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米2月雇用統計、労働市場の力強さを証明も今後は新型コロナで減速か

by • March 8, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off1741

The U.S Job Market Is Strong, But Coronvirus Could Change That.

米2月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比27.3万人増となり、市場予想の16.5万人増を上回った。前月も27.3万人増と22.5万人増から上方修正され、労働市場がひっ迫し景気拡大が12年目を迎えるなかで、2ヵ月連続で大幅増を果たした。2ヵ月連続での好結果は、米大統領選前でありBREXITに揺れながら好調な結果を叩き出した2016年6~7月以来となる。米中貿易協議・第1段階の合意に両政府が署名したため、企業は採用を進めたためか、労働人口の伸びを吸収するために必要とされる10万人増をはるかに上回るペースをたどった。2019年12月分の3.7万人の上方修正(14.7万人増→18.4万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で8.5万人の上方修正となった。11~1月の3ヵ月平均は24.3万人増と、2ヵ月連続で2019年平均の17.5万人増を上回った。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比22.8万人増と、市場予想の16.0万人増を上回った。前月の22.2万人増(20.6万人増から上方修正)を超え、4ヵ月ぶりの水準へ増加。民間サービス業は16.7万人増となり、前月の19.5万人増(14.7万人増から上方修正)に届かなかった。

NFPは2ヵ月連続で27.3万人増の快挙、失業率は再び1969年12月以降で最低。

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向で、1位は前月に続き教育・健康、2位は娯楽・宿泊(前月は3位)、3位は政府(前月は2位)となった。トップ3常連の専門サービスは、前月に続き4位にとどまった。減少したセクターは小売が2ヵ月連続で入ったほか、輸送・倉庫、卸売となる。輸送・倉庫は、ボーイング737MAX生産停止が影響した可能性がある。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・教育・健康 5.4万人増<前月は7.2万人増、6ヵ月平均は5.5万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は5.7万人増>前月は4.3万人増、6ヵ月平均は4.5万人増)
・娯楽・宿泊 5.1万人増>前月は3.8万人増、6ヵ月平均は5.1万人増
(そのうち食品サービスは5.3万人増>前月は3.2万人増、6ヵ月平均は3.6万人増)
・政府 4.5万人増<前月は5.1万人増、6ヵ月平均は2.3万人増

・専門サービス 4.1万人増>前月は2.5万人増、6ヵ月平均は3.2万人増
(そのうち、派遣は0.3万人減<前月は0.6万人増、6ヵ月平均は横ばい
・金融 2.6万人減>前月は1.0万人増、6ヵ月平均は0.5万人増
・情報 0.4万人増<前月は1.1万人増、6ヵ月平均は0.6万人増

・その他サービス 0.4万人増<前月は1.0万人増、6ヵ月平均は0.5%増
・公益 0.1万人増>前月は0.1万人減、6ヵ月平均は横ばい

・卸売 0.3万人減<前月は0.6万人増、6ヵ月平均は0.5万人増
・輸送・倉庫 0.4万人減>前月は0.3万人増、6ヵ月平均は1.1万人増
・小売 0.7万人減<前月は0.6万人減、6ヵ月平均は0.8万人増

財生産業は前月比6.1万人増と、前月の2.7人増(修正値)を超え2019年1月以来の高い伸びを達成した。引き続き平年を上回る気温を支えに建設がけん引したが、その他も増加。製造業は3ヵ月ぶりに増加に転じ、鉱業も4ヵ月ぶりに好転した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・建設 4.2万人増>前月は4.9万人増、6ヵ月平均は2.3万人増
・製造業 1.5万人増>前月は2.0万人減、6ヵ月平均は0.2万人増
・鉱業・伐採 0.4万人増(石油・ガス採掘は1,100人増)>前月は0.2万人減、6ヵ月平均は0.2万人減

2月のセクター別の雇用増減をみると、生産労働者・非管理職別の平均時給で民間の平均を上回る教育・健康、建設、専門サービスのほか、平均以下の娯楽・宿泊が支えていたことが分かる。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.3%上昇の28.52ドル(約3,020円)と、市場予想と一致した。前月の0.2%を上回る。前年比は2019年12月に続き3.0%の上昇、市場予想と並んだ。3%乗せは、19ヵ月連続となる。なお、直近で最も強い伸びを遂げたのは、2019年2月につけた2009年4月以来の力強い伸びとなる3.4%である。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給のセクター別では、小売や娯楽・宿泊、鉱業、情報など常連組のほか、19年12月~20年1月に続き専門サービス、1月に続き民間サービスが生産労働者・非管理職の平均時給の伸びである3.3%を上回った。

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(作成:My Big Apple NY)

週当たりの平均労働時間は34.4時間と、ハリケーン・ハービー直撃の影響を受けた2017年9月以来の低水準だった過去2ヵ月から改善した。34.3時間というのはハリケーン・ハービー以来の低水準であるだけでなく、2011年1月以降で最低である。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間はボーイング737MAXの生産停止に加え、新型コロナウイルスでのサプライチェーン停滞の影響が懸念されるなか、40.4時間と2019年7月以来の高い伸びを達成。過去3ヵ月にわたり40.1時間と2011年11月以来の40時間割れを視野に入れたままだが、漸く改善した。全体の約7割を占める民間サービスも、2019年6〜20年1月の33.2時間を経て、33.3時間へ延びた。

失業率は3.5%と、市場予想と前月の3.6%を下回り1969年12月以来の最低に並んだ。2019年12月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2020年見通しからは、若干上昇した。労働参加率は前月に続き63.4%と、2013年6月以来の高水準を保った。就業率は61.1%と、2008年11月以来の高水準だった61.2%から低下した。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比横ばいの1億3,111万人、パートタイムは同0.7%増の2,773万人だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数の伸びが前月と変わらなかったが、週平均労働時間が伸びたため、前月比で0.5%上昇した。平均時給が上昇し続けた結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.4%上昇、25ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-×
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は7.0%と、2019年8月以来の水準へ上昇した。2019年12月には6.7%と、統計が開始した1994年1月以降で最低を記録していた。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は前月比3.3%増の432万人となった。

2)長期失業者 採点-〇
失業期間の中央値は9.1週と、前月の9.3週から短縮した。2017年12月以来の低水準となる8.9週に近づいた。27週以上にわたる失業者の割合は19.2%と前月の19.9%以下となり、2008年8月以来の低水準に並んだ。平均失業期間は20.9週と、前月の21.9週から改善した。なお2019年7月には19.6週と、金融危機前である2008年7月以来で最短を記録した。

3)賃金 採点-〇
今回は前月比0.3%上昇、前年比は3.0%と共に市場予想と一致した。前年比は19ヵ月連続で3%乗せとなる。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比0.3%上昇の23.87ドルと、2017年11月から続く増加トレンドを維持前年比で3.3%と、19ヵ月連続で大台を維持した。なお2019年10月は3.6%上昇、2009年2月以来の力強い伸びを果たしていた。

4)労働参加率 採点-〇
労働参加率は63.4%、1月に続き2013年6月以来の高水準を達成した。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口は横ばいの1億6,461万人、非労働人口は同0.2%増の9,490万人だった。

――米2月雇用統計は、失業率は1969年12月以来の低水準へ戻し、平均時給は3%台の上昇を続け、労働参加率の改善は2013年6月以来の高水準を維持しました。パウエルFRB議長率いる米連邦公開市場委員会(FOMC)が緊急利下げを決定した声明で、労働市場は「力強い」との見解を表明した通りの結果となっています。

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(作成:My Big Apple NY)

労働参加率が好調だった背景として、労働統計局はアジア系の労働参加率の上昇を挙げた通り、働き盛りの男性(25~54歳)の労働参加率はまちまちでした。全米の男性は季節調整済み、白人は季節調整前の数字となります。

・25~54歳 89.3%と2018年4月以来の高水準=前月は89.3%、6ヵ月平均は89.2%
・25~54歳(白人) 90.6%、2019年3月以来の高水準>前月は90.5%、6ヵ月平均は90.5%
・25~34歳 89.2%>前月は89.1%、4ヵ月ぶりの低水準。6ヵ月平均は89.3%
・25~34歳(白人)90.7%、3ヵ月連続=前月は90.7%、6ヵ月平均は90.7%

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(作成:My Big Apple NY)

米2月雇用統計は確かに素晴らしい結果でしたが、新型コロナウイルスの米国での感染拡大を反映した内容とは言えません。製造業のサプライチェーンの混乱のほか、航空会社の運航停止、出張自粛、イベント中止、旅行・観光活動の急減速がどこまで影響を及ぼすか不透明。賃金上昇ペースも、業績次第で3%割れとなってもおかしくはありません。3月ベージュブックでは、新型コロナウイルスが米産業を直撃しつつある様子が浮かび上がりました。トランプ政権は、今回の好結果に喜んでばかりはいられないでしょう。

(カバー写真:diadà/Flickr)

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