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米11月雇用統計・NFPは大幅増、冬将軍に労働市場の力強さを誇示

by • December 6, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2009

Blowout Jobs Report Reconfirms Labor Market Strength,  Sends Stock Market Higher.

米11月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比26.6万人増となり、市場予想の18.3万人増を上回った。前月の15.6万人増(12.8万人増から上方修正)も超え、1月以来の高水準。11月は北東部で第2週に気温が氷点下へ落ち込み、感謝祭の直前・直後に豪雪など悪天候に見舞われるなど一足早く冬将軍が大暴れしたものの、一段の労働市場ひっ迫を示す結果となった。9月分の1.3万人の上方修正(18.0万人増→19.3万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で4.1万人の上方修正となった。8~10月の3ヵ月平均は20.5万人増と、2018年平均の22.3万人増を下回ったとはいえ、20万人の大台へ切り返した。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比25.4万人増と、市場予想の17.9万人増を上回った。前月の16.3万人増(13.1万人増から上方修正)を軽く超えていった。民間サービス業は20.6万人増と、労働市場のひっ迫を受け前月の18.8万人増(15.7万人増から上方修正)を上回った。それぞれ、ヘッドラインと同じく1月以来の高水準となる。

NFP、まさかの20万人超えで1月以来の高水準。失業率も1969年以降で最低。

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向で、1位は教育・ヘルスケア(前月2位)、2位は年末商戦に突入するなか娯楽・宿泊(前月1位)、3位に専門サービス(前月3位)が入った。意外な力強さをみせたのが、政府のうちの州/地方政府で1.2万人増に。堅調な景気により所得税や法人税などの歳入が安定し、雇用増につながったようだ。減少したセクターは卸売の1業種のみで、前月の4業種(公益、情報、その他サービス、政府)から減少した。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・教育・健康 7.4万人増>前月は3.0万人増、6ヵ月平均は5.8万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は6.0万人増>前月は3.3万人増、6ヵ月平均は4.7万人増)
・娯楽・宿泊 4.5万人増<前月は7.0万人増、6ヵ月平均は3.5万人増
(そのうち食品サービスは2.5万人増<前月は4.9万人増、6ヵ月平均は2.5万人増)
・専門サービス 3.8万人増<前月は4.8万人増、6ヵ月平均は3.8万人増
(そのうち、派遣は0.5万人増>前月は0.4万人増、6ヵ月平均は0.3万人増)

・輸送/倉庫 1.6万人増>前月は0.6万人増、6ヵ月平均は0.7万人増
・情報 1.3万人増>前月は0.6万人減、6ヵ月平均は0.3万人増
・金融 1.3万人増<前月は1.6万人増、6ヵ月平均は1.2万人増

・政府 1.2万人増>前月は0.7万人減、6ヵ月平均は2.2万人増
・その他サービス 0.9万人増>前月は0.1万人減、6ヵ月平均は0.5万人増
・小売 0.2万人増<前月は2.2万人増、6ヵ月平均は0.3万人増
・公益 0.1万人増>前月は0.2万人減、6ヵ月平均は横ばい

・卸売 0.4万人減、5ヵ月ぶりに減少<前月は1.0万人増、6ヵ月平均は0.3万人増

財生産業は前月比4.8万人増と、前月の2.5万人減(修正値)から増加に転じたGMのストライキ収束により自動車が4.1万人増加した結果、製造業が前月分の減少を打ち消した。建設は前月以下の伸びながら、4ヵ月連続で増加した。一方で、鉱業は3ヵ月ぶりに減少した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・製造業 5.4万人増>前月は4.3万人減、6ヵ月平均は0.5万人増
・建設 0.1万人増<前月は1.4万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・鉱業・伐採 0.7万人減<前月は0.4万人増(石油・ガス採掘は800人減)、6ヵ月平均は0.3万人減

平均時給は前月比0.2%上昇の28.22ドル(約3,040円)と、市場予想の0.3%を下回った。もっとも、前年比は3.1%上昇、上方修正された前月(3.0%→3.2%)に届かなかったものの、市場予想の3.0%を上回った。これで、16ヵ月連続で3%台の伸びとなる。ただ、2月につけた2009年4月以来の力強い伸び(3.4%)に及んでいない。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給のセクター別では、小売や娯楽・宿泊、鉱業などに加え、年末商戦で需要が高まる輸送/倉庫、卸売、情報、専門サービスなどが生産労働者・非管理職の平均時給の伸びである3.7%を上回った。

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(作成:My Big Apple NY)

週当たりの平均労働時間は34.4時間と、市場予想と8~10月と一致した。なお7月は、ハリケーン・ハービー直撃の影響を受けた2017年9月以来の水準へ短期化していた。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間はGMストライキが収束したものの40.2時間と、前月と変わらず9月の40.5時間を下回った。なお、財部門は1月の40.7時間を下回った水準が続く。全体の約7割を占める民間サービスは、6〜10月に続き33.2時間だった。

