U.S. Auto Sales Keep Declining, And No Signs To Recover.
オートデータが発表した米4月新車販売台数は、前年同月比4.7%減の142万6,216台だった。営業日数は1~3月こそ前年同月比較で変わらなかったが、今回は1日少ない。年率では1,688万台と、前月の1,662万台を上回ったとはいえ前年同月の1,740万台に遠く及ばなかった。トランプ米大統領誕生に際し自動車メーカーを中心に米国内での投資・採用計画を発表し、金利上昇も一服したが販売を押し上げられず。中古価格の下落と残債が担保価格を上回るアンダーウォーターの状況、さらに金融機関の融資引き締め姿勢が新車販売台数に影響を与えつつあるようだ。
車種ではSUVやトラックが引き続き底堅いものの、2016年ほどの力強さに欠ける。販売奨励金(インセンティブ)効果が一因だが、セダンや小型車が煽りを受けた状況が続く。ガソリン価格は原油先物が50ドル台近くで安定するなか、一時2.449ドルと2015年8月の水準へ上昇していた。
ケリー・ブルー・ブックによると、平均販売価格は前年同月比1.7%上昇の3万4,552万ドル(約380万円)と、前月と同率の伸びを示した。前月比では0.1%下落し、4ヵ月連続でマイナスをたどる。メーカー別の平均価格を前月比でみるとこれまでに反しフォルクスワーゲン(VW)とヒュンダイ・キアで上昇、他はホンダが横ばいだったのみで下落していた。前年比ではGM、VW、を除き全て上昇。特に日産、フィアット・クライスラー、フォードが顕著となる。
自動車メーカー別では、米系大手3社並びに日系大手3社がそろって減少した。市場予想ほど悪化しなかったメーカーはトヨタのみ。市場予想以上に弱い数字だったメーカーはGM、フォード、フィアット・クライスラー、日産、ホンダとなる。
以下、米国をはじめメーカー別動向。
【GM】
GMは前年同月比5.8%減の24万4,406台と、市場予想の2.0%減より下げ幅を広げ3ヵ月連続で増加した。小売販売台数は4.4%減の19万1,911台と、3ヵ月ぶりに減少に転じている。全体の新車販売台数で4大ブランド別をみると、前月に続き2ブランドで増加した。小売販売台数でも2ブランドで増加している。年間の販売台数をめぐっては3月に続き全体の見通しを示さず、ただし乗用車の減少とトラックの増加を予想した。2月は3年連続で過去最高を更新するか過去最高近くに到達するとし、1月より若干強気な見通しを後退させていた。
・ビュイック 17.0%増の2万735台、2ヵ月連続で増加
→主力のSUV「アンコール」が27.0%増の8,365台と5ヵ月連続で全体を支えたほか、新型「エンビジョン」が4,297台と堅調で、「エンクレーブ」の減少トレンドを抑えた。小売販売台数は14.8%増の1万8,743台と、3ヵ月連続で増加した。
・キャデラック 9.5%像の1万2,300台、4ヵ月ぶりに増加
→主力セダンの「XTS」が39.9%減の914台と減少が続いたが、新型「XT5」が5,501台と全体を牽引した。小売販売台数は7.2%像の1万1,124台と3ヵ月ぶりに増加した。
・GMC 0.3%減の4万7,004台、6ヵ月ぶりに減少
→SUVの「アカディア」が45.1%増の1万164台と4ヵ月連続で大幅増となったほか、新型「テレイン」が14.3%増の8,396台となり、主力SUV「シエラ」の15.3%減の1万7,400台や「キャニオン」の21.7%減の2,368台の減少を相殺した。小売販売台数は4.8%減の3万7,509台と2ヵ月連続で減少した。
・シボレー 10.4%減の16万4,367台、2ヵ月連続で減少
→主力のSUV「シルバラード」は19.7%減の4万154台と2ヵ月連続で減少したほか、「エキノックス」や「タホー」も小幅増にとどまった。小型車「マリブ」は20.2%減の1万7,364台と全体の足を引っ張ったものの、小型車「クルーズ」は50.6%増の2万1,317台と4ヵ月連続で支え、全体的にまちまちな様相に。小売販売台数は7.5%減の16万4,367台と前月から減少に転じた。
【フォード】
