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米11月雇用統計・NFPは2ヵ月連続で20万人増も、平均時給は振るわず

by • December 8, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off2500

Strong Jobs Number Continue With Sluggish Pay In November.

米11月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比22.8万人増と、市場予想の19万人増を上回った。ハリケーン“ハービー”と“イルマ”を受けた急変動を経て、2ヵ月連続(前月は26.1万人増から24.4万人増へ下方修正)で20万人増を達成。2ヵ月連続の20万人乗せは、年初の1~2月以来となる。米11月ADP全国雇用者数の通り、力強さを示した。過去2ヵ月分は10月分が下方修正されたが9月分は上方修正(1.8万人増→3.8万人増)されたため、2ヵ月分で0.3万人の上方修正となる。9~11月期平均は17.0万人増となり、2016年の平均18.7万人増に近づいた。年初来では17.4万人増となる。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比22.1万人増と、市場予想の18.4万人増を上回った。前月の24.7万人増(25.2万人増から上方修正)に続き、20万人増を遂げている。民間サービス業は15.9万人増と、2010年2月以来の減少となる前月の21.3万人増(21.9万人増から下方修正)を下回った。

セクター別動向では、上位常連が1位と2位を占めた。1位は前月に3位だった教育・健康が浮上、2位は10月に続き専門サービスが入った。3位はホリデー商戦前とあって、小売が10月の減少から増加に転じてランクインしている。輸送・倉庫も、書き入れ時であるだけに堅調。ハリケーン直撃後の反動で10月に急増した娯楽・宿泊は小幅な増加にとどまった。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・教育・健康 5.4万人増>前月は2.4万人増、6ヵ月平均は4.0万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は4.1万人増>前月は3.5万人増、6ヵ月平均は3.2万人増)
・専門サービス 4.6万人増<前月は5.4万人増、6ヵ月平均は4.3万人増
(そのうち、派遣は1.8万人増=前月は1.8万人増、6ヵ月平均は1.0万人増)
・小売 1.9万人増>前月は0.2万人減、6ヵ月平均は0.3万人減

・娯楽・宿泊 1.9万人増<前月は0.2万人減、6ヵ月平均は0.3万人減
(そのうち食品サービスは1.9万人増<前月は8.9万人増)
・輸送・倉庫 1.1万人増>前月は0.8万人増、6ヵ月平均は1.0万人増
・その他サービス 0.9万人増<前月は1.8万人増、6ヵ月平均は0.8万人増

・金融 0.8万人増>前月は0.7万人増、6ヵ月平均は1.2万人増
・政府 0.7万人増>前月は0.3万人減、6ヵ月平均は0.4万人増
・卸売 0.3万人増<前月は0.8万人増、6ヵ月平均は0.6万人増

・公益 ±0万人=前月は±0人、6ヵ月平均は±0人
・情報 0.4万人減>前月は0.8万人減、6ヵ月平均は0.4万人減

財生産業は前月比6.2万人増と、前月の3.4万人増(3.3万人増から上方修正)を上回った。4ヵ月連続で増加している。ハリケーンの復興需要を一因に建設が4ヵ月連続で増加したほか、製造業も4ヵ月連続で増加した。原油価格が約2年ぶりに55ドル台を回復する過程で、鉱業は4ヵ月連続で増加したなか最も強い伸びだった。

(財生産業の内訳)

・製造業 3.1万人増>前月は2.3万人増、6ヵ月平均は1.2万人増
・建設 2.4万人増>前月は1.0万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・鉱業・伐採 0.7万人増(石油・ガス採掘は200人の増加、前月は400人の減少)>前月は0.1万人増、6ヵ月平均は0.5万人増

NFP、ハリケーン復興需要やホリデー商戦に支えられ2ヵ月連続の20万人乗せ。

nfp
(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.2%上昇の26.55ドル(約3,000円)と、市場予想の0.3%を下回った。10月の0.1%減(±0%から下方修正、6年ぶりのマイナス)からは改善している。前年比では2.5%の上昇となり市場予想の2.6%に届かず。10月の2.3%(2.4%から下方修正)は上回ったが、2009年4月以来の力強さを遂げた9月の2.9%以下が続く。

週当たりの平均労働時間は34.5時間と、市場予想並びに前月の34.4時間から延びた。8~10月の34.4時間を経て、6~7月の水準へ戻している。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.5時間と、10月の40.4時間を超え7月の水準に並んだ。

