4713823126_311335d467_z

トランプ大統領の支持率低下より気になる、あの州の雇用鈍化

by • September 12, 2019 • Latest News, NY TipsComments Off3484

Job Growth In These States Are Slowing, That Could Affect Presidential Election.

景気後退懸念が8月を中心に渦巻いた影響か、トランプ大統領の支持率が低下したとのニュースが飛び込んできました。ABC/ワシントン・ポスト紙の世論調査(9月2~5日実施)にて、トランプ氏の支持率は38%と前回7月につけた就任後の最高である44%から急低下(8ヵ月ぶりの低水準)。経済良ければすべて良し、It’s The Economy, Stupidが今も通じるならば、トランプ氏は放置すべき環境ではありません。景気後退懸念を汲み取ったのか、米政権は10月初旬開催予定の米中通商協議に向け、追加関税第3弾の税率引き上げ(25%→30%)への引き上げを10月1日から15日への先送りを発表。中国が10月1日に建国70周年記念を控え、米中間の対立激化の回避を通じ金融市場の安定を狙い、中国側が11日にガン治療薬などの錠剤をはじめ16品目を関税対象外とした決定が、助け舟となったに違いありません。

今回の米中の決定から、経済と金融市場の安定を目指す両政権の思惑が一致したように見受けられます。米中通商協議の開催は、10月15日以前となるのでしょう。個人的には、追加関税第4弾の税率15%→10%へ引き下げや、第4弾のパート2(ノート型PC、スマートフォン、玩具など555品目、約1,600億ドル相当)の延期、中国による税率引き下げなど、いずれかの手段でのウルトラC妥結を演出するのではないかとにらんでいます。根本は変わってないにしても、最悪の事態を回避したとして一応は金融市場が評価しそうですし。年末ラリーと年末商戦を支える上で、2018年11月末の米中首脳会談で醸し出した融和ムード再演につなげてくれればよいのですが・・・楽観的過ぎですかね。

支持率に視点を移すと、政治情報サイトであるリアルクリアポリティクスの各世論調査結果・集計値に基づけば、トランプ大統領の支持率は下振れしたというより、当選直後の高水準である45%台から下離れした程度です。トランプ氏にとって就任以降で最低支持率は2017年12月13日に記録した37.0%で、1年目の大統領としても最悪に。2017年3月のイスラム教国出身者の入国禁止令や同年9月発表の新規制のほか、同年8月の白人至上主義者の集会後の対応、同年9月のメキシコ国境間の壁建設予算をめぐる協議難航と政府機関の閉鎖懸念などが問題視されたと考えられます。

pe
(作成:My Big Apple NY)

トランプ大統領といえば、各民主党候補と比較して支持率が低い点も問題視されていますよね。キニピアック大学の世論調査では、民主党候補の1位をひた走るバイデン前副大統領をはじめ、エリザベス・ウォーレン上院議員、バーニー・サンダース上院議員はもちろん、カマラ・ハリス上院議員やインディアナ州サウスベンドのピート・ブティジェッジ市長にも後塵を拝しています。保守系のフォックス・ニュースIBD/TIPPの結果ですら、ブティジェッジ候補以外の4人に及びませんでした

米景気後退入りが取り沙汰される陰で、接戦州にも不穏な影がちらついています。2012年の米大統領選でオバマ氏を選出しながら、2016年にトランプ氏に鞍替えした6州でも、支持率が低下しつつあるのです。オンライン調査会社シビックスによると、トランプ大統領の支持率が6州のうち4州(アイオワ、ミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシン)で50%以下でした。2016年の米大統領選では6州のうち3州でクリントン候補が優勢だったのですが、1州増えてしまった格好です。

6州のうち、4州でトランプ氏の支持率が50%割れ(2016年の大統領選での平均支持率はミシガン州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州でクリントン候補が平均3.9pt上回った)。

pe2
pe3
(作成:My Big Apple NY)

もうひとつ、支持率より重要な問題は・・・雇用です。ペンシルベニア州とウィスコンシン州の製造業の雇用が、年初来で減少しているのですよ。この2州を仮に落としたとしても、2016年で勝利した州を抑えれば選挙人投票数は276人と分岐点の270人を超えますが、製造用の雇用減速が他の州に広がらないとも限りません。

pe5
(作成:My Big Apple NY)

非農業部門就労者数でも、2016年と比較して雇用の伸び鈍化が確認できます。

pe4
(作成:My Big Apple NY)

景気拡大11年目を迎え労働市場のひっ迫が進んだため、雇用の増加ペースが緩んだと考えられます。しかし、対中追加課税措置の影響で設備投資が鈍化し、ベージュブックでは設備投資の先送りやサプライチェーンの移転が報告され、米8月ISM製造業景況指数が3年ぶりに分岐点を割り込めば、ラストベルトの雇用減速は反トランプ派の攻撃材料となりかねません。2020年の米大統領選を占う上で、労働市場の変化にも留意しておくべきでしょう。

(カバー写真:Doug Kerr/Flickr)

Comments

comments

Pin It

Related Posts

Comments are closed.