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9月対米証券投資、米国債を買い越しし続けたあの国が流出

by • November 20, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2290

This Country Reduces Its U.S. Treasury Holdings For The First Time In 5 Months.

9月対米証券投資は、376億ドルの買い越しだった。前月の419億ドルの買い越しから転じ、5ヵ月ぶりに流出している。海外の資金動向をみると、民間が541億ドル買い越し、前月の3億ドルを含め6ヵ月連続で流入した。一方で、海外中銀を含む公的機関は387億ドル売り越し、少なくとも8ヵ月ぶりに流入となった6月以外で続く縮小トレンドにある。9月は、民間が米国債、政府機関債、社債、株式すべて買い越した一方で、公的機関は引き続き米国債で大規模な資金流出を記録した。

海外投資家の米国債投資は343億ドルの売り越しと、前月の305億ドルの売り越しに続き2ヵ月連続で流出した。米国債の内訳をみると、民間が164億ドル買い越し、前月の185億ドルと合わせ4ヵ月連続で流入した。一方で、海外中銀を含む公的機関は507億ドルの売り越しと、流出トレンドを保った。なお、米国人の海外証券投資は340億ドルの買い越しとなった。

9月の金融市場は、初旬に米中貿易協議が10月に開催されると報道された上、中国が追加関税対象の品目を一部除外すると発表、トランプ大統領がこれを好感する見解を表明したこともあり、リスク選好度が回復した。サウジアラビアの石油施設がドローン攻撃に遭ったものの、Fedの年内2度目の利下げも市場の支援材料に。ダウは一時、7月につけた最高値に迫った。米10年債利回りは8月の流れを受け継ぎ初旬は1.5%を割り込んだが、半ばには一時1.8台%へ切り返した。

国別での米国債保有高トップ5動向は、2018年8月~19年7月と同じ顔触れとなった。ただし、1位は4ヵ月連続で日本となる。日本は6月対米証券投資で、2017年5月以来初めて中国を抜き1位の座を取り戻した。

2位以下の順位は変わらず。英国が前月に続き3位、ブラジルが4位に転落したままとなる。アイルランドは税制改革法案が成立直後の2018年前半こそ3位だったが、2018年8月にはブラジルに抜かれ4位へ、19年1月には英国に抜かれ5位となった。なおアイルランドは租税回避地として知られ、米国のIT企業や製薬企業などが拠点を置き、海外留保利益を米国債として保有してきたが、レパトリ減税が税制改革法案に盛り込まれ存在感が低下しつつある。

1位 日本 1兆1,458億ドル(前月は2015年9月以来の高水準)、289億ドルの売り越し、5ヵ月ぶりに流出
2位 中国 1兆1,024億ドル(2017年4月以来の低水準)、11億ドルの売り越し、過去7ヵ間で6回目の流出
3位 英国 3,462億ドル(前月は2010年6月以来の高水準)、37億ドルの売り越し、流出に反転
4位 ブラジル 3,012億ドル(2018年7月以来の低水準)、103億ドル売り越し、過去6ヵ月間で4回目の流出
5位 アイルランド 2,741億ドル(6ヵ月ぶりの高水準)、16億ドルの買い越し、2ヵ月連続で流入

トップ5の米国債保有高の推移。

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(作成:My Big Apple NY)

米国債保有高が300億ドル以上の主要国のうち、買い越しトップ5ヵ国は以下の通り。このうち、前月4位だったルクセンブルクが1位に浮上、前月2位だったケイマン諸島もランクインし、4位だった。アイルランドは前月に続き5位。一方で、2位はイスラエル、3位は台湾が入った。

1位 ルクセンブルク 81億ドル増の2,525億ドル(2ヵ月連続で過去最大)
2位 イスラエル 30億ドル増の460億ドル(過去最大)
3位 台湾 30億ドル増の1,573億ドル(2010年12月以来の最低だった前月か
切り返し)
4位 ケイマン諸島 24億ドル増の2,387億ドル(2017年11月以来の高水準)
5位 アイルランド 16億ドル増の2,741億ドル(6ヵ月ぶりの高水準)

売り越しトップ5ヵ国は、以下の通り。今回、売り越しトップ1位は5ヵ月ぶりの売り越しとなった日本で、続いでUAEが入ったほか、ブラジル、バミューダ、そして前月買い越しだった英国が入った。

1位 日本 289億ドル減の1兆1,458億ドル(前月は2015年9月以来の高水準)
2位 UAE 121億ドル減の373億ドル(2013年10月いらいの低水準)
3位 ブラジル 103億ドル減の3,012億ドル(2018年7月以来の低水準)
4位 バミューダ 99億ドル減の691億ドル(高止まり)
5位 英国 37億ドル減の441億ドル(高止まり)

――9月に米中貿易摩擦の改善に進展がみられるなか、中国は売り越し規模を縮小してきました。もっとも、中国の資金フローと関係が深いとされるルクセンブルクは前月に続き過去最大を更新英国の他、民主化デモで揺れる香港も流出に転じたとはいえ、保有高は高止まりを続けています。香中国が民間を含めて売り越し優勢かは、定かではありません。

リスク・オン相場が回復するなか、9月に米財務省が公表する主要保有国リスト(米国債保有高300億ドル以上)入りした国は前月に続き35ヵ国でした(3月と4月に32ヵ国→5月と6月に33ヵ国→7月は34ヵ国→8月は35ヵ国)。ただ、原油価格が50ドル台で伸び悩むなか、UAEやイラクなど産油国のランクダウンが目立ちます(UAEは前月24位→29位、イラクは前月32位→33位)。サウジアラビアは米国債保有高で12位を維持したとはいえ、こちらも8月から23億ドル減の1,815億ドルと流出に転じていました。今後、原油価格が下振れすれば、産油国の米国債取得ペースが鈍化してもおかしくありません。

(カバー写真:dog97209/Flickr)

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