失業率は4.1%と、市場予想及び前月と一致した。10月に続き金融危機後以来で最低だっただけでなく、2000年12月以来の4%割れを視野に入れた。9月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2017年見通しも下回る。マーケットが注目する労働参加率は10月に続き62.7%と、2014年3月の高水準に並んだ9月の63.1%以下に終わった。なお労働参加率のボトムは2015年9〜10月の62.4%で、1977年9月以来の低水準だった。

失業者数は前月比9万人増加し、3ヵ月ぶりにプラスに転じた。雇用者数は5.7万人増と、前月に反しこちらも増加している。失業者が上回ったため、就業率は60.1%となり10月の60.2%から低下、2009年1月以来の高水準を遂げた9月の60.4%が遠のいた。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.1%増の1億2,683万人と、10月の減少分を打ち消した。パートタイムは0.1%減の2,711万人と、2ヵ月連続で減少。増減数では前月に続きフルタイムが16万人減増、パートタイムは12.5万人減だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が増加を続けたほか、平均労働時間が延びたため0.5%上昇し2ヵ月連続でプラスだった。平均時給は10月の下落を経て上昇に転じた結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.7%上昇、3ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-×
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全失業率は8.0%と、2006年12月の低水準に並んだ前月の7.9%から上昇した。不完全失業者は480.1万人と、前月の475.3万人から増加している。ムニューシン米財務長官候補が指名公聴会後に書簡で重視すると明らかにしたU-5すなわち縁辺労働者を含む失業率は2ヵ月連続で5.0%、少なくとも年初来で最低を維持した。

2)長期失業者 採点-○
失業期間の中央値は9.6週と前月の9.9週から短縮し、6月に達成した2008年11月以来の低水準となる6月に並んだ。平均失業期間は25.4週と前月の26.0週から短縮、2009年6月以来で最短だった4月の24.1週に一歩近づいた。27週以上にわたる失業者の割合は前月に続き24.8%、9月の25.5%から改善した水準を保つ。なお、4月は22.6%と2009年1月につけた低水準に並んでいた。

3)賃金 採点-△
今回は前月比0.2%の上昇、6年ぶりに低下した前月から小幅改善にとどまる。前年比も2.5%上昇するにとどまり、2009年4月以来で最高の伸びだった2.9%以下が続く。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.2%上昇の22.24ドルと全従業員と変わらず。前年比は2.5%の上昇となり、こちらも全従業員と並んだ。非管理職・生産労働者の賃金は管理職を合わせた全体に追いつかない状況だったが、今回は伸びが一致した格好だ。なお、民間における生産・非管理職の割合は82.4%を占める。

平均時給、前年比では引き続き生産・非管理職の労働者が管理職を含めた全体に及ばず。

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(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-△
労働参加率は62.7%と、前月に続き2014年3月に遂げた高水準となる9月の63.1%を下回った。金融危機以前の水準である66%台は未だ遠い。軍人を除く労働人口は0.1%増の1億6,053万人と、若干の増加にとどまる。非労働人口は微増の9,540万人と2ヵ月連続で増加に転じた。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのマーク・チャンドラー通貨戦略最高責任者は、結果を受け「平均労働時間と製造業の就労者数の力強い伸びはポジティブなサプライズだった」と振り返る。注目の平均時給については「失望に終わる伸びにとどまった」とコメント。ただし、平均時給の伸びは消費者物価指数を上回る水準を続けるほか、労働参加率など他項目は全体的には「予想範囲内」だったという。その上で、12月12~13日開催のFOMCでの「利上げシナリオを変更するものではない」とまとめた。

――米11月雇用統計・NFPはサービス部門の牽引役である教育・健康、専門サービス以外に、財部門の伸びが好調で全体を押し上げました。財部門、特に今回伸びが顕著だった製造業は、今後さらに雇用を牽引していけるのでしょうか?”カトリーナ“が直撃した2005年は金融危機前の利上げ期であり、製造業は6ヵ月平均で0.2万人減少していました。2012年の”サンディ“のケースでは0.2万人増と、小幅にとどまっていました。米11月ISM製造業景況指数やIHSマークイット製造業PMIはそれぞれ鈍化の兆しをみせるなか、税制改革の下支えなしでは財部門での活発な採用活動を維持できそうにありません。

(カバー写真:North Carolina National Guard/Flickr)

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