し上げた。前月は1位が金融、2位がエネルギー、3位が自動車、4位が食品、5位が資本財だった。

1位 政府 7,500人
2位 テクノロジー 1,500人
3位 食品 1,460人
4位 航空・宇宙 793人
5位 消費財 655人

▽米10月求人数は前月比で2カ月連続で減少、求人数/失業者数は2021年8月以来の低水準

米10月雇用動態調査によると、求人数は873.3万人と市場予想の930万人を下回った。前月の935万人(955.3万人から下方修正)を6.6%下回り、2021年3月以来の低水準に。求人数は2021年5月以降、失業者数を上回るトレンドを保ちつつ、その差は2021年7月以来の水準まで縮小した。

チャート:求人数は2カ月連続で減少し、2021年3月以来の低水準

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(作成:Street Insights)

チャート:求人数と失業者数の差は、2021年7月以来の水準へ縮小

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(作成:Street Insights)

求人数が減少した一方で、失業者数が大幅に増えた結果、失業者1人当たりの求人件数は1.34件と2021年8月以来の低水準だった。

チャート:22年9月FOMCでパウエルFRB議長が「労働市場を見る上で良い手段」と発言した1.51件まで減少

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(作成:Street Insights)

採用者数は前月比0.3%減の588.6万人と3カ月ぶりに減少、2021年1月以来の低水準近くを保った。

離職者数は564.6万人と前月比0.9%増で、増加に転じた。今回、定年や自己都合による自発的離職者数が同0.5%減の362.8万人と2カ月連続で減少、労働市場が買い手市場に変化しつつある様子を示唆する。離職者数を押し上げた。なお、自発的な離職者数は、自動車大手GMが今年から年間10億ドルのコスト削減を目指し、早期退職制度を通じ全世界で定額給従業員5,000人を削減する方針を発表したように、”自主退職制度”を通じた離職であれば解雇者ではなく自発的離職者数にカウントされる場合がある。逆に、解雇者数は同2.0%増の164.2万人と、過去5カ月間で4回目の増加となった。

チャート:離職者数、8月は3カ月ぶりに増加

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(作成:Street Insights)

▽米新規失業保険申請件数、小幅ながら2週連続で2019年の平均超え

12月2日週までの米新規失業保険申請件数は22万件と、市場予想の22.2万件を下回った。前週の21.9万件(21.8万件から上方修正)に続き、小幅ながら2019年平均値を2週連続で上回った。

11月25日週までの継続受給者数は186.1万人と、前週の192.5万人(192.7万人から下方修正)を下回ったが、約2年ぶりの高水準近くを保った。。

チャート:米新規失業保険申請件数は低水準で推移、継続受給者数も大幅増を回避

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(作成:Street Insights)

――その他、オンライン求人広告大手インディードのリアルタイム求人動向は、12月1日時点で125.1と、年初来平均の131以下にとどまっただけでなく、2021年4月以来の水準で低迷しています。

チャート:インディードのリアルタイム求人広告動向、2021年4月以来の低水準

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(作成:Street Insights)

ーー米11月雇用統計・非農業部門就労者数は前月比18万人増と、10月の15万人増を上回る見通しです、全米自動車労働組合(UAW)がストライキを終了したため、職場復帰が予想されるためです。しかし、米11月採用予定数が落ち込んだように、年末商戦効果ははく落し、失業保険の継続受給者数の高止まりをみても、失業率は下がりそうにありません。米11月雇用統計は、労働市場の減速を改めて確認する機会となりそうです。

問題は、11月FOMC議事要旨にあった、インフレ減速を判断する条件である①一定期間にわたる潜在成長率(2%程度)以下の実質GDP成長率、②労働市場の軟化ーーをめぐる12月FOMCでの評価です。こちらで指摘したように、労働市場が急減速しない限り、2024年末のFF金利予想・中央値はFF先物市場での2024年末利下げ観測(5回、4.0-4.25%への利下げ)と乖離が生じそうです。

(カバー写真:infradept/Flickr)

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