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米6月雇用統計、NFPが大幅改善でパウエル議長の議会証言はどうなる?

by • July 7, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2126

Job Growth Rebounds Strongly With Moderate Wage, Now What?

米6月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比22.4万人増となり、市場予想の16.0万人増を上回った。政府機関の一部閉鎖や悪天候などの影響で大幅鈍化した2月以来の水準へ減速した前月の7.2万人増(7.5万人増から下方修正)を超え、20万人の大台を回復している。4月分の0.8万人の下方修正(22.4万人増→21.6万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で1.1万人の下方修正となった。4~6月の3ヵ月平均は1⑦.1万人増と、2018年平均の22.3万人増を下回った。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比19.1万人増と、市場予想の15.0万人増を上回った。前月の8.3 万人増(9.0万人増から下方修正)から大幅に改善した。民間サービス業も15.4万人増と、前月の7.2万人増(8.2万人増から下方修正)を超えた

NFP、年初から3回目の20万人超え。

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向で、1位は4~5月に2位だった教育・ヘルスケアが入り、2位は4~5月にトップだった専門サービスがダウンした。3位は政府となる。3~5月に3位だった娯楽・宿泊は、圏外に終わった。今回、減少したセクターは1業種で、5ヵ月連続で小売となる。前月は小売のほか、その他サービス、政府が減少していた。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・教育・健康 6.1万人増>前月は2.8万人増、6ヵ月平均は5.3万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は5.1万人増>前月は2.6万人増、6ヵ月平均は3.5万人増)
・専門サービス 5.1万人増>前月は2.4万人増、6ヵ月平均は3.5万人増
(そのうち、派遣は0.4万人増>前月は横ばい、6ヵ月平均は0.4万人減)
・政府 3.3万人増>前月は1.1万人減、6ヵ月平均は1.1万人増

・輸送・倉庫 2.4万人増>前月は0.3万人増、6ヵ月平均は0.9万人増
・その他サービス 1.0万人増>前月は0.4万人増、6ヵ月平均は0.9万人増
・娯楽・宿泊 0.8万人増<前月は1.8万人増、6ヵ月平均は2.7万人増
(そのうち食品サービスは横ばい<過去12ヵ月平均2.3万人増)

・情報 0.2万人増>前月は横ばい、6ヵ月平均は0.3万人減
・金融 0.2万人増=前月は0.2万人増、6ヵ月平均は0.7万人増
・公益 0.1万人増=前月は0.1万人増、6ヵ月平均は0.6万人増

・卸売 横ばい<前月は0.7万人増、6ヵ月平均は0.6万人増
・小売 0.6万人減、5ヵ月連続で減少>前月は0.7万人減、6ヵ月平均は0.8万人減

財生産業は前月比3.7万人増と、前月の1.1万人増(0.8万人増から上方修正)を上回った。建設や製造業が前月を大きく上回る伸びとなり、財生産業を押し上げた半面、鉱業は4ヵ月ぶりに減少した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・建設 2.1万人増>前月は1.1万人増、6ヵ月平均2.7万人増
・製造業 1.7万人増>前月は0.3万人増、6ヵ月平均は1.8万人増
・鉱業・伐採 0.1万人減<前月は0.3万人増(石油・ガス採掘は0.1万人増)、6ヵ月平均は0.1万人増

平均時給は前月比0.2%上昇の27.90ドル(約3,000円)と、市場予想と前月の0.3%を下回った前年比は5月に続き3.1%の上昇と、市場予想の3.2%に届かず。2月につけた2009年4月以来の力強い伸び(3.4%)を下回ったままだが。11ヵ月連続で3%台に乗せた。

週当たりの平均労働時間は前月に続き34.4時間と、市場予想とも一致した。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は4~5月の40.3時間から今回は40.4時間へわずかに延びたが、全体の約7割を占める民間サービスが33.3時間だったため変わらずとなる。なお、財部門は1月の40.7時間を下回った水準が続く。

失業率は3.7%と、市場予想と前月の3.6%を上回った。4~5月まで1969年12月以来で最低だったが、若干上昇。6月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2019年見通しも上回った。労働参加率は4~5月に2018年9月以来の低水準となる62.8%だったものの、今回は62.9%へわずかながら改善し、失業率を押し上げたとみられる。また、事業調査であるNFPと異なり就業者が24.7万人増だったものの、失業者も8.7万人増だった。もっとも、失業率の増加は自発的な離職者が前月比8.5万人だったことが大きく、労働参加率の上昇と合わせ、労働者が景気拡大の継続に自信を深めた可能性を示唆する。就業率は4~5月に続き60.6%と、1~3月に2008年12月の高水準に並んだ60.7%を下回ったままだ。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.4%増の1億3,015万人と、4ヵ月ぶりに増加した。パートタイムは0.7%減の2,681万人と、減少に転じた。増減数ではフルタイムが45.3万人増、パートタイムは17.4万人減だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数の伸びが前月から大改善したため、平均労働時間が横ばいだったものの前月比で0.2%上昇した。平均時給が伸びを続けたため、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.4%上昇、17ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-△
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は7.2%と、2000年12月以来の7%割れを意識した前月の7.1%を上回った。ただし、経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は434.7万人と、前月の435.5万人を下回りわずかに下回り2ヵ月連続で減少した。

2)長期失業者 採点-△
失業期間の中央値は9.6週と前月の9.1週から延び、2017年12月以来の低水準だった1月の8.9週が遠ざかった。平均失業期間は22.2週と、7ヵ月ぶりの高水準だった前月の24.1週から短縮。ただ、1月に2008年7月以来で最短を記録した1月の19.3週を上回ったままだ。27週以上にわたる失業者の割合は23.7%と、前月の22.4%を上回り7ヵ月ぶりの高水準。2008年8月以来の20%割れを遂げた1月の19.3%から遠ざかっている。

3)賃金 採点-△
今回は前月比0.2%の上昇、前年比は3.1%となり前年比は5月と一致した。2009年3月以来の高水準だった2月の3.4%から鈍化したままだ。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.2%上昇の23.43ドル、前年比では3.4%の上昇と、5月に続き約10年ぶりの高い伸びだった2018年12月の3.5%に次ぐ力強さをみせた。全体の平均時給と合わせ、11ヵ月連続で3%を超えた。なお、民間における生産・非管理職の割合は約8割を占める。

平均時給、全体は伸び悩むも生産労働者・非管理職は好調を維持。

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(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-〇
労働参加率は62.9%と、4~5月につけた2018年9月以来の低水準(62.8%)から若干上昇した。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口は前月比0.2%増の1億6,298万人となり、2ヵ月連続で増加した。非労働人口は0.2%減の9,606万人だった。

――6月の雇用統計は、NFPが大幅に改善し労働参加率が小幅に上昇したというグッドニュースをもたらしました。失業率が若干上昇したとはいえ、労働参加率の改善と自発的離職者数の増加が背景にあり、こちらも労働市場の力強さを物語ります。しかし、労働参加率の詳細は、決して芳しい内容とは言えません。労働参加率の上昇は16~24歳が支えた可能性があるためで、季節調整前の数字ながら6月は60.3%と5月の55.5%から大幅に上昇していました。6月と言えば、ちょうど高校生や大学生が卒業して間もない時期ですからね。ちなみに、2018年6月の労働参加率も、16~24歳が上昇(5月は54.6%→6月は59.6%)し、全米も同様の結果(5月は62.8%→6月は62.9%)となりました。また、25~54歳など働き盛りの男性の間で一部を除き3ヵ月連続で低下した点は懸念材料として残ります(以下、全米の男性は季節調整済み、白人は季節調整前の数字)。

・25~54歳 88.7%、2018年9月以来で最低<前月は88.8%、6ヵ月平均は89.2%
・25~54歳(白人) 90.1%、年初来で最低=前月は90.1%、6ヵ月平均は90.4%
・25~34歳 88.1%、2014年5月以来で最低<前月は88.8%、6ヵ月平均は89.1%
・25~34歳(白人) 90.1%、2018年1月以来で最低<前月は90.2%、6ヵ月平均は90.6%

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(出所:My Big Apple NY)

しかし、①過去2ヵ月分のNFPは下方修正、②平均労働時間は前月比横ばい、③平均時給は伸び悩み――と、懸念材料が残ることも事実。強弱拮抗する内容と言え、7月10~11日に予定するパウエルFRB議長の議会証言で、次回7月30~31日開催のFOMCにて利下げを行う可能性を点灯するか、議論の余地を残します

足元の情勢は、著しい景気減速がみられない環境であり、Fedが利下げに踏み切れば1995年7月~96年1月の利下げ(4回)と、1998年9~11月(3回)の利下げと同じく予防的措置となります。では、当時のNFPと失業率はどうだったのか、振り返ってみましょう。

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(作成:My Big Apple NY)

直近のNFPが3ヵ月平均で17.1万人増、失業率で3.7%のところ、1995~96年と1998年の利下げ前は、NFPの増加ペースが今より健全だった実態が浮かび上がります。また、利下げ1年前と利下げ3ヵ月前と比較し、失業率の上昇も確認していません。それでも当時のグリーンスパンFRB議長率いるFOMCは、“予防的”なり下げに踏み切っていました。景気拡大期の記録を更新中のいま、パウエルFRB議長率いるFOMCはどのように判断するのでしょうか。FF先物市場は、引き続き100%の利下げを織り込んでいますが・・。

(カバー写真:Doug Davey/Flickr)

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