フォードは前年同月比7.2%減の21万4,965台となり、市場予想の5.8%減より下げ幅を広げ4ヵ月連続で減少した。2大ブランド別では、フォードが5ヵ月連続、リンカーンは2ヵ月連続で減少した。なお同社は2016年1月、日本とインド市場から撤退を決定した。詳細は、以下の通り。
・フォード 7.5%減の20万5,004台、5ヵ月連続で減少
→アルミ製ボディのトラック「Fシリーズ」が0.2%減の7万657台と、単月ベースでは2004以来で最高記録更新を止めた。SUVは4月単月で過去最高を更新し「エスケープ」が7.2%像の2万5,637台と増加に転じ貢献しつつ、「エクスプローラー」は2.5%減の1万9,771台と2ヵ月連続で減少した。小型車は3ヵ月連続で不振となり「フォーカス」は17.4%減の1万3,197台と11ヵ月連続で減少、「フュージョン」も19.5%減の1万6,697台と9ヵ月連続で減少した。
・リンカーン 0.9%減の9,691台、2ヵ月連続で減少
→主力の「MKZ」は24.8%の2,658台と増加に転じたものの、他は減少の流れが止まらなかった。
【フィアット・クライスラー】
フィアット・クライスラー・オートモビルは前年同月比7%減の17万7,741台となり、市場予想の5.9%減より弱く2ヵ月連続でマイナスだった。2016年9月に増加トレンドを78ヵ月で止めた後、7ヵ月連続で前年比マイナス。5大ブランド別での増加は2016年9月~2017年1月までラムの1ブランド、2~3月はドッジが加わったが今回は再びラムのみとなった。詳細は、以下の通り。
・ラム 5%増の4万7,327台、11ヵ月連続で増加
→主力の「ラム」が8%増の4万3,321台と8ヵ月連続で増加した程度で、前月減少した「プロマスター・バン」は4%減の2,701台と減少に転じるなど他は弱い。
・ドッジ 3%減の3万9,445台、2ヵ月連続で減少
→主力の「キャラバン」が20%減の9,817と7ヵ月連続で減少したほか、「チャージャー」も4%減の6,397台と2ヵ月連続で減少。「ジャーニー」が75%増の8,401台と5ヵ月連続で増加したが、力及ばずだった。
・ジープ 17%減の6万8,879台、8ヵ月連続で減少
→「チェロキー」が17%減の1万4,083台と減少トレンドを維持したほか、「ペイトリオット」も53%減の4,949台と6ヵ月連続で減少した。「ラングラー」は横ばいの1万8,841台にとどまる。一方で「グランド・チェロキー」のみ、6%増の1万8,877台と5ヵ月連続で増加した。
・クライスラー 33%減の1万6,969台、14ヵ月連続で減少
→新型「パシフィカ」が1万427台だったものの、セダンの「200」が54%減の2,857台と減少トレンドをたどった。
・フィアット 18%減の2,539台、16ヵ月連続で減少
→「500」が20%減の1,201台と減少に転じたほか、「500X」や「500L」など引き続き2桁減で全体の重石となった。新型「スパイダー」は465台にとどまり、全体を牽引するほどの馬力をみせていない。
自動車メーカー別、米国市場シェアはGMが17.1%で首位を堅持。2位はフォードで15.0%、3位のトヨタは14.2%、4位はフィアット・クライスラーが12.4%、5位がホンダで9.7%、日産は6位で9.1%へ低下した。
(出所:Good Car Bad Car)
【トヨタ】
トヨタは4.4%減の20万1,926台と、市場予想の4.8%減より下げ幅を縮小しつつ4ヵ月連続で減少した。ブランド別ではトヨタが3ヵ月ぶりに増加、レクサスは6ヵ月連続で減少した。詳細は、以下の通り。
・トヨタ 0.3%増の17万9,810台、3ヵ月ぶりに増加
→SUVやトラックが回復、販売・生産を打ち切ったSUV「RAV4」が9.4%増の3万1,757台と6ヵ月連続で増加し単月で過去最高を更新した。「ハイランダー」も24.2%増の1万7,981台と、8ヵ月連続で増加し単月で過去最高の記録を塗り替えている。さらに「4ランナー」まで6.8%増と1万428台と、他メーカーと比較してSUVの力強さが目立つ。しかしセダンが足を引っ張り「カローラ」が4%減の3万1,104台と5ヵ月連続で減少、「カムリ」も4.1%減の3万1,428台と11ヵ月連続で減少した。
・レクサス 7.7%減の2万72,116台、6ヵ月連続で減少
