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米1月雇用統計・NFPは30万件乗せも、賃金は上げ渋り

by • February 1, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2218

Jobs Smash Estimates With Gain Of Over 30K, But Wage Growth Less Than Expected.

米1月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比30.4万人増となり、市場予想の16.5万人増を上回った。前月の22.2万人増(31.2万人増から下方修正)を超え、11ヵ月ぶりの高い伸びを遂げた。なお、2018年12月の大幅な下方修正は、ベンチマークの改定が一因である。2018年11月分の2.0万人の上方修正(17.6万人増→19.6万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で7万人の下方修正となった。2018年11月〜2019年1月の3ヵ月平均は24.1万人増と、2018年平均の22.3万人増を上回った。

なおトランプ政権が2018年3月23日から鉄鋼・アルミ関税を発動し、同年6月1日からは欧州連合(EU)、カナダ、メキシコも対象に含めた。中国に対しては同年8月23日から事前の340億ドルに160億ドルと合わせた500億ドル相当の追加関税を発動、同年9月24日から2,000億ドルの対中知財関税を実施した。2,000億ドル相当の対中関税措置については、2019年1月から関税率を10%から25%へ引き上げる懸念があったが、同年12月1日の米中首脳会談で90日間の猶予が設けられている。2019年1月30〜31日には米中ハイレベル通商協議で劉鶴副首相がワシントンを訪問、トランプ大統領とも会談し、大豆の500万トンを含め農産品の輸出拡大で合意した。一方で、NAFTA再交渉は同年9月にカナダを含め合意が成立し、欧州とは同年7月の首脳会談にて通商協議入りで合意。日本とも個別で貿易交渉を開始した。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比29.6万人増と前月の20.6万人増(30.1万人増から上方修正)を超え、11ヵ月ぶりの高い伸びを遂げた。民間サービス業も22.4万人増と、前月の15.3万人増(22.7万人増から上方修正)を上回り、3ヵ月ぶりの強い増加幅となる。

NFP、2018年2月以来の30万人乗せ。

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向では、娯楽・宿泊が前月の2位からトップを奪取し、逆に2018年10〜12月まで1位だった教育・健康が2位に転落した。3位は前月に続き、専門サービスとなる。今回、減少したセクターは情報と公益の2業種。前月は情報と小売が減少していた。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・娯楽・宿泊 7.4万人増>前月は5.5万人増、6ヵ月平均は4.0万人増
(そのうち食品サービスは3.7万人増>過去12ヵ月平均3.1万人増)
・教育・健康 5.5万人増<前月は6.7万人増、6ヵ月平均は4.6万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は4.5万人増<前月は5.6万人増、6ヵ月平均は4.5万人増)
・専門サービス 3.0万人増>前月は2.9万人増、6ヵ月平均は4.3万人増
(そのうち、派遣は0.1万人増<前月は0.8万人増、6ヵ月平均は0.9万人増)

・輸送・倉庫 2.7万人増>前月は0.5万人減、6ヵ月平均は1.9万人増
・小売 2.1万人増>前月は1.2万人減、6ヵ月平均は0.2万人増
・金融 1.3万人増>前月は0.4万人増、6ヵ月平均は1.0万人増

・政府 0.8万人増<前月は1.6万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・卸売 0.5万人増<前月は1.1万人増、6ヵ月平均は0.9万人増
・その他サービス 0.4万人増<前月は0.9万人増、6ヵ月平均は0.6万人増

・公益 0.1万人減<前月は横ばい、6ヵ月平均は横ばい
・情報 0.4万人減=前月は0.4万人減、6ヵ月平均は0.2万人減

財生産業は前月比7.2万人増と、前月の5.3万人増(7.4万人増から下方修正)を超え2018年2月以来の高い伸びだった。建設が主導した。また、原油先物が2018年10月初めの75ドル超えから50ドル割れまで急落した後に下げ止まったおかげで、鉱業は5ヵ月ぶりの強い伸びに。製造業は逆に、5ヵ月ぶりの低い伸びにとどまった。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・建設 5.2万人増、2018年2月以来の強い伸び>前月は2.8人増、6ヵ月平均は2.7万人増
・製造業 1.3万人増、5ヵ月ぶりの低い伸び<前月は2.0万人増、6ヵ月平均は1.9万人増
・鉱業・伐採 0.7万人増、5ヵ月ぶりの強い伸び(石油・ガス採掘は0.2万人の増加、4ヵ月連続のプラス)>前月は0.5万人増、6ヵ月平均は0.4万人増

