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8月のISMとマークイットの製造業景況指数、明暗くっきり

by • September 5, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off2778

ISM And Markit, Manufacturing Sentiment Goes Different Way.

8月のISM製造業景況指数とマークイット製造業PMI・確報値、米7月建設支出をおさらいしていきます。

米8月ISM製造業景況指数は61.3となり、市場予想の57.6を上回った。前月の56.5も超え、2004年5月以来の高水準を遂げている。トランプ政権の鉄鋼・アルミ関税が3月に発動し6月からはEU、カナダ、メキシコに拡大、さらに通商法301条を根拠とした対中関税措が7月6日発動。さらに自動車関税や対中知財関税として追加で2,000億ドル相当を対象とする公聴会が開催されながら、センチメントが回復した。追加関税の影響で入荷遅延が再び上向いたほか、新規受注も上昇しており、サプライチェーンの混乱以外の明るい要因も今回の上昇を後押しした。

詳細は、以下の通り。

・生産 63.3、7ヵ月ぶりの高水準>前月は58.5、6ヵ月平均は60.6
・新規受注 65.1、7ヵ月ぶりの高水準>前月は60.2、6ヵ月平均は62.6
・雇用 58.5、6ヵ月ぶりの高水準>前月は56.5、6ヵ月平均は56.5

・在庫 55.4、5ヵ月ぶりの高水準>前月は53.3、6ヵ月平均は53.0
・新規輸出受注 55.2、2017年10月以来の低水準<前月は55.3、6ヵ月平均は56.5
・入荷遅延 54.7<前月は68.2、2004年以来の高水準、6ヵ月平均は62.5
・仕入れ価格 72.1、年初来で最低<前月は73.2、6ヵ月平均は76.5

ISMのティモシー・フィオーレ会長は、結果を受け「回答者のコメントはビジネスの拡大継続を表し、需要は力強く、新規受注は1年4ヵ月連続で60を超えている」と評価した。ただし、一連の追加関税措置と今後の発動可能性を受け「企業業績と製造業拠点への影響を含め懸念を寄せている」と指摘。企業は「不確実性をにらみ、ビジネスがどのように変化すべきか対応を積極的に検討している」と付け加えた。今回は「18業種のうち16業種で拡大した」といい、過去2ヵ月間の17業種から減少。縮小を報告したセクターは前回に続き鉄鋼・アルミ関税に直面する一次金属で、そこにカナダ産の相殺関税が影響しているためか木材が加わった。

▽米8月IHSマークイット製造業PMI・確報値、税制改正後の上昇を相殺

米8月IHSマークイット製造業PMI確報値は54.7と、市場予想と速報値の54.5を上回った。前月の55.3を下回り、2017年11月以来の低水準となる。税制改正後の上昇を打ち消した格好だ。生産が11ヵ月ぶりの水準に鈍化したほか、雇用は4ヵ月ぶりの水準に低下。その一方で、見通し指数は3ヵ月ぶりのレベルを回復している。

クリス・ウィリアムソン首席ビジネス・エコノミストは、今回の結果を受け「生産の弱さは輸出が足を引っ張っており、過去2ヵ月間にわたって低下してから、8月はほぼ横ばいにとどまった」と振り返る。ただし、生産の落ち込みは「資材不足が主因で、受注残は上昇しており、機械や工場などの受注動向は過去10年間で最高」とあくまで楽観的だ。仕入れ価格は、これまでの上昇基調から一服してきた。企業は追加関税措置の対策として、生産確保や値上がり前購入を狙った資材を買い込みに動いてきたが、仕入れ価格は低下し始め、物価上昇圧力は後退した感がある。

ISM製造業景況指数が14年ぶりの高水準を遂げた半面、マークイット製造業PMIは税制改正を受けた上昇を打ち消し。

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(作成:My Big Apple NY)

――意外にも、仕入れ価格が足元で低下してきました。予断を許さない状況とはいえ、物価のさらなる上昇圧力を回避できる見通しで、利鞘縮小を憂慮する企業や2019年にかけ減税効果が剥落すぐ消費者にとってもグッドニュース。Fedが利上げ加速に追い込まれるリスクは後退し、トランプ政権にとっても朗報に違いありません。

▽米6月建設支出、民間の非住宅が押し下げ予想以下

米6月建設支出は前月比0.1%増の年率1兆3,154億ドルとなり、市場予想の0.4%増を下回った。前月の0.8%減(1.1%減から上方修正)から、小幅に改善した。建設支出の前年比は5.8%増と、前月の5.9%増を下回ったが、力強い伸びを維持している。

内訳をみると、住宅が0.6%増と前月の1.0%減から転じ3ヵ月ぶりに増加。逆に、非住宅は0.3%減と2ヵ月連続で減少した。

民間は前月比0.1%減と、前月の0.5%減を含め2ヵ月連続で減少した。住宅が0.6%増と3ヵ月ぶりに増加したものの、非住宅が1.0%減と4ヵ月ぶりにマイナスに落ち込み民間を押し下げた。公共は0.7%増と、前月の1.7%減からプラスを回復。住宅が0.3%増、非住宅も0.7%増とそれぞれ前月から増加に転じた。

――米7月建設支出まで一連の経済指標を受け、アトランタ地区連銀は米4~6月期実質GDP成長率予測値を前期比年率4.6%増とし、従来の4.1%増から上方修正しました。仮に今期も4%成長となれば、2014年以来の快挙に。少なくとも、トランプ政権が目指す3%成長は堅い状況で、経済指標が中間選挙前に共和党の援護射撃となるのか注目です。

(カバー写真:Steve Jurvetson/Flickr)

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