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4月ベージュブック、“不透明性”の懸念後退を示す

by • April 21, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off2104

April Beige Book Shows Concerns Related To Uncertainty Have Eased.

米連邦準備制度理事会(FRB)が19日に公表したベージュブック(2月半ばから3月末までカバー)によると、米経済は拡大(increased)した。拡大ペースは「緩慢とゆるやかで均等に分かれた(equally split between modest and moderate)」とあり、「緩慢からゆるやか(from modest to moderate)」からの微修正にとどまっている。リッチモンド地区連銀がまとめた今回の詳細は、以下の通り。

(経済全般のセクション)
・経済活動は、「緩慢からゆるやか(from modest to moderate)」に拡大した
・回復ペースはセクターによって異なり、製造業は緩慢あるいはゆるやかに拡大し続けた(continued to expand at a modest to moderate pace)が貨物輸送は「わずかに鈍化した(slightly slowed)

個人消費は「まちまち(varied)」で、自動車は力強かったものの非自動車は「幾分、軟調度合いが強まった(somewhat softer)」
・観光と旅行は全般的に「回復した(picked up)」
・住宅販売ペースが鈍化したものの、住宅建設の伸びは「幾分加速した(accelerated somewhat)」

・商業施設など非住宅の建設は「力強さを維持した(remained strong)」が地域によって異なり、リースは「全般的に緩慢なペースで改善した(generally improved at a more modest pace)」
・地区連銀報告の半分以上で融資額の「増加(increased)」を確認一方、1行のみ「ゆるやかな鈍化(down modestly)」を報告した。

・非金融サービスは全般的に「堅調に拡大した(generally continued to expand steadily)」。
・エネルギー関連のビジネス状況の「改善(improvement)」を指摘したが、農業は「まちまち(varied)」だった

(地区連銀別、経済活動の形容詞)
・「緩慢」と表現した地区連銀、5行<前回は6行
→NY(前回通り)、フィラデルフィア(前回通り)、アトランタ(前回通り)、セントルイス(前回通り)、ミネアポリス(前回通り)
・「ゆるやか」と表現した地区連銀、5行>前回は4行
→クリーブランド(前回の「安定的」から下方修正」、カンザスシティ(前回の「緩慢」から上方修正)、シカゴ(前回通り)、ダラス(前回通り)、サンフランシスコ(前回通り)
・「緩慢+ゆるやか」と表現した地区連銀、1行=前回も1行
→ボストン(前回通り
・「わずかに加速」と表現した地区連銀、1行=前回はゼロ
→リッチモンド(前回の「ゆるやか」から上方修正)、1行
※ダラスとリッチモンドは、エネルギー関連の生産地が比較的多く集まる。

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(作成:My Big Apple NY)

(雇用と賃金)
雇用の伸びは「緩慢からゆるやか(modest to moderate)」
労働市場は「逼迫したまま(remained tight)」で、大半の地区連銀は特殊技能職における高い需要にも関わらず採用が「困難(difficulty)」、技術水準の低い労働者でも同様
多くの企業は離職率が高く、従業員の維持が困難と報告
・2行は製造業をはじめ輸送、建設など複数のセクター(some sectors)人材不足で人件費が高まり、成長を抑制していると指摘
・ビジネスは向こう6ヵ月にわたり、全般的に労働需要が「ゆるやか(moderately)」に高まり、賃金が「緩慢に(modest)」上昇すると予想 

経済活動に対する形容詞の登場回数、比較チャート。

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(作成:My Big Apple NY)

(物価のセクション)
概して、物価は前回から「緩慢に上昇(rose modestly)」
・仕入れ価格は全般的に「緩慢なペース(at a modest rate)」で上昇したが、販売価格の上昇を上回った
・木材やコンクリートなど建築材価格の上昇が指摘された一方、金属価格は「非常に安定的なまま(remained fairly stable)」で、エネルギー価格は「横ばいあるいはわずかに下落(flat to slightly lower)
・農業の価格は「まちまち(varied)」で綿やピーナッツ、鶏肉、豚肉が「上昇(increases)」した半面、コーンや小麦は「下落(declines)」
ビジネは概して、数ヵ月先の物価上昇に対し「緩慢な(moderate)」物価上昇を予想

(全体のキーワード評価)
総括並びに地区連銀のサマリーでみたキーワードの登場回数は、以下の通り。今回、米大統領選挙を前から指摘された「不透明性」との文言が消えた。なお2016年10月分は7回、2016年11月分は3回、2017年1月分は7回、2017年3月分は3回だった。

「増加した(increase)」→22回>前回は15回
「強い(strong)」(注:強いドルの表現を除く)→9回>前回は4回
「ゆるやか(moderate)」→18>前回は13回
「緩慢、控え目など(modest)」→24回=前回は24回
「弱い(weak)」→1回<前回は2回
「底堅い(solid)」→1回=前回は1回
「安定的(stable)」→3回>前回は0回
「不透明性(uncertain)」→0回<前回は3回

「不透明性」をめぐる文言はサマリーで確認しなかったものの、地区連銀の詳細報告での登場回数は前回に続き7回で、以下の通り。

・ボストン地区連銀 3回(前回と変わらず)
→政策不透明性を受けながら業績見通しはポジティブとの言及で1回、旅行/観光のセクターがビザ取得数の縮小と価格上昇を上乗せできない事情から見通しの不透明性が増したと報告し1回、通商政策への不透明性を受けた製造業の見通しで1回

・フィラデルフィア地区連銀 1回(前回なし)
→ニュージャージー州の小売関連は利益の面で過去2年間にて最高のペースを維持できるか不透明という観点から1回

・クリーブランド連銀 2回(前回と変わらず)
→通商政策の見通しについて1回、医療保険制度改革の見通しについて1回

・ダラス連銀 1回(前回と変わらず)
→数社が製造業の見通しに不透明性が高いとして1回

(ドル高をめぐる表記)
ドル高をめぐるネガティブな表記は、前回に続き総括はなし地区連銀は個別で2行が指摘し、前回と変わらなかった。ただし登場回数は前回の1回ずつ合計2回から今回は3回に増えた。前回に続きドル高を批判したサンフランシスコ連銀が、今回は2回指摘。クリーブランド地区連銀は前回通り1回だった。一方でダラス連銀はドル高批判組から抜けた。

・クリーブランド連銀 1回
→鉱工業生産が軟調な理由として1回

・サンフランシスコ連銀、1回
→製造業関連の輸出圧迫要因として1回、農業/資源の輸出抑制要因として1回

(中国)
中国というキーフレーズが登場した回数は6回連続でゼロとなった。2015年9月に初めて中国が盛り込まれた当時の11回から徐々に減少し、1年経過した2016年9月分でゼロへ戻した後は、その流れを続けている。

――今回のベージュブックでは、不透明性の後退を確認しました。医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃・代替案の移行に失敗する前の内容だったことが一因でしょうか。1~3月期の成長率はアトランタ地区連銀の予測値で0.5%増(4月21日時点)、ブルームバーグのエコノミスト予想平均で前期比年率1.5%増と、2016年10~12月期の2.1%増から減速が見込まれる割に総括では「力強い」、「増加している」などポジティブな見解が目立ちました。仮に低成長にとどまったとして4~6月期の成長回復が期待される半面、賃金や労働需要の見通しはあくまで「緩慢」、「ゆるやか」ですから、リバウンド力は限定的となる余地を残します。

(カバー写真:Jim Rhodes/Flickr)

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