平均時給は前月比0.1%上昇の27.56ドル(約2,980円)となり、市場予想の0.3%を下回った。前年比は市場予想通り3.2%の上昇だったが、2009年4月以来の力強い伸びを遂げた前月の3.3%以下となる。

週当たりの平均労働時間は34.5時間と、前月と変わらず。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は前月の40.6時間から40.7時間へ延び、2006年7月以降で最高に並んだ。

失業率は4.0%と市場予想と前月の3.9%を上回り、7ヵ月ぶりの水準へ上昇した。2018年11月は3.7%と、1969年12月以来で最低をつけていたが、直近2ヵ月で上向きに転じている。2018年12月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2019年見通しを上回った。失業率と歩調を合わせ、労働参加率は63.2%と、市場予想の63.0%並びに前月の63.1%を超え2013年9月以来の水準へ上昇。連邦政府機関の一部閉鎖により、一時帰休を余儀なくされた職員が失業率を押し上げたとみられる。また1月は、労働市場から1.1万人が退場したものの、生産年齢人口が減少したため、労働参加率の上昇を招いた。就業率は60.7%と、2008年12月の高水準に並んだ。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.1%減の1億2,984万人と、5ヵ月連続ぶりに減少した。パートタイムは0.9%減の2,675万人と3ヵ月連続で減少。増減数ではフルタイムが7.6万人減、パートタイムは24.2万人減だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数が前月を大幅に上回ったため、前月比で0.2%上昇し2ヵ月連続でプラスとなった。平均時給も小幅ながら上昇を維持したため、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.3%上昇、12ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-×
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は8.1%と、前月の7.6%を超え、2018年2月以来の水準へ上昇。2001年4月以来の低水準に並んだ2018年8月の7.4%を超える水準を保つ。今回、一時帰休を余儀なくされた連邦政府職員が不完全失業率を押し上げたとみられる。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は514.7万人と、前月の465.7万人から増加した。

2)長期失業者 採点-○
失業期間の中央値は8.9週と、2017年12月以来の水準へ短縮した。平均失業期間は20.5週と、2009年2月以来で最短を記録した。27週以上にわたる失業者の割合は19.3%と、前月2008年8月以来の20%割れを遂げた。

3)賃金 採点-○
今回は前月比0.1%の上昇と、予想外に鈍化。前年比は10〜11月の3.1%を経て3.2%へ加速、2009年4月以来の高水準を達成。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.1%上昇の23.12ドル前年比は3.4%の上昇と、2009年3月以来の強い伸びだった前月以下だったものの、6ヵ月連続で3%超え。前年比では、3ヵ月連続で全従業員の水準を超えた。なお、民間における生産・非管理職の割合は約8割を占める。

平均時給、前年比は全体と生産労働者・非管理職ともに鈍化。

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(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-○
労働参加率は63.2%と、2013年9月以来の水準へ上昇。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口はわずかながら1億6,323万人となり、5ヵ月ぶりに減少。逆に、非労働人口は0.7%減の9,565万人と2ヵ月連続で減少した。

――今回の雇用統計はベンチマーク改定にあたった上、政府機関の閉鎖も重なり、強弱ミックスとなりました。NFPは2010年10月以降、100ヵ月連続の雇用増を果たしたものの、前月分が10万件近くも下方修正されています。NFP自体、財部門の建設が力強い伸びを果たした影響が大きく、持続するかは不透明。政府機関の閉鎖を受けて、失業率と不完全失業率が上昇し、労働参加率も上向いたせいか、賃金は前月比・前年比ともに鈍化しました。全体的に力強さ全開という数字ではなく、1月FOMCでハト派路線へ急旋回したFedは安堵したに違いありません。

米1月雇用統計で最も注目すべきは、労働参加率でしょう。62.2%と2013年9月以来の水準まで改善しましたが、もう一つ歓迎すべきポイントがあります。こちらをご覧下さい。

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(作成:My Big Apple NY)

はい、全ての年齢ではっきりと改善が見て取れます。特に、働き盛りの25~34歳と45~54歳で顕著に上昇していました。

16~24歳:55.5%と、10ヵ月ぶりの高水準
25~34歳:83.0%と、2009年5月以来の高水準
45~54歳:81.5%と、2010年10月以来の高水準
55歳以上:40.3%と、2013年8月以来の高水準

しかも、16~24歳と55歳以上は大きく上向いておらず、若年層や高齢層で労働を余儀なくされている人々が増加傾向にあるわけでもなさそうです。働き盛りの世代で労働参加率が上昇するならば、労働逼迫に伴う賃金圧力は後退する見通しで、FOMCの政策方向性の変化には朗報と言えるでしょう。

(カバー写真:Alan Clark/Flickr)

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