失業率は3.5%と市場予想と前月の3.6%を下回り、再び1969年12月以来の最低に並んだ。9月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2019年見通しより、力強い労働市場を示した。労働参加率は63.2%と、市場予想並びに前月の63.3%を下回ったが、2013年8月以来の高水準近くを保つ。就業者が8.3万人増と2桁増に届かなかった一方で、失業者は4.4万人減となったため、労働参加率の低下も重なって失業率は低下した。就業率は9~10月に続き61.0%と、2008年12月の水準を維持した。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比で微増の1億3,156万人と、6ヵ月連続で増加した。パートタイムは0.1%減の2,699万人と、2ヵ月連続で減少した。増減数ではフルタイムが1.7万人増、パートタイムは2.9万人減だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数の伸びが前月から加速したものの、平均労働時間が横ばいだったため前月比で0.2%の小幅な上昇にとどまった。平均時給が上昇し続けた結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.6%上昇、22ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-〇
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は6.9%と前月の7.0%を経て、9月に続き2000年12月以来の7%割れを果たした。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は前月比2.6%減の432万人と、3ヵ月ぶりに減少した。ただ、2006年4月以来の低水準だった7月の398.4万人を上回った水準を保つ。

2)長期失業者 採点-〇
失業期間の中央値は9.4週と前月の9.3週を超え、2017年12月以来の低水準だった1月並びに7~8月の8.9週から延びたままだ。ただし、平均失業期間は20.2週と前月の21.8週を下回り、2008年7月以来で最短を記録した7月の19.6週に近づいた。27週以上にわたる失業者の割合は20.8%と前月の21.5%を下回り、2008年8月以来の低水準だった7月の19.2%を再び視野に入れた。

3)賃金 採点-〇
今回は前月比0.2%上昇、前年比は3.1%と共に堅調だった。前年比は16ヵ月連続で3%の伸びを達成。ただし、2009年3月以来の高水準だった2月の3.4%を下回った水準を保つ。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.3%上昇の23.83ドルと、2017年11月から続く増加トレンドを維持。前年比では9~10月の3.5%を超え、3.7%と2008年12月以来の力強い伸びを達成した前月の3.8%に迫った。生産労働者・非管理職も16ヵ月連続で3%台の伸びを遂げた。なお、民間における生産・非管理職の割合は約8割を占める。

4)労働参加率 採点-〇
労働参加率は2013年8月以来の高水準を達成した9~10月の63.3%から63.2%へ低下した。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口は前月比で微増の1億6,404万人となり、6ヵ月連続で増加した。非労働人口は0.1%増の9,562万人と小幅ながら増加に転じた。

――11月の雇用統計は、GMのストライキ収束が奏功し自動車が押し上げ製造業が力強く増加しただけでなく、教育・健康や娯楽・宿泊が好調で、トランプ大統領が「blowout」と大喜びする結果となりました。

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(出所:Donald J. Trump/Twitter)

さらに、①過去2ヵ月分のNFPが上方修正、②平均時給の過去分が上方修正され、16ヵ月連続で前年比3%台の伸びを達成、③労働参加率が若干低下しつつ失業率が約50年ぶり低水準、④就業率は2008年12月以来の高水準を堅持――など、目を見張る内容でした。景気拡大が11年目を迎える経済とは思えないほどの力強さです。

労働参加率が2013年8月以来の水準近くを維持するなか、働き盛り世代の男性では全て上昇しました。以下、全米の男性は季節調整済み、白人は季節調整前の数字となります。

・25~54歳 89.3%、2018年4月以来の高水準を維持>前月は89.1%、6ヵ月平均は89.0%
・25~54歳(白人) 90.3%>前月は90.2%、6ヵ月平均は90.2%
・25~34歳 89.8%、8ヵ月ぶりの高水準>前月は89.4%、6ヵ月平均は88.8%
・25~34歳(白人) 90.9%、7ヵ月ぶりの高水準>前月は90.4%、6ヵ月平均は90.3%

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(作成:My Big Apple NY)

働き盛りの男性で労働参加率が上昇した通り、労働参加率の低下は女性が牽引していました。16歳以上は57.5%と前月の57.8%から低下。また、20歳以上も59.0%と、前月の59.2%を下回っています。

ダウはNY時間午前11時半時点で266ドル高(約1%高)を遂げ、米10年債利回りも1.835%と小幅に上昇しました・・・が、今後の問題は利下げ観測の後退ではないでしょうか。もちろん、良好な米経済はグッドニュースに違いありません。しかし、12月3日時点で年末までの利下げ期待はかなり強く、1回以上の利下げ織り込み度は73.3%に及びました。可能性は低いながら、仮に利上げ観測が台頭すればリスク資産の急落が懸念されます。

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(作成:My Big Apple NY)

そこに追い打ちをかけるように米中貿易協議で悪材料が飛び出せば、一旦調整に入ってもおかしくありません。まあ、金融市場動向をにらむFRBが口先介入するのでしょうけどね。

(カバー写真:Phil Roeder/Flickr)

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