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3月ベージュブック:新型コロナウイルスで不確実性高まる

by • March 8, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off1778

Beige Book:Companies Concerns Over The Potential Impact Of The Coronavirus.

米連邦準備制度理事会(FRB)が3月4日に公表したベージュブック(1月から2月後半)によると、米経済の拡大ペースは、前回2019年11月と20年1月の「緩慢(modest)」から上方修正され、「緩慢からゆるやか(modest to moderate)」との表現に変わった。米中貿易協議で第1段階合意に両政府が署名した結果、表現を修正したとみられる。ただし、見通しは新型コロナウイルス感染拡大や大統領選が潜在的リスクと指摘した上で、前回の「控え目ながら良好」から「緩慢な成長」へ下方修正された。不確実性をめぐるキーワードは前回から減少したものの、「中国」の登場回数は急増。米中貿易協議・第1段階の合意を歓迎する文言もみられたが、新型コロナウイルスへの影響を懸念する声が強まったことが大きい。しかも、ボストン地区連銀の製造業者の間で生産拠点の国内回帰のニーズが高まっていることが判明さらにシカゴ地区連銀からは第1段階合意をめぐり中国の米農作物買入拡大が新型コロナウイルスを受け未達に終わる懸念が浮上していた。リッチモンド地区連銀がまとめた今回の詳細は、以下の通り。各地区連銀の名称で表記している。

<経済全般、見通しのセクション>

大半の地区連銀で、経済活動は「緩慢からゆるやかなペース」で拡大を続けた。しかしながら、セントルイスとカンザスシティはこの期間、「変化なし(no change)」となった。短期的見通しは、新型コロナウイルス感染拡大と大統領選を潜在的リスクと指摘し、大部分が「緩慢な成長」を見込む

前回:経済活動は、2019年末にかけての6週間において「緩慢に(modestly)」拡大した。ダラスとリッチモンドは平均を上回る成長を報告した一方、フィラデルフィアとカンザスシティは平均以下にとどまった。多くの地区連銀は、通商の不確実性が複数のビジネスで重しになっていると指摘。短期的見通しは、引き続き全米を通じ「控え目ながら良好(modestly favorable)」だった。

<個人消費>

個人消費は「概して回復(generally picked up)」したが、個人消費の伸びは全米で「まだら模様(uneven)」で、自動車も「まちまち(mixed)」だった。全般的に観光部門の成長は「横ばいから緩慢(flat to modest)」となった。新型コロナウイルスが旅行・観光部門に悪影響を及ぼしつつある兆候が見て取れた。

前回:個人消費は「緩慢からゆるやかなペース(modest to moderate pace)」で拡大し、一部の(a number of)地区連銀は前回より幾分の回復を指摘した。概して、年末主戦は「堅調(solid)」とされ、一部の(several)地区連銀はネット通販の重要性を指摘した。自動車販売は概して「ゆるやかに(moderately)」拡大したが、少数の(a handful)の地区連銀は「横ばい(flat)」だったと伝えた。観光・旅行は「まちまち(mixed)」で、東部沿岸沿いは伸びたものの、中西部と西部は「ほぼ変わらず(little changed)」だった。

<製造業、非製造業の活動>

製造業活動は、ほとんどの地域で「拡大(expanded)」した。ただし、新型コロナウイルスの影響で複数のサプライチェーンで遅延がみられ、一部の地区連銀は、生産者が今後数週間にさらなる停滞の発生に懸念を寄せたと伝えた。輸送業は概して「横ばいからわずかに拡大(flat to up slightly)」で、太西平洋中部の港湾では量ベースで力強い伸びを示した。非金融サービス部門は概して「穏やかからゆるやか(mild to moderate)」に拡大した。

前回:製造業活動は、ほとんどの地区連銀で前回から基本的に「横ばい(flat)」だった。非金融サービス部門の状況は「まちまち(mixed)」だったが、概して「緩慢に(modestly)」拡大した。輸送業の活動は全体的に「まちまち(mixed)」で、ほとんどが「弱い(weak)」から「横ばい(flat)」だった。

<不動産市場>

住宅市場は、全体的に「控え目ながら改善した(picked up modestly)」。非住宅不動産の販売とリースは地域ごとに「様々(varied)」だった。

前回:住宅販売は広範にわたり「様々(varied)」だったが、賃貸住宅市場は「強まった(strengthen)」。複数の(some)地区連銀は、販売用の住宅在庫が低水準にあるため住宅販売を抑制していると指摘した。新築住宅建設は「緩慢に(modestly)」拡大した。商業不動産は、地区連銀によって非常に「変化に富んだ(varied)」。

