49688138468_cbc6b27b68_c

米6月鉱工業生産は2ヵ月連続で上昇も、コロナ禍直前の水準へ戻せず

by • July 21, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off2407

Industrial Production Improves, But Remains Below Pre-Pandemic Level.

米6月鉱工業生産指数は前月比5.4%上昇し、市場予想の4.3%を上回った。前月の1.4%の上昇を含め2ヵ月連続、過去7ヵ月間で3回目の上昇となる。経済活動の再開が進んだ一方で、6月26日にテキサス州やフロリダ州などで再開の一時停止や規制再導入に着手し少なくとも全米のうち半数近い州で同様の措置が講じられるなか、7月以降の回復ペースが鈍化する懸念が燻る。

前年比は以下の通り。

・鉱工業生産指数→前年比10.8%低下し、10ヵ月連続で低下したものの前月の15.4%から下げ幅を縮小
・製造業→36.4%低下、12ヵ月連続で落ち込んだなかで最悪、少なくとも1990年以降で最大の落ち込み
・鉱業→16.9%低下し3ヵ月連続でマイナス
・公益→0.6%上昇、9ヵ月ぶりにプラスへ反転

稼働率は68.6%と、市場予想の67.8%を上回った。前月の65.1%(64.8%から上方修正)を超え、少なくとも1967年以降で最低を更新した4月の64.2%から改善を続けた。

チャート:鉱工業生産は製造業(前年比)の落ち込みにより、稼働率の上昇を抑制

ip_20jun1 ip_20jun2

(出所:My Big Apple NY)

内訳をみると、製造業(全体の75.1%)が2ヵ月連続で上昇した。けん引役は自動車で、工場再開を受け急反発した。ただし鉱業(全体の14.2%)は4ヵ月連続で低下、公益(全体の10.4%)は上昇に転じた。詳細は、以下の通り。

■製造業 7.2%の上昇、2ヵ月連続でプラス>前月は3.8%の上昇、6ヵ月平均は1.7%の低下

▽耐久財 11.6%の上昇、2ヵ月連続でプラス>前月は6.8%の上昇、6ヵ月平均は1.9%の低下

・自動車関連 105.0%上昇、2ヵ月連続でプラス<前月は120.0%