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米9月ADP全国雇用者数は予想以下、採用予定数は年末商戦が追い風

by • October 4, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2253

Private Sector Employment Disappoints Market, But Hires Increase Before Holiday Season.

9月のADP全国雇用者数、チャレンジャー人員削減予定をおさらいしていきます。

米9月ADP全国雇用者数は前月比13.5万人増となり、市場予想の14万人増を下回った。前月の15.7万人増(19.5万人増から下方修正)にも届かず、3ヵ月ぶりの低水準となる。サービス部門と財部門ともに、鈍化を示した。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。

ADP全国雇用者数、3ヵ月ぶりの低水準。

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(作成:My Big Apple NY)

セクター別では、サービス部門が12.7万人増と前月の14.6万人増(修正値)を下回った。内訳をみると、貿易・輸送(前月2.3万人増→2.1万人増)や情報(同0.8万人減→0.5万人増)が前月を上回った程度で、専門サービス(同2.5万人増→2.0万人増)や教育・健康(同5.1万人増→4.2万人増)など、労働市場でシェアの大きい業種で鈍化した。そのほか娯楽(3.6万人増→1.8万人増)や金融(同0.9万人増→0.8万人増)も、前月値に届かなかった。

財部門(製造業、建設、鉱業)は0.8万人増と前月の1.0万人増(修正値)を下回ったが、2ヵ月連続で増加した。内訳をみると、原油先物が50ドル台で推移するなか、鉱業(前月は0.4万人減→0.3万人減)と少なくとも8ヵ月連続で減少。建設(同1.1万人増→0.9万人増)と製造業(0.3万人増→0.2万人増)は、それぞれ前月を下回った。

ADPとともに統計を担当するムーディーズ・アナリティクスのマーク・ザンディ主席エコノミストは、結果を受け「企業は雇用に慎重となり、中小企業は特にその傾向が著しい」と指摘。企業が採用活動に消極的となれば「失業率の上昇につながる」と、楽観寄りな姿勢を後退させた。

▽米9月チャレンジャー人員削減予定数は前月比で減少、採用数は大幅増

米9月チャレンジャー人員削減予定数は、前年同月比24.8%増の41,577人と2ヵ月連続で増加した。前月比では22.3%減と減少に反転。年初来の人員削減予定数は前年比27.9%増の464,869人と、2015年以来の高水準となる。

発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのアドリュー・チャレンジャー副社長は、結果を受け「企業は来年に向け大規模な採用を決定できないでいるが、消費者動向、政府による規制、さらに市場環境を注視しているのだろう」と振り返った。自動車メーカーのGMの労働組合がストライキに入って約3週間が経過しつつあるなか、「同セクターの人員削減は続く見通し」だという。

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(作成:My Big Apple NY)

人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。前月は1位がテクノロジー、2位が政府、3位がヘルスケア、4位が食品、5位がサービスだった。

1位 小売 8,132人(全体の19.6%)
2位 資本財 5,067人(全体の12.2%)
3位 自動車 4,912人(全体の11.8%)
4位 サービス 3,285人(全体の7.9%)
5位 エネルギー 2,972人(全体の7.2%)

州別動向は、年初来で以下の通り。前月と順位は変わらず。GMのストライキを受けて、2ヵ月連続でミシガン州がイリノイ州を押しのけて5位を保った。

1位 カリフォルニア州 71,604人(全体の15.4%)
2位 ニューヨーク州 50,483人(全体の10.9%)
3位 マサチューセッツ州 34,777人(全体の7.5%)
4位 テキサス州 27,949人(全体の6.0%)
5位 ミシガン州 27,510人(全体の5.9%)

リストラ実施の理由、年初来のランキングは以下の通りで、1位に「閉鎖」が入りこれまでの「再編」が2位に転落した。前月の1位は再編、2位は閉鎖、3位はコスト削減、4位は破産、5位は契約切れだった。8月は「貿易上の問題」が10,488人に及んだが、9月は19人にとどまった。年初来では、引き続き10 位となる。なお、「関税」は年初来で前月の15位から17位へ転落し2,458人だった。

1位 閉鎖 101,147人(全体の21.8%)
2位 再編 101,138人(全体の21.8%)
3位 理由なし 57,931人(全体の12.5%)
4位 破産 51,002人(全体の11.0%)
5位 契約更新できず 43,337人(全体の9.3%)

採用予定数は、前年同月比22.9%減の459,689人だった。ただし、年末商戦の臨時雇用に支えられ、前月比では16倍増に膨らんだ。年初来では前年同期比2.5倍増の971,540人だった。セクター別では、以下の通り。

1位 小売 9,150人(全体の36.7%)
2位 建設 5,500人(全体の22.1%)
3位 サービス 2,900人(全体の11.6%)
4位 娯楽 1,840人(全体の7.4%)
5位 ヘルスケア 1,500人(全体の6.1%)

年末商戦の臨時雇用、小売業別では以下の通り。オンライン小売のシェアが高まるなか、フェデックスは前年と並び過去8年間で最大の規模を維持したが、UPSは前年以下となった。その他、中低所得者層向け百貨店ターゲットは、前年を上回り2012年で最多を記録した。

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(作成:My Big Apple NY)

――人員削減予定数が増加する陰で、消費者の嗜好変化やテクノロジーの発展などを受けた人材不足を補填するため、採用予定数も引き続き増加しています。また年末にかけ、臨時雇用も期待できます。米9月ADP全国雇用者数は鈍化したように9月初めにハリケーン“ドリアン”がフロリダ州から東海岸を北上した影響や米9月ISM非製造業景況指数での雇用の下振れが気掛かりながら、労働市場は拡大基調を維持しそうな雲行きです。

労働市場がひっ迫した場合に雇用が勢いを失うのは、想定の範囲内でもあります。サンフランシスコ地区連銀は健全な雇用増加ペースは5万~11万人と試算、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの場合はイエレン氏より楽観的な数字を弾き出しており、労働参加率の改善が進めば、年末までは何とか2桁増を確保できるのではないでしょうか。

(カバー写真:Fairfax County/Flickr)

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