<貸出需要>

全体的な融資の伸びは「横ばいから緩慢(flat to modest)」で、例外はセントルイス、ニューヨーク、カンザスシティとなり、これらの州では「低下した(declined)」。

前回:銀行セクターは、融資動向につき「安定的からゆるやか(steady to moderately)な拡大」を報告した。

<農業、エネルギー>

農業の状況は足元で「ほぼ変わらなかった(little changed)」が、天然ガスの掘削活動は「低下した(declined)」。

前回:農業状況は、エネルギー部門と同様に「ほぼ変わらなかった(little changed)」。

<雇用と賃金>

雇用は、全体的に労働市場がひっ迫するなか「わずかからゆるやかなペース(a slight to moderate pace)」で拡大した。労働不足が多くの企業の成長を押し下げ、建設計画などが遅延した。一部の雇用者は、雇用を確保するため派遣から正社員へ引き上げ、企業は書き入れ時が終了しても季節労働者を雇い続け、人材を確保した。ほとんどの地域で雇用が増加した一方で、複数の地区連銀では製造業を始め小売、輸送などで労働需要の減退がみられた。賃金は、前回同様「緩慢から緩やかなペース(modest to moderate)」で上昇し、企業は今後も同様の伸びを見込む。企業は、労働市場のひっ迫と最低賃金の引き上げが賃上げ圧力を加えていると報告した。企業はコスト増と福利厚生の拡大を背景に関連支出を増やした。

前回:雇用は、ほとんどの地区連銀で「安定的あるいは緩慢に拡大(steady to rising modestly)」した。ほとんどの地区連銀は広範に及ぶ人手不足が雇用の伸びの抑制要因と指摘、少数ながらビジネス拡大を阻害しているとの報告も上がった。数地区連銀は、専門職をはじめ技術職、管理職で「活発な(brisk)」な需要を指摘。一部の(a number of)地区連銀は、製造業部門での人員削減や採用カットを報告、また輸送部門やエネルギー部門でも、人員削減を「散発的に(scattered)」確認した。賃金の伸びはほぼ前回通り、ほとんどの地区連銀で「緩慢あるいはゆるやか(modest or moderate)」となり、年末にかけ散発的に最低賃金の引き上げがみられた。数地区連銀は企業が人手不足に対応するため福利厚生、インセンティブ、研修制度や自動化などを用いたと伝えた。

米2月雇用統計の平均時給(生産労働者・非管理職)、18ヵ月連続で3%台を維持。

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(作成:My Big Apple NY)

<物価>

大半の地区連銀は、販売価格と非労働コストにつき「緩慢な伸び(modest growth)」を報告した。複数の企業、特に製造業は米中貿易協議・第1段階の合意を受け、中国が財の価格を引き下げるとして楽観的だったが、一部は引き続き関税に悩まされ、新型コロナウイルが価格に影響を与えかねないと懸念を寄せた。原油価格とガソリン価格は、新型コロナウイルスを受けて中国の需要が後退した結果、全米で下落した。小売価格はほぼ全国的に上昇したが、貿易環境の改善を受け複数の小売業でコスト負担が軽減された。農作物の価格は、様々だった。

前回:物価は期間中、仕入れ価格と同様に「緩慢なペース(modest pace)」で上昇し続けた。一部の地区連銀は小売価格の上昇ペースが「わずかに加速した(slightly faster)」と報告したが、「抑制されていた(subdued)」という。数地区連銀は複数のビジネス、ほぼ小売業、また建設で追加関税の負担を消費者に上乗せした。複数の地区連銀は、レストランが食料品価格の値上げ圧力に直面していると指摘。複数の製造業は「散発的に(scattered)」値下げを報告し、エネルギー部門でも同様だった。こうした地区連銀は、数ヵ月先も値上げが続くと予想した。

<地区連銀別、経済活動の形容詞>

●「緩慢」と表現した地区連銀、5行>前回は6行
フィラデルフィア:前回は“鈍化からわずかな拡大”→今回“緩慢”へ上方修正
クリーブランド:前回“緩慢”→今回据え置き
アトランタ:前回“緩慢”→今回据え置き
シカゴ:前回“緩慢”→今回据え置き
サンフランシスコ:前回”緩慢”→今回据え置き

●「ゆるやか」と表現した地区連銀、3行<前回1行
リッチモンド:前回“ゆるやか”→今回“ゆるやか”で据え置き
ミネアポリス:前回“緩慢”→今回“ゆるやかに拡大”へ上方修正
ダラス:前回“堅調”→今回“ゆるやか”へ修正

