Job Openings, Hires And Job Leavers All Decline In August.
米労働省が発表した米8月雇用動態調査(JOLTS)で求人数は705.1万人と、市場予想の725.0万人を下回った。前月の717.4万人(721.7万人から下方修正)を1.7%下回り、3ヵ月連続で減少。過去最高だった2018年11月の762.6万人以下が続く。ただし、求人数自体は18ヵ月連続で失業者数を上回った。
採用数は前月比3.3%減の577.9万人となった。過去最高を更新した4月(599.1万人)を4ヵ月続けて下回った。なお、米8月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は底堅いペースで増加していた。
離職者数は563.8万人と、統計開始以来で2番目の高水準となった前月を3.0%下回った。過去4ヵ月間で3回目の減少となる。定年や自己都合による自発的離職者は、過去最高を更新した前月から3.9%減(過去4ヵ月間で3回目の減少)の352.6万人となった。解雇者数も178.7万人、2018年11月以来の高水準だった前月を0.1%下回った。それぞれ、過去4ヵ月間で3回目の減少となる。
求人率は前月の4.5%を下回り4.4%と、2018年3月以来の水準へ低下した。過去最高に並んだ1月の4.8%以下が続く。民間が6~7月の4.8%から4.7%へ低下。建設と小売が上昇した程度で、製造業のほか輸送・倉庫、娯楽・宿泊などが低下した。政府は前月に続き3.1%だった。
採用率は前月の3.9%から3.8%へ低下した。民間が前月の4.4%から4.2%へ低下している。セクター別では鉱業、製造業のほか、小売、輸送・倉庫、専門サービス、教育・健康など幅広く下振れした。政府は逆に国勢調査の臨時雇用を反映し、前月の1.6%から1.7%へ上昇した。
求人数、採用数、離職者数そろって減少、労働市場の拡大トレンドに変調の兆し。
自発的および引退、解雇などを含めた離職率は3.7%と前月の3.8%から低下した。民間が前月の4.2%を下回り4.1%。セクター別では製造業のほか、教育・健康、娯楽・宿泊、卸売が弱い。政府は4ヵ月連続で1.5%だった。自発的離職率は2.3%、2001年4月以来の高水準から一歩後退した。解雇率は前月と同じく1.2%、2000年12月に統計が開始してから最低となる2018年3月の1.0%が遠のいた。
自発的離職者数と解雇者数も減少、離職者数は過去4ヵ月間で3回目の減少に。
――以上の結果を踏まえ、今となっては懐かしいイエレン・ダッシュボードをおさらいしてみましょう。達成項目は9項目中3項目。未達項目は2月の大幅鈍化が響くNFPのほか、長期失業者の割合、労働参加率でした。ただ非農業部門就労者数は労働市場逼迫に伴い、鈍化する傾向が強まります。以下は詳細で、()内の最悪時点とは、金融危機以降での最も弱い数字となります。
1)求人率—○
2009年7月(最悪時点) 1.6%
2004-07年平均 3.0%
現時点 4.4%
2)解雇率—○
2009年4月(最悪時点)2.0%
2004-07年平均 1.4%
現時点 1.2%
3)自発的離職率 ○
2010年2月(最悪時点) 1.3%
2004-07年平均 2.3%
現時点 2.3%
4)採用率—○
2009年6月(最悪時点) 2.8%
2004-07年平均 3.8%
現時時点 3.8%
5)非農業部門就労者数—×
2009年3月までの3ヵ月平均(最悪時点) 82.6万人減
2004-07年の3ヵ月平均 22.4万人増
現時点の3ヵ月平均 15.7万人増
6)失業率—○
2009年10月(最悪時点) 10%
2004-07年平均 5.0%
現時点 3.5%
7)不完全失業率—○
2010年4月(最悪時点) 17.2%
2004-07年平均 8.8%
現時点 6.9%
8)長期失業者の割合—×
2010年4月(最悪時点) 45.3%
2004-07年平均 19.1%
現時点 22.7%
9)労働参加率—×
2015年9月(最悪時点) 62.3%
2004-07年平均 66.1%
現時点 63.2%
有効求人倍率は求人数と採用数が減少するなかで、平均時給の伸びの割に低下。
米8月雇用動態調査は求人数に始まり採用数、自発的な離職者数が減少し、労働市場の拡大ペース鈍化を示唆しています。チャレンジャー人員削減予定数が年初来も、年初来の9ヵ月間で2015年以来の高水準でした。直近の人員削減ではHPが従業員の16%相当(7,000~9,000人)、新規株式公開(IPO)の延期を決定したウィワークも従業員の25%相当(1,000~3,000人)など発表しています。ただ、10年に一度の国勢調査のほか、年末商戦に向けた臨時雇用が労働市場を支える見通し。米中貿易協議が決裂しなければ、求人数が採用数を上回る事情もあり、少なくとも年末までは大幅な減速は回避しそうです。
(カバー写真:carmichaellibrary/Flickr)
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