→乗用車部門が弱く18.5%減の7,761台と、5ヵ月連続で落ち込み7車種中「CT」を除き全て減少した。SUVやトラックも0.6%減の1万84,335台と前月から減少に反転、4車種中「NX」を除き全て減少した。
【ホンダ】
ホンダは前年同月比7.0%減の13万8,386台となり、市場予想の5.3%減より下げ幅を広げ2ヵ月連続で減少した。2大ブランド別では、ホンダが6.3%減の12万4,254台と3ヵ月ぶりに減少。特に「シビック」が11.7%減の3万1,211台と3ヵ月連続で減少しホンダ全体の売上の伸びを抑えた。一方で「CR-V」は13.0%増の3万2,761台と、単月で過去最高を塗り替え全体を支えた。アキュラは12.8%減の1万4,132台と、2ヵ月連続で減少した。
【日産】
日産は1.5%減の12万1,998万台となり、市場予想の1.5%増から転じた。少なくとも直近で初のマイナスを示す。2大ブランドでは日産が6ヵ月ぶりに減少、インフィニティは1~3月に続き増加した。詳細は、以下の通り。
・日産 2.0%増の11万1,201台、6ヵ月ぶりに減少
→SUVで主力の「ローグ」が18.2%増の2万7,386台となり、映画公開が終わった後も「ローグ・ワン/スターウォーズ」限定版のフォースが働いた。ただし「ムラノ」は11.7%減の5,504台と、4ヵ月連続で2桁減だった。乗用車では「セントラ」が5.8%増の2万255台、セダンの「マキシマ」も21.7%増の5,564台と2ヵ月連続で増加したが、主力の「アルティマ」が28.9減の2万263台と6ヵ月連続で減少した。
・インフィニティ 3.5%増の1万797台、6ヵ月連続で増加
→セダンの「Q60」が7倍以上に増加し744台だったほか、SUVの「QX80」が28.3増の1,336台と増加を支え他の減少を打ち消した。
その他の海外メーカーは、以下の通り。
・フォルクスワーゲン(VW) 1.6%増の2万7,557台、6ヵ月連続で増加
→排ガス不正が発覚した2015年9月に続き同年11月にはガソリン車にも火種が及んだ影響からか以降は11ヵ月連続で減少しつつ、2016年11月から5ヵ月連続で増加した。アウディは5.1%増の1万8,711台と増加トレンドをたどる。グループ全体では3.1%増の4万6,598台と6ヵ月連続で増加した。
・テスラ(推計値)は32.8%増の3,850台、増加トレンドを維持
・ヒュンダイは1.3%減の6万3,050台
・キアは5.6%減の5万3,358台と4ヵ月連続で減少
自動車メーカーからディーラーへの1台当たりインセンティブは前年同月比13.9%増の3,465ドルとなり、2月の3,511ドル(13.7%増)を上回った。前年比で2桁増を示し、2016年10月~2017年3月に続き新車販売台数のテコ入れにインセンティブを拡大させたことが分かる。前年比での伸び率はもともとインセンティブが非常に低かったスバルが45.2%の上昇と群を抜き、2位は日系メーカーと比較して元々インセンティブが高いヒュンダイ(28.5%の上昇)、3位は日産(20.5%の上昇)だった。メーカー別のインセンティブ費用はGMが1位、2位がメルセデス・ベンツ、3位がフィアット・クライスラー、4位がBMW、5位に日産が入る。最低は1桁少ないスバルだった。
(出所:Truecar)
高級車部門別ランキングは、以下の通り(%は全て前年比)。今回、高級車御三家のメルセデス・ベンツ、BMW、レクサスがトップ3を維持した。トップ3では年初から変わらずメルセデス・ベンツが1位、BMWが2位、レクサスが3位となる。そのほかアキュラが6位に浮上した。
1位 メルセデス・ベンツ 8.5%減の2万9,125台
→4ヵ月連続で1位、年初来でも0.8%増の11万5,699台と首位。2016年は前年比0.4%増の37万4,541台で、2015年に続きトップの座に堅持した。なお2013年は1位だったが、2014年ではBMWに1位を明け渡していた。
2位 BMW 9.3%減の2万2,624台
→4ヵ月連続で2位、年初来でも1.3%減の9万4,306台で2位。2016年は9.5%減の31万3,174台で3位、2015年は1.8%増の34万6023台で首位の座を宿敵メルセデス・ベンツに明け渡していた。2014年では1位、2013年は2位だった。
