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【追加】米3月雇用統計:NFPは70.1万人減、一時解雇者数が金融危機以来の急増

by • April 4, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off2390

Coronavirus Color U.S. Job Market Red, Unemployment Rate Spikes To 4.4%.

※業種別の平均時給のチャート、働き盛りの男性の労働参加率などを追加します。

米3月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比70.1万人減となり、市場予想の10万人減より悪化した。前月の27.5万人増(27.3万人増から上方修正)から急転、2010年9月以来の減少となっただけでなく、減少幅は同年3月以来で最大となった。米労働統計局は、今回の結果を受け「新型コロナウイルスの影響と感染拡大を抑制する努力を反映した」と説明している。

1月分の5.9万人の下方修正(27.3万人増→21.4万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で5.7万人の下方修正となった。1~3月の3ヵ月平均は7.1万人減となり、2019年平均の17.5万人増から減少に転じた。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比71.3万人減と、市場予想の16.3万人減より格段に弱かった。前月の24.2万人増(22.8万人増から上方修正)を大きく下回り、2019年2月以来の減少となったほか、2009年4月以来の水準へ落ち込んだ。民間サービス業は65.9万人減となり、前月の18.5万人増(16.7万人増から上方修正)から大幅減へ舵を切っただけでなく、1939年以降で最悪を記録した。

NFPは2009年3月以降で最大の減少幅、失業率は約50年ぶりの低水準から2017年5月以来のレベルへ上振れ。

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向で、これまでの流れから急転直下、雇用増でトップ3の常連だった教育・健康、専門サービス、娯楽・宿泊が全て他業種に入れ替わった。1位は政府、2位は情報、3位は卸売となる。11業種別で、増加したセクターは4種にとどまり、他7種は減少した。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・政府 1.2万人増<前月は3.3万人増、6ヵ月平均は1.8万人増
・情報 0.2万人増<前月は0.3万人増、6ヵ月平均は0.6万人増
・卸売 0.1万人増>前月は0.2万人減、6ヵ月平均は0.4万人増
・公益 0.1万人増>前月は横ばい、6ヵ月平均は横ばい

・金融 0.1万人減<前月は3.1万人増、6ヵ月平均は1.4万人増
・輸送・倉庫 0.5万人減<前月は0.1万人減、6ヵ月平均は0.7万人増
・その他サービス 2.4万人減<前月は0.8万人増、6ヵ月平均は0.2万人増
・小売 4.6万人減<前月は0.1万人増、6ヵ月平均は横ばい

・専門サービス 5.2万人減<前月は3.6万人増、6ヵ月平均は1.8万人増
(そのうち、派遣は5.0万人減<前月は0.4万人減、6ヵ月平均は0.9万人減
・教育・健康 7.6万人減<前月は6.5万人増、6ヵ月平均は1.8万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は6.1万人減<前月は6.6万人増、6ヵ月平均は2.8万人増)
・娯楽・宿泊45.9万人減<前月は4.4万人増、6ヵ月平均は4.0万人増
(そのうち食品サービスは41.7万人減<前月は5.1万人増、6ヵ月平均は4.1万人増)

財生産業は前月比5.4万人減と、前月の5.7人増(修正値)をほぼ相殺し5ヵ月ぶりに減少、減少幅は2010年2月以来で最大となる。新型コロナウイルス感染拡大により必要不可欠な業種以外の営業停止を余儀なくされる州が増加する過程で、製造業を始め建設、鉱業全ての雇用が減少した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・鉱業・伐採 0.7万人減(石油・ガス採掘は800人減)<前月は0.3万人増、6ヵ月平均は0.4万人減
・建設 2.9万人減<前月は4.1万人増、6ヵ月平均は1.4万人増
・製造業 1.8万人減<前月は1.3万人増、6ヵ月平均は0.2万人減

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.4%上昇の28.62ドル(約3,100円)と、市場予想の0.2%を上回った。前月の0.3%を超え、4ヵ月ぶりの高水準に並んだ。前年比は3.1%上昇、市場予想の3.0%を上回った。新型コロナウイルス感染拡大過程ながら、3%乗せは20ヵ月連続となる。なお、直近で最も強い伸びを遂げたのは、2019年2月につけた2009年4月以来の力強い伸びとなる3.4%である。

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平均時給のセクター別では小売や、鉱業、情報など常連組のほか、専門サービス、民間サービスの5種が生産労働者・非管理職の平均時給の伸びである3.4%以上に。ただし、2月に反し娯楽・宿泊は平均以下となった。

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(作成:My Big Apple NY)

週当たりの平均労働時間は34.2時間と、市場予想の34.1時間を上回った。ただし、前月の34.4時間に届かず、2011年1月以来の低水準となる。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間はボーイング737MAXの生産停止に加え、新型コロナウイルスでのサプライチェーン停滞と需要の急減速が影響したようで、40.1時間と3ヵ月ぶりの水準に短縮した。全体の約7割を占める民間サービスも33.0時間と、2010年5月以来の水準へ短縮した。

失業率は4.4%と市場予想の3.8%はもちろん、前月の3.5%を上回った。0.9%ポイントの上振れ幅は、1975年1月以来で最大となり2019年12月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2020年見通しから、大幅に乖離している(3月に公表予定だったが、2回の緊急会合で経済・金利見通しの改訂版は公表されず)。

労働参加率は62.7%と、2013年6月以来の高水準だった2~3月の63.4%から大きく低下、2018年8月以来のレベルへ低下した。就業率は60.0%と、2017年2月以来の水準へ下振れした。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比1.4%減の1億2,930万人、前月から181万人減少した。パートタイムは同4.2%減の2,655万人となり、前月から117万人減少した。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数が大幅減に転じただけでなく、週当たり平均労働時間も短縮したため、前月比1.1%減と大きく落ち込んだ。平均時給が3%台伸びを維持したものの、雇用減が響き労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.7%減、26ヵ月ぶりにマイナスとなった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-×
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は8.7%と、前月の7.0%を超え2017年3月以来の水準へ上昇した。なお、2019年12月には6.7%と、統計が開始した1994年1月以降で最低を記録していた。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は前月比45.6%増の404.3万人となった。

不完全失業率は急伸した陰で、労働参加率と就業率は急低下。
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(作成:My Big Apple NY)

2)長期失業者 採点-×
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要があるため、3月に長期失業者に関連する項目が低下したものの、労働参加率の低下が示すように期失業者が労働市場から退出したことを示唆する。失業期間の中央値は7.0週と、前月の9.1週を下回り2001年8月以来の水準へ落ち込んだ。27週以上にわたる失業者の割合は15.9%と前月の19.2%から急低下し、2006年10月以来の水準となった。平均失業期間は17.1週と前月の20.9週から大幅に短縮、2008年7月以来の水準となった。

3)賃金 採点-〇
大幅悪化が続く雇用統計の数字のなかで、唯一明るい数字となったのが、平均時給である。今回は前月比0.4%上昇、前年比は3.1%と共に市場予想を上回った。前年比は20ヵ月連続で3%乗せとなる。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比0.4%上昇の24.07ドルと、2017年11月から続く増加トレンドを維持。前年比で3.4%と、ヘッドラインと同じく20ヵ月連続で3%の大台を維持した。なお2019年10月は3.6%上昇、2009年2月以来の力強い伸びを果たしていた。

4)労働参加率 採点-×
労働参加率は62.7%と前月の63.4%を下回っただけでなく、2018年8月以来の水準へ低下した。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口は前月比1.0%減1億6,291万人、非労働人口は同1.9%増の9,685万人だった。

労働参加率は、働き盛りの男性(25~54歳)の労働参加率でも低下した。全米の男性は季節調整済み、白人は季節調整前の数字で以下の通り。

・25~54歳 89.0%、7ヵ月ぶり低水準<前月は89.3%と2018年4月以来の高水準、6ヵ月平均は89.2%
・25~54歳(白人) 90.3%、4ヵ月ぶり低水準<前月は90.6%、2019年3月以来の高水準、6ヵ月平均は90.4%
・25~34歳 88.7%、8ヵ月ぶり低水準<前月は89.1%、6ヵ月平均は89.3%
・25~34歳(白人)90.4%、6ヵ月ぶり低水準=前月は90.7%、6ヵ月平均は90.7%

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(作成:My Big Apple NY)

――労働統計局は、今回の結果につき「新型コロナウイルス感染拡大とそれに伴う抑制措置」が背景と説明したように、特別枠を設けて影響について詳述しています。それによれば、以下の事実が浮かび上がります。

(家計調査)

・家計調査は戸別訪問あるいは電話で実施するが、戸別訪問は安全性の観点から中止。その結果、回答率は約73%と通常平均より10%下回る
・家計調査(失業率や労働参加率などを調査)の対象期間は3月8日~14日。
対象期間に働いていないものの、状況改善などの局面で職場復帰する見通しの労働者も、一時的解雇の失業者とみなす(一時的解雇の失業者は今回、季節調整済みベースで184.8万人に増加、前月は80.1万人増から急増)
・しかしながら今回、一部の労働者は「雇用されているが、欠勤中」と回答。

一時解雇者数は急増(チャートの数字は季節調整前)

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(作成:My Big Apple NY)

調査員には「新型コロナウイルスの影響で雇用されているが、欠勤中」と回答した場合は一時的解雇の失業者と判断するよう指示したところ、これが正確に反映されていない可能性
・仮にこの回答が指示通り正確に反映されれば、失業率は今回の結果からさらに約1%上昇していた公算

(事業所調査)

・就労者数や平均時給、週当たり平均労働時間をまとめる事業所調査(事業所が12日を含む週の賃金支払いデータを提供し実施)では、12日を含む週に給与が支払われた労働者数を元に算出。
企業から福利厚生を受けていたとしても、3月12日に給与を支払われなかった労働者はカウントせず
・米国における労働者の給与の支払いは、週毎が3分の1、2週間に1回が40%、週2回が20%、月に1回が残り約7%。
・事業所調査では通常、5分の1のデータにつき4大地域ごとの収集センターと電話で調査結果を取得。今回、収集センターが閉鎖されたためコンピュータ送信されたが、データ取得率は66%と通常平均を9%下回る

――米3月雇用統計は、新型コロナウイルスの影響で大幅な悪化となりました。NFPは娯楽・宿泊が全体の65.4%を占め全体の重しになったとはいえ、幅広く減少。これまで雇用を支えてきた専門サービスも派遣が押し下げ(専門サービスの減少うち96%)、減少に転じています。

平均労働時間も飲食店のデリバリー・テイクアウト営業や工場閉鎖などを受けて短縮、労働参加率も長期失業者の撤退などを反映し大幅に低下するなど、全くいいところがありません。

唯一、平均時給が前月比と前年比ともに好調な数字を叩き出しましたとはいえ、これもいつまで続くか不透明。労働市場が明るさを見出すのは、新規感染者数の減少と外出禁止関連措置の緩和・解除がカギを握りますが、トランプ政権は4月末まで外出自粛を促す行動指針を延長しました。従って、指標の改善は5月以降まで待つ必要がありそうです。

(カバー写真:Chad Davis/Flickr)

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