Steady Job And Wage Growth Haven’t Push Up Inflation Yet, Fed Has Still Rooms To Rate Cut.
米7月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比16.4万人増となり、市場予想の16.5万人増とほぼ変わらなかった。前月の19.3万人増(22.4万人増から下方修正)には届かず。5月分の1.0万人の下方修正(7.2万人増→6.0万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で4.1万人の下方修正となった。5~7月の3ヵ月平均は14.0万人増と、2018年平均の22.3万人増を下回った。
NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比14.8万人増と、市場予想の16.5万人増を下回った。前月の17.9 万人増(19.1万人増から下方修正)にも届かず。民間サービス業も13.3万人増と、前月の15.0万人増(15.4万人増から下方修正)を下回った。
NFP、労働市場がひっ迫しているにも関わらず堅調なペースで。の増加を維持。
(作成:My Big Apple NY)
サービス部門のセクター別動向で、1位は前月に続き教育・ヘルスケア、2位も前月に続き専門サービスが並んだ。3位は金融となり、前月の政府と入れ替わった。今回、減少したセクターは2業種で、6ヵ月連続で小売が入ったほか、今回は情報が落ち込んだ。詳細は、以下の通り。
(サービスの主な内訳)
・教育・健康 6.6万人増>前月は5.7万人増、6ヵ月平均は5.3万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は5.0万人増>前月は4.5万人増、6ヵ月平均は4.7万人増)
・専門サービス 3.8万人増=前月は3.8万人増、6ヵ月平均は3.8万人増
(そのうち、派遣は横ばい<前月は0.1万人増、6ヵ月平均は0.4万人増)
・金融 1.8万人増>前月は0.3万人増、6ヵ月平均は0.9万人増
・政府 1.6万人増>前月は1.4万人増、6ヵ月平均は0.7万人増
・娯楽・宿泊 1.0万人増>前月は0.7万人増、6ヵ月平均は1.2万人増
(そのうち食品サービスは1.5万人増>前月は0.3万人増、平均1.3万人増)
・その他サービス 0.8万人増<前月は0.1万人減、6ヵ月平均は1.0万人増
・卸売 0.7万人増前月は0.1万人減、6ヵ月平均は0.5万人増
・輸送・倉庫 横ばい<前月は2.1万人増、6ヵ月平均は0.4万人増
・公益 横ばい<前月は0.1万人増、6ヵ月平均は0.4万人増
・情報 0.4万人減>前月は0.7万人減、6ヵ月平均は横ばい
・小売 1.0万人減<1.4万人増、6ヵ月平均は0.1万人増
財生産業は前月比1.5万人増と、前月の2.9万人増(修正値)を下回った。製造業が6ヵ月ぶりの高水準だったものの、鉱業が2ヵ月連続で減少したほか、建設も伸びが鈍化した。詳細は、以下の通り。
(財生産業の内訳)
・製造業 1.6万人増>前月は1.2万人増、6ヵ月平均は0.6万人増
・建設 0.4万人増<前月は1.8万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・鉱業・伐採 0.5万人減<前月は0.1万人減(石油・ガス採掘は0.1万人減)、6ヵ月平均は0.1万人減
平均時給は前月比0.3%上昇の27.98ドル(約3,000円)と、市場予想の0.2%を上回った。0.2%から上方修正された前月と一致した。前年比は3.2%上昇、市場予想と前月の3.2%を上回った。2月につけた2009年4月以来の力強い伸び(3.4%)を下回ったままだが、12ヵ月連続で3%台に乗せた。
週当たりの平均労働時間は前月に続き34.3時間と、市場予想と前月の34.4時間を下回った。ハリケーン・ハービー直撃の影響を受けた2017年9月以来の水準へ短期化している。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.2時間と、前月の40.4時間を下回り全体の足を引っ張ったが、猛暑など天候要因が影響した可能性を残す。なお、財部門は1月の40.7時間を下回った水準が続く。全体の約7割を占める民間サービスは、前月と変わらず33.2時間だった。
失業率は3.7%と、市場予想と前月と一致した。1969年12月以来で最低だった4~5月の3.6%近くを保つ。6月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2019年見通しを2ヵ月連続で上回った。労働参加率は63.0%へ上昇し、前月の62.9%を超え5ヵ月ぶりの高水準だった。事業調査であるNFPと異なり就業者が28.3万人増だったものの、失業者も8.8万人増となり、労働参加率の上昇とともに失業率の低下を抑えた。就業率は60.7%と、1~2月に続き2008年12月の高水準に並んだ。
フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.2%増の1億3,043万人と、2ヵ月連続で増加した。パートタイムは0.2%増の2,686万人と、減少に転じた。増減数ではフルタイムが28.1万人増、パートタイムは5.4万人増だった。
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数の伸びが前月から鈍化しただけでなく、平均労働時間が短縮したため前月比で0.2%低下した。平均時給が上昇し続けた結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.1%上昇、18ヵ月連続でプラスだった。
かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全失業率 採点-〇
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は7.0%と、2000年12月以来の7%割れに迫った。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は398.4万人と、前月の434.7万人を下回った。3ヵ月連続で減少した結果、2006年4月以来の低水準となる。
2)長期失業者 採点-〇
失業期間の中央値は8.9週と前月の9.6週から短期化し、1月に続き2017年12月以来の低水準だった1月の8.9週に並んだ。平均失業期間は19.6週と、7ヵ月ぶりの高水準だった前月の24.1週から短縮。2008年7月以来で最短を記録した。27週以上にわたる失業者の割合は19.2%と、前月の23.7%を下回り2008年8月以来の低水準だった
3)賃金 採点-〇
今回は前月比0.3%の上昇、前年比は3.2%と共に市場予想超え。ただ、前年比は2009年3月以来の高水準だった2月の3.4%鈍化したままだ。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.2%上昇の23.47ドル、前年比では3.3%上昇した。前年比は、約10年ぶりの高い伸びだった2018年12月の3.5%以下が続く。ただし、全体の平均時給と合わせ、12ヵ月連続で3%を超えた。なお、民間における生産・非管理職の割合は約8割を占める。
平均時給、全体は伸び悩むも生産労働者・非管理職は好調を維持。
(作成:My Big Apple NY)
4)労働参加率 採点-〇
労働参加率は63.0%と、5ヵ月ぶりに63%の大台に乗せた。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口は前月比0.2%増の1億6,335万人となり、3ヵ月連続で増加した。非労働人口は0.2%減の9,587万人だった。
――7月の雇用統計は、①NFPが堅調、②全体の労働者の平均時給の前年比上昇率が6月を上回る、③労働参加率が上昇、④就業率が上昇、⑤不完全失業率が改善――など、労働市場の質の面でグッドニュースをもたらしました。特に②の労働参加率は、漸く25~54歳の働き盛りの男性で改善しています。白人男性は前月から低下していたとはいえ、改善の兆しが現れたことに違いはありません(以下、全米の男性は季節調整済み、白人は季節調整前の数字)。
・25~54歳 88.9%>前月は88.7%と2018年9月以来で最低、6ヵ月平均は89.1%
・25~54歳(白人) 90.0%、2018年7月以来の低水準<前月は90.1%、6ヵ月平均は90.3%
・25~34歳 88.5%>前月は88.1%と2014年5月以来で最低<前月は88.8%、6ヵ月平均は88.9%
・25~34歳(白人) 90.0%、2018年1月以来の低水準<前月は90.1%、6ヵ月平均は90.4%
過去2ヵ月分のNFPは下方修正され、平均労働時間が短縮したとはいっても後者は天候要因の影響も考えられ、それほど懸念すべき点でもないでしょう。何より、平均時給の上昇率は好材料で、7月FOMC後の記者会見でパウエルFRB議長もそこは認めつつ、それでもインフレが加速しないとの懸念を寄せていました。労働市場の質が明確に改善した結果とはいえ、インフレが上向かない限り、また対中追加関税措置第4弾の発動など経済見通しに不確実性が高まるなか、Fedに利下げという選択肢は残ります。
(カバー写真:Split the Kipper/Flickr)
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