3位 レクサス 11.1%減の2万2,116台
→3月は3ヵ月連続で3位、年初来でも15.3%減の8万3,961台で3位。2016年は3.9%減の33万1,228台で2位に終わった。2015年は10.7%増の34万4601台で3位。2011年まで11年間連続で首位を飾ったが、東日本大震災後に順位を落とし2014年、2013年、2012年に続き3位にとどまる。
4位 ビュイック(GM)17.0%増の2万735台
→3ヵ月連続で4位、年初来では1.5%減の7万940台で4位。2016年は2.9%増の22万9,631台、2015年も2.6%減の22万3055台で共に4位だった。
5位 アウディ(VW)5.1%増の1万8,711台
→3ヵ月連続で5位、年初来では7.7%増の6万4,358台と5位。2016年は4.0%増の21万213台、2015年は11.1%増の20万2202台で共に5位だった。
6位 アキュラ 12.8%減の1万4,132台
→前月の8位へ上昇、年初来では15.1%減の4万5,894台で8位。2016年は8.9%減の16万1,360台で7位、2015年は5.6%増の17万7165台で6位に収まっていた。
7位 キャデラック 9.5%像の1万2,300台
→前月通り7位。年初来では1.3%減の4万6,282台で7位。2016年は3.0%減の17万6台で6位だったが、「インフィニティ」に追い抜かれた。2015年は2.6%増の17万5,262台で、7位だった。
8位 インフィニティ 3.5%増の1万797台
→3月まで3ヵ月連続で6位を経て、8位へ転落。年初来でも26.1%増の5万4,358台で6位。2016年は3.6%増の13万8,293台で8位だったが、順位を上げて2017年のスタートを切った。2015年は13.8%増の13万3498台で8位となる。
新車販売台数:モデル別ランキング(%は前年同月比)で、日産「ローグ」が4位から9位へ転落した。そのほか日産「アルティマ」が圏外に落ち込み、日産勢が軟調だった。
1位 Fシリーズ(フォード)0.2%減の7万657台、前月も1位
2位 ラム(フィアット・クライスラー)7.6%増の4万3,321台 前月も2位
3位 シルバラード(GM)19.7%減の4万154台、前月も3位
4位 CR-V(ホンダ)13.0%増の3万2,761台、前月は5位
5位 Rav4(トヨタ)10.3%増の3万2,027台、前月は6位
6位 カムリ(トヨタ)7.7%減の3万1,428台、前月は10位
7位 シビック(ホンダ)11.7%減の3万1,211台 前月は7位
8位 カローラ(トヨタ)9.3%減の2万9,136台 前月は8位
9位 ローグ(日産)18.2%増の2万7,386台、前月は4位
10位 アコード(ホンダ)14.8%減の2万6,938台、前月は圏外
SUV版:新車販売台数、ブランド別ランキング(%は前年同月比)は以下の通り。大きな変動はなくトヨタの「ハイランダー」が圏外に落ちた代わりにスバルの「フォレスター」がトップ10に戻った。
1位 CR-V(ホンダ)13.0%増の3万2,671台、前月は2位
2位 Rav4(トヨタ)5.3%増の3万1,757台 前月は3位
3位 ローグ(日産)18.2%増の2万7,386台、前月は1位
4位 エスケープ(フォード)7.2%増の2万5,637台 前月も4位
5位 エクスプローラー(フォード)2.9%減の2万2,864台、前月も5位
6位 エキノックス(GM、シボレー)0.2%増の2万655台、前月も6位
7位 ジープ・グランドチェロキー(フィアット・クライスラー)6.2%増の1万8,877台、前月も7位
8位 フォレスター(スバル)1.9%増の1万4,761台、前月は圏外
9位 アウトバック(スバル)12.7%増の1万5,909台、前月は10位
10位 ジープ・ラングラー(フィアット・クライスラー)±0%の1万8,841台、前月は9位
(カバー写真:Ford)
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