●その他 4行=前回は4行
ボストン:前回” 緩慢からゆるやか“→今回”拡大した“へ上方修正
NY:前回”緩慢“→今回”ゆるやかなペースで回復 “へ上方修正
セントルイス:前回は“わずかに改善”→今回“まちまち、比較的横ばい”へ下方修正
カンザスシティ:前回は“わずかに拡大”→今回“横ばい”へ上方修正

●経済活動拡大ペースの表現は、「ゆるやか」が増え「緩慢」が減少、その他が増加し全般的に上方修正。

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(作成:My Big Apple NY)

<キーワード評価>

総括並びに地区連銀のサマリーでみたキーワードの登場回数は、以下の通り。「増加した」のほか、「ゆるやか」、「安定的」などが増えた半面、「強い」や「ポジティブ」が減少し、まちまちとなった。一方で、「不確実性」の文言は前回の3回から2回へ減少した。詳細は、以下の通り。

「増加した(increase)」→21回>前回は9回
「強い(strong)」(注:強いドルの表現を除く)→1回<前回は6回
「ポジティブ(positive)」→1回<3回
「ゆるやか(moderate)」→10回>前回は9回
「緩慢、控え目など(modest)」→21回<前回は24回
「弱い(weak)」→4回=前回は4回
「底堅い(solid)」→0回<前回は2回
「安定的(stable)」→3回>前回は1回
「不確実性(uncertain)」→2回<前回は3回

総括で「不確実性」をめぐる文言は2回と前回を下回ったように、地区連銀ごとの詳細報告では「不確実性」の登場回数は前回の18回から16回へ減少した。前回はボストン(2回)、NY(1回)、フィラデルフィア(1回)、クリーブランド(2回)、リッチモンド(4回)、アトランタ(1回)、セントルイス(1回)、ダラス(6回)だった。

・ボストン 2回=前回は2 回
→(製造業、関連産業)繊維製造業は売上横ばいを報告したほか、先端センサーや化学関連の2社は、不確実性による混乱を指摘、2020年の幕開けに売上が鈍化した要因につき、新型コロナウイルスから生じたサプライチェーン問題を挙げた。
→(製造業、関連産業)製造業10社のうち7社は、調査実施日まで新型コロナウイルスに関する混乱をめぐる言及はなかった。少数(a handful)は、年内の潜在的なリスクとして大統領選挙をめぐる不確実性を挙げた。

・フィラデルフィア 1回=前回は1回
→(製造業)強気な成長見通しにも関わらず、一部の(several)の企業は新型コロナウイルス問題によるサプライチェーンの混乱に対し、警戒を表明した(cautioned)。2社はすでに、必要な部品の調達が遅れていると報告。追加関税をめぐる不確実性や新型コロナウイルスの問題を受け、国内での調達に関する質問と国内受注の増加につながった。しかし、企業は部品の生産に3ヵ月、試験と再設計にさらに6ヵ月必要と回答した。

・クリーブランド 1回<前回は2回
→(金融)金融業者は、見通しへの不確実性を受け、企業が現金保有高を増やす可能性があると推測した。

・リッチモンド 3回<前回は4回
→(港湾・輸送)港湾業者の幹部は、足元の米中貿易協議に楽観的だった一方、新型コロナウイルスによる影響とその規模について不確実性を伴いつつ、輸入の影響を懸念した。
→(港湾・輸送)少数(a few)の企業は、市場で深まる競争のほか利益率の低下、選挙イヤーをめぐる懸念を表明した。
→(小売業)新車と中古車の売上は力強いが、自動車ディーラーは選挙と新型コロナウイルスをめぐり不確実性への懸念を表明した。

・アトランタ 2回>前回は1回
→(消費支出、観光)小売と自動車ディーラーの回答者は、前回から売り上げが横ばいにとどまったと報告した。これらの産業は、中国からの商品並びに部品の調達が向こう数ヵ月にわたり困難になるとし、不確実性の高まりを予想した。
→(輸送)大半の輸送業者は、地政学的な不確実性にも関わらず、見通しに幾分の自信を表明した。

・セントルイス 1回=前回は1回
→(総括)回答者は、新型コロナウイルスが与える業界の影響について不確実としたが、どの回答者も大きな影響を報告しておらず、複数で旅行や出荷の遅延がみられた程度だった。

