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米6月ISM製造業景況指数、鉄鋼・アルミ関税の余波で入荷時間が上振れ

by • July 3, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off1680

Tariff Concerns Disrupt Manufacturing Index In June.

6月のISM製造業景況指数とマークイット製造業PMI・確報値、米5月建設支出をおさらいしていきます。

米6月ISM製造業景況指数は60.2となり、市場予想の58.5を上回った。トランプ政権の鉄鋼・アルミ関税発動し、通商法301条を根拠とした対中関税措が7月6日発動する見通しが強まるなかでも、2004年5月以来の高水準を達成した2月の60.8に迫った。

内訳をみると、入荷時間の上昇が目立ちセンチメントが上昇したとは言い切れない。通常、入荷時間の上昇は需要の強さに原材料の入荷が追いつかない状況を示すが、ISMでは鉄鋼・アルミの供給問題をはじめ、人材不足や輸送難を挙げた。鉄鋼・アルミ関税の発動で、一連の資材入荷が困難になっている可能性を示す。その他の項目では、生産と在庫が小幅に上昇した程度に。新規輸出受注や生産、雇用などは軒並み前月を下回った。仕入れ価格も、前月以下に終わった。詳細は、以下の通り。

・生産 62.3、5ヵ月ぶりの高水準>前月は61.5、6ヵ月平均は61.4
・新規受注 63.5<前月は63.7、6ヵ月平均は63.3
・雇用 56.0<前月は56.3、6ヵ月平均は56.3

・在庫 50.8>前月は50.2と5ヵ月ぶりの分岐点割れに接近、前月は52.9、6ヵ月平均は53.1
・新規輸出受注 56.3>前月は55.6、6ヵ月平均は58.5
・入荷遅延 68.2、2004年以来の高水準>前月は62.0、6ヵ月平均は62.0
・仕入れ価格 76.8<前月は79.5と2011年4月以来の高水準、6ヵ月平均は76.8

ISMのティモシー・フィオーレ会長は、結果を受け「18業種のうち17業種で拡大した」と明かした。前月の16業種から増加した。一方で、1業種が横ばいとなり、4~5月に続き縮小を報告した業種はみられていない。

▽米6月IHSマークイット製造業PMI・確報値、2014年9月以降で2番目の高水準

米6月IHSマークイット製造業PMI確報値は55.4と、市場予想と速報値の54.6を上回った。ただし前月の56.4に届かず、4ヵ月ぶりの低水準。新規受注と生産が7ヵ月ぶりの水準に鈍化したほか、仕入れ価格も4ヵ月ぶりのレベルに低下している。ただしISM製造業景況指数と足並みをそろえ入荷時間が急伸、過去最高を示した。

クリス・ウィリアムソン首席ビジネス・エコノミストは、今回の結果を受け「製造業のセンチメントは4~6月期、過去4年間で最高となった」と評価する。しかし「新規受注が7ヵ月ぶりの水準に低下したほか、約1年ぶりに輸出の売上が低下したように内需が外需に押し下げられ、1年先の楽観見通しも5ヵ月ぶりの低水準に終わった」という。敗因にトランプ政権が発動した「追加関税措置」を挙げ、「仕入れ価格を押し上げ、供給面の遅れを招いた」とし、慎重姿勢を覗かせた。

ISM製造業景況指数の雇用とマークイットPMIは鈍化、雇用統計も倣う?

ism
(作成:My Big Apple NY)

――鉄鋼・アルミ関税は3月23日に発動したとはいえ、欧州連合(EU)やカナダ、メキシコなどへの適用も6月1日から開始したせいか、入荷時間の上昇を招きました。その他の項目が前月以下にとどまったように、追加関税措置の効果が早くも現れつつあるようです。仕入れ価格が今後の需要鈍化を先取りして低下した可能性もあり、ISM製造業景況指数の上昇よりマークイット製造業PMIが実体経済に近い数字と言えそうですね。

▽米5月建設支出、公共が牽引し2ヵ月連続で増加

米5月建設支出は前月比0.4%増の年率1兆3,095億ドルとなり、市場予想の0.5%増を下回った。前月の0.9%増(1.8%増から下方修正)に続き、2ヵ月連続で増加している。

内訳をみると、住宅が0.8%増と前月の0.5%増を含め2ヵ月連続で増加。一方で、非住宅は0.1%増と前月の1.2%増を合わせ、増加基調を保つ。建設支出の前年比は4.5%増と、前月の5.0%増を下回った。

民間は前月比0.3%増と、前月の0.4%増を含め2ヵ月連続で増加した。住宅が0.8%増と前前月の0.5%増を含め2ヵ月連続で増加したが、非住宅は0.3%減と前月の増加をほぼ打ち消した。公共は0.7%増と、前月の2.3%増に続き増加基調を続けた。住宅が1.4%増と3ヵ月ぶりに増加したほか、非住宅も0.6%増と増加の流れを保った。

――米5月建設支出まで一連の経済指標を受け、アトランタ地区連銀は米4~6月期実質GDP成長率予測値を前期比年率3.8%増から4.1%増へ引き上げました。民間のエコノミストの間でも同期GDPに強気の見方が優勢。米経済が鈍化局面に向かうのは、少なくともEUやNAFTA諸国への鉄鋼・アルミ関税発動や7月6日に対中関税措置、中国をはじめとした報復措置の影響が及び始める7月以降でしょう。

(カバー写真:Dennis Jarvis/Flickr)

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