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米11月ADP全国雇用者数は鈍化、ハリケーン特需が剥落し建設は減少

by • December 7, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off1375

National Employment Grows Solid, But Construction Jobs Decrease.

米11月ADP全国雇用者数、米7~9月期労働生産性・確報値をおさらいしていきます。

米11月ADP全国雇用者数は前月比19.0万人増となり、市場予想と一致した。5ヵ月ぶりの高水準だった前月の23.5万人増には届かず。ハリケーン“ハービー”や“イルマ”の一時的な影響がほぼ一巡した後も、ホリデー商戦の雇用も押し上げにつながり、ADP全国雇用者数は2010年2月以来の増加トレンドを保つ。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。

ADP全国雇用者数、高水準を維持。

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(作成:My Big Apple NY)

セクター別では、サービス部門が15.5万人増と前月の15.0万人増を上回り、3ヵ月ぶりの強い伸びを示した。ホリデー商戦の開始を受け、輸送・倉庫が3.6万人増と前月の5.0万人減から改善。雇用統計の就業者数の伸びランキングで上位常連での専門サービスは4.7万人増と前月の1.1万人増を超え、教育・健康も5.4万人増と前月の3.9万人増を上回った。娯楽・宿泊は2.5万人増と前月の4.5万人増に届かなかったものの、ハリケーン直前の流れに戻し堅調に推移している。

一方で、ハリケーン直撃にも関わらず財部門(製造業、建設、鉱業)は3.6万人増と前月の8.5万人増を下回った。ただし、8ヵ月連続で増加している。ハリケーンの復興需要を反映し前月に6.2万人増と力強い伸びを示した建設が0.4万人減と、マイナスに反転し全体を押し下げた。原油先物が約2年ぶりの55ドル台乗せの過程にあったものの、鉱業は前月の1.0万人増から±0人に転じている。製造業のみ4.0万人増と前月の2.2万人増を超え、7ヵ月間で最高を迎えた。

ADPとともに統計を担当するムーディーズ・アナリティクスのマーク・ザンディ主席エコノミストは、結果を受け「労働市場は過熱状態にあり、産業や企業規模を問わず広範囲にわたって広がっている」と評価した。足元で弱いセクターは既存店を抱える小売を中心としたテクノロジーの進化の脅威に直面する業種のみで、「2018年は労働市場が一段とひっ迫するリスクが強まっている」と指摘。明言を控えたが、2018年のインフレ圧力の高まりやリ3回以上の利上げペースを念頭に入れ始めた印象を残す。

▽米7~9月期浪々生産性・確報値は3年ぶり高水準、単位労働コストは低下

米7~9月期労働生産性・確報値は前期比年率3.0%上昇し速報値と変わらず、市場予想の3.3%を下回った。前期の1.5%の上昇(修正値)に続き6期連続でプラスだっただけでなく、3年ぶりの高水準を示す。内訳は、以下の通り。生産が速報値から改善した分、労働時間が延びたものの実質賃金はマイナス幅が速報値から広がった。

・生産 4.1%、6期連続で上昇>速報値は3.8%、前期は1.5%
・労働時間 1.1%、7期連続で上昇>速報値は0.8%、前期は2.4%
・時間当たり賃金 2.7%、6期連続で上昇<速報値は3.5%、前期は0.3%
・実質賃金 0.7%、3期連続で上昇>速報値は1.5%、前期は0.6%
・単位労働コスト(一定量を生産するために必要な労働経費を示す) 0.2%の低下、2期連続でマイナス<速報値は0.5%の上昇、前期は1.2%の低下

前年比での労働生産性は1.5%上昇し、前期の1.3%と合わせ4期連続のプラスを示した。逆に単位労働コストは0.7%低下し、前期の0.6%の低下を含め2期連続でマイナスに。過去4期で3回目の低下となり、軟調な労働コスト環境を確認した。

労働生産性は前年比で上昇も、単位労働コストはマイナス。

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(作成:My Big Apple NY)

JPモルガンのジェシー・ヒューウィッツ米エコノミストは、結果を受けて「労働生産性の加速はあくまで前年比1.5%の上昇、過去5年間でも0.8%の上昇にとどまった」と振り返る。その上で、労働生産性をめぐっては割り引いてみる必要があり「むしろ前年比などの水準が実態に近いのではないか」と説く。単位労働コストについては、時間当たり賃金が前期を上回ったように、改善の可能性があるとの見方を寄せた。

――今回の労働生産性の加速は、平均労働時間の短縮や時間当たり賃金の鈍化が背景にあると考えられ、生産性の改善を表すとは言い難い状況です。単位労働コストの低下基調も気掛かり。労働時間の割に時間当たり賃金は前期の0.3%から2.5%へ伸びを加速させたとはいえ、同指標は直近で振れが激しい状況です。雇用統計の平均時給で示されるように低インフレ環境を脱却できたかは不透明で、11月の雇用統計の結果が待たれます。

(カバー写真:Donald Lee Pardue/Flickr)

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