・ダラス 6回=前回は6回
→(総括)見通しは全般的に改善したが、新型コロナウイルスが企業環境にとって新たな不確実要因として浮上した。
→(製造業)一部の回答者は新型コロナウイルスが、特にハイテクや化学関連でサプライチェーンに負の影響を与えると指摘した。企業の見通しは数ヵ月前からわずかに楽観度が増した一方で、不確実性が再び高まった。
→(非金融サービス)複数の人材派遣会社は、選挙を控えた不確実性から、採用を鈍化させていると報告した。
→(非金融サービス)見通しは改善し続けたが、新型コロナウイルスと大統領選により、不確実性が高まったとの報告が上がった。
→(エネルギー)回答者は、新型コロナウイルスが油価を押し下げ、不確実性の大きな要因と指摘した。
→(農業)回答者は、農作物の需要とか価格をめぐる不確実性が失望を誘うとしつつ、生産者は貿易動向に楽観的だった一方で、米中の第一段階の合意以降の展開、そして新型コロナウイルスが与える商品市場への影響には依然として大きな懸念があると報告した。

<ドル高をめぐる表記>

ドル高をめぐるネガティブな表記は2017年5月分、7月、9月、10月、11月分、2018年全体、2019年の1月、3月、4月、6月、7月、9月、10月、11月、20年1月に続き総括ではゼロだった。地区連銀別では、2019年9月にサンフランシスコが指摘した程度で、今回もゼロ。なお、過去3年間でドル高を挙げた地区連銀は、2017年5月分(クリーブランド)、2018年1月分(サンフランシスコ)、2019年9月分(サンフランシスコ)など。

<中国>

中国というキーワードが登場した回数は、総括部分3回となり、前回の1回から増加した。これまでは2017年に続き2018年全て、2019年1月、3月、4月、6月、7月、9月、10月、11月にわたりゼロだった。

地区連銀別では2017年5月、9月、2018年1月、4月、7月、9月、10月、12月、2019年3月、4月、6月、7月、9月、10 月、11月、20年1月に続き言及された。登場回数は新型コロナウイルス問題の発生を受け、前回の7回から23回へ大幅に増加した。前回はクリーブランド(1回)、リッチモンド(1回)、シカゴ(3回)、ダラス(2回)だった。

・ボストン 2回=前回はゼロ
→(総括)大半の製造業者は売上につき前年比5~20%超を予想したが、2社の回答者は売上の減少を指摘共に中国での新型コロナウイルス大流行による部品調達の停滞を挙げた。
→(小売・観光)小売業者の1社は、中国での新型コロナウイルス問題が在庫に影響を及ぼしていると報告した。

・フィラデルフィア 1回>前回はゼロ
→(消費支出)観光関連のアナリストは、あらゆるメトリックスを通じ2019年のフィラデルフィア地区の観光活動がポジティブだったと分析したが、国内の観光活動はわずかながら鈍化し、新型コロナウイルスが逆風になっていると指摘した。

・クリーブランド 4回>前回は1回
→(総括)その他の企業は、新型コロナウイルスの大流行を受けた中国での工場閉鎖が与えるサプライチェーンの影響に懸念を寄せた。
→(物価)複数の製造業者は、中国からの需要の弱まりにより商品価格を押し下げられていると指摘し、多国籍資本財メーカーの1社は型コロナウイルスによる工場閉鎖を原因に挙げた
→(製造業)多くの回答者は、全般的な世界経済の低迷に言及し、新型コロナウイルスの感染拡大や中国で多くの商業施設が閉鎖した影響に懸念を表明した。
→(物価)服飾と百貨店は、中国からの輸入品に対する関税率引き下げがコスト圧力を低減させたと報告した。

・リッチモンド 4回>前回は1回
→(総括)足元の対中貿易協議は心強かったものの、一部で新型コロナウイルスが部品の調達の遅延をもたらすとの懸念が上がった。
→(製造業)一部の製造業者は、中国との貿易協議を受けて希望を与えるとの見解を寄せた。
→(港湾、輸送)輸入量は拡大したが緩慢な伸びにとどまり、一部の港湾業者は特に中国からの貨物が出荷先のキャンセルを受けて空だったケースが増えたと報告した。
→(港湾、輸送)港湾業者の幹部は、足元の米中貿易協議に楽観的だった一方、新型コロナウイルスによる影響とその規模について不確実性を伴いつつ、輸入の影響を懸念した。

・アトランタ 3回>前回はゼロ
→(消費支出、観光)小売と自動車ディーラーの回答者は、前回から売り上げが横ばいにとどまったと報告した。これらの産業は、中国からの商品並びに部品の調達が向こう数ヵ月にわたり困難になるとし、不確実性の高まりを予想した。
→(輸送)空輸業者は輸出の拡大を通じ、前年比での配送量と売上の健全な伸びを報告した。しかしながら、新型コロナウイルスの影響で中国向けの便がキャンセルされた結果、空輸稼働率が大幅に低下し、第1四半期の収益に負の影響を与えると予想した。
→(エネルギー)世界で原油と液化天然ガスの供給が拡大し続けるなか、新型コロナウイルス大流行にとる中国の需要鈍化により、さらに供給過剰の状況をもたらした。

・シカゴ 4回>前回は3回
→(企業支出)複数の製造業者は中国で新型コロナウイルスが大流行した結果、部品調達が困難となり、在庫が低水準にあると報告した。
→(製造業)重機の需要は、中国の需要が新型コロナウイルスを受けて鈍化したように全体的に低下し、米国内での活発な需要を完全に打ち消した。
→(農業)回答者は、米国農産物の購入が米中貿易協議第1段階の合意にも関わらず、中国による農作物の買い入れが実現していないと不満を表明、新型コロナウイルスの感染拡大が将来の買い入れ目標未達の言い訳になる可能性につき懸念を寄せた。
→(農業)回答者は、市場活性プログラム(Market Facilitation Program、農家向け救済策)が中国との貿易対立を受けた影響と2019年の生産減の影響を低減したと回答した。

・セントルイス 1回>前回はゼロ
→(農業)回答者の間で、第1段階の合意内容がいつ適用され、且つ新型コロナウイルス商品価格と中国による農作物の買い入れにどのような影響を与えるのか、中国との貿易をめぐる疑問を引き起こすと同時に懸念が高まった。

・ダラス 2回=前回は2回
→(非金融サービス)鉄道関連の1社は、新型コロナウイルスが中国からの出荷を減退させるとの懸念を寄せた。
→(農業)回答者は、農作物の需要とか価格をめぐる不確実性が失望を誘うとしつつ、生産者は貿易動向に楽観的だった一方で、米中の第一段階の合意以降の展開、そして新型コロナウイルスが与える商品市場への影響には依然として大きな懸念があると報告した。

サンフランシスコ 2回>前回はゼロ
→(製造業)新型コロナウイルスの感染拡大が中国や東南アジアからの民間航空機の需要を低下させ、1社からは1月の受注ゼロが報告された。
→(農業)回答者は国際間の貿易合意を歓迎し中国向けに輸出する乳製品を始めとした製品の関税率引き下げに期待を寄せる一方で、新型コロナウイルスの感染拡大がナッツ類やカリフォルニア州での他の作物に既に負の影響を与えているとの報告が上がった。

――今回、ベージュブックの総括部分と地区連銀を合わせたキーワードの数はご覧の通り。

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(作成:My Big Apple NY)

「不確実性」の登場回数が減少したとはいえ、米中貿易協議第1段階の合意や新型コロナウイルスの感染拡大を背景に「中国」の登場回数は地区連銀を中心に急増しました。部品調達に関する問題、航空機の需要低下、中国のエネルギーや農作物の需要低迷など様々で、米産業界における新型コロナウイルスの感染拡大の爪痕の深さが読み取れます。ベージュブックでの新型コロナウイルスの登場回数は、59回に及び、これまでのキーワードと比較しても突出しています。

部品調達を国内回帰させるにしても、ボストン地区連銀のこの文言が障害の大きさを者がります――「追加関税をめぐる不確実性や新型コロナウイルスの問題を受け、国内での調達に関する質問と国内受注の増加につながった。しかし、企業は部品の生産に3ヵ月、試験と再設計にさらに6ヵ月必要と回答した」。中国国家統計局は2月29日、大手・中堅企業の再開率が78.9%、同製造業関連では85.6%に及ぶと報告していました。この数字が正確ならば、サプライチェーンの混乱は一時的と考えられますが、果たして米企業の生産拠点の変更を止められるのでしょうか。

米国内の消費関連を中心とした影響も、気掛かりです。4月に幕開けする決算では、業績並びに見通しの下方修正も響いてくることでしょう。なお米証券取引委員会(SEC)は4日、声明にて条件付きで情報開示の延期を容認すると発表しました。新型コロナウイルス感染拡大を受け、延期せざるを得ない条件が適切と判断されれば、一部の財務情報の開示を最大45日間延期できます。本来であれば、4月から開始する決算発表を控え開示する義務を負っていました。開示延期の条件は、交通網の乱れが生じた場合のほか、担当従業員や専門家の業務に支障が生じた場合、社内アクセスが制限された場合など。SECの決定の陰で、米財務省は確定申告の締め切りを4月15日から延長する可能性を示唆していません。米国内の感染拡大が3月に入って急ピッチで進んだだけに、対応が迫られてもおかしくないでしょう。

(カバー写真:Ben Schumin/Flickr)

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