Trump Administration Releases “Opening Up America Again”.
トランプ米政権は16日、新型コロナウイルス封じ込め外出規制の緩和をめぐる指針「米国の再開」を発表しました。指針によれば、新型コロナやインフルエンザのような疾病の症例数が14日間にわたり“下方向の軌道”を描いた場合、3段階のプロセスを経て正常化が可能としています。
3段階のプロセスに入る前提は、以下の通り。
・最新データに基づく状況分析が可能な環境
・再発リスクを低減できる環境
・高齢者などウイルス感染に脆弱な人々の保護措置の徹底
・州知事が州全域あるいは郡別での対応を決定
基準としては症例数、患者数、病院の3つに分けられます。
・症例数
→インフルエンザらしき症状及び新型コロナウイルスらしき症例数が14日以上にわたって下方向の軌道を描いた場合
・患者数
→確認された患者数、あるいは全体検査数に占める陽性検査結果の割合が14日以上にわたって下方向の軌道を描いた場合
・病院
→深刻な状態にいない患者全員の治療(深刻な状態にある患者は治療に時間が掛かるため)、及び抗体検査を含む積極的な検査の実施が可能な場合
画像:トランプ大統領に4月12日のイースターに合わせた経済活動再開を断念させた新型コロナウイルス作業部会メンバーのデボラ・バークス氏、今回は反対しなかった模様。
(出所:The White House/Flickr)
以上の前提を満たした上で、3段階のプロセスは①個人、②雇用主、③学校や病院、ジムなど特定業種の雇用主――の3つに分かれます。
<第1段階>
・個人
→屋内退避(shelter-in-place)と公共の場での社会的距離維持、10人以上の集まり回避、不要不急の外出回避
・雇用主
→在宅勤務の推奨継続、可能であれば段階的な在宅勤務解除を設定、カフェテリアなど共有スペースの閉鎖継続あるいは社会的距離の厳格な維持、不要不急の出張など回避
・特定業種の雇用主
→学校やデイケアなどは閉鎖継続、病院の見舞いや高齢者施設の訪問禁止、レストランや映画館・礼拝所・ジムなど大人数が集まる場所は社会的距離の衛生管理を徹底して再開可能、バーの閉鎖継続、連邦政府機関メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)の指針に従い外来患者を中心とした待機手術の再開
<第2段階>
・個人
→高齢者などウイルスに脆弱な個人は外出禁止措置継続、高齢者などの家族は社会的距離や衛生管理に配慮、全ての個人は公共の場での社会的距離を最大限確保すること、50人以上の集まりは社会的距離が困難であれば回避すべし、不要不急の外出は再開可能
・雇用主
→可能な限り在宅勤務を継続、カフェテリアなど共有スペースの閉鎖継続あるいは社会的距離の厳格な維持、ウイルスに脆弱な家族をもつ従業員への特別待遇の推奨
・特定業種の雇用主
→学校やデイケアなどは再開可能、病院の見舞いや高齢者施設の訪問禁止、レストランや映画館・礼拝所など大人数が集まる場所はゆるやかな社会的距離並びに衛生管理下で再開可能、ジムは厳格な社会的距離と衛生管理下で操業可能、バーは閉鎖継続、CMSの指針に基づき入院患者の待機手術の再開可能
<第3段階>
・個人
→ウイルスに脆弱な個人は社会との接触可能も社会的距離を維持し十分でない場合の接触を最低限に、その他の個人は混雑した場所での出入りを最低限に抑制すべき
・雇用主
→制限なしの操業再開が可能
・特定業種の雇用主
→病院の見舞いや高齢者施設の訪問を再開も衛生管理の徹底が必要、レストランや映画館・礼拝所など大人数が集まる場所は接触を限定とする操業を実施すべき、ジムは基本的な衛生管理下で操業可能、バーは十分な社会的距離を保てる場合のみ再開可能
――14日間の症例減少が確認された上で、1段階ずつ進む仕組みとなります。既に同期間にわたる減少を達成する州は、すぐに第1段階に進みことが可能。ただし症例数がリバウンドした場合、一部あるいは全面的な制限を再び課す方向へ逆戻りしなければなりません。
指針発表に先立ち米疾病対策センター(CDC)のロバート・レッドフィールド局長は15日、新型コロナウイルス感染が他州と比べ抑制されている約20州で、5月1日に経済活動を再開できる可能性について言及していました。トランプ大統領も17日の記者会見でモンタナ州、ノースダコタ州、ワイオミング州など実名で再開が可能な州として示唆。18日の記者会見ではテキサス州、バーモント州で20日から一部解除されると発表。前述したモンタナ州は24日から、オハイオ、ノースダコタ、アイダホの各州が5月1日からそれぞれ段階的に経済活動を再開すると言及しました。
州別動向をみると、外出禁止措置解除に向け指針を発表したカリフォルニア州など民主党知事率いる10州は、経済活動の再開に向け連携済みです。中西部と南部でも17日、民主党や共和党の知事を問わず7州、ミシガン州(民)、オハイオ州(共)、ウィスコンシン州(民)、ミネソタ州(民)、イリノイ州(民)、インディアナ州(共)、ケンタッキー州(民)が再開で結束しました。感染者数のピークアウトを確認すると同時に新規失業保険申請者数の急増もあって、徐々に再開へ向けた道筋が固まりつつあります。
経済活動再開へ向けた動きは、ミシガン州で展開していた外出禁止反対デモが影響した可能性も。ミシガン州のホイットマー知事は民主党大統領候補の指名が固いバイデン氏の副大統領候補として有力視されるだけに、トランプ氏が横やりを入れるのも納得ですし、民主党知事が配慮してもおかしくありません。
共和党知事を擁するフロリダ州では、ホワイトハウスが経済活動再開に向けた指針発表後の翌17日、一部ビーチに対し時間限定のリオープンを承認しました。ワシントン・ポスト紙はビーチに集まる人々を指し#FloridaMoronsのハッシュタグが流行中と指摘してましたっけ。
画像:ビーチを楽しむ人々。日光浴は風邪やインフルエンザなどの予防として有効であることは事実です。
(出所:Twitter)
11月3日には米大統領選はもちろん、米議会選、知事選なども控えるだけに、外出禁止措置に関わる決定が政治色を強めるのは、致し方ありません。
(カバー写真:The White House/Flickr)
Comments
【追記】米3月鉱工業生産、コロナ禍の需要蒸発で戦後最大の落ち込み Next Post:
【追記】経済活動を再開しつつある州の共通点は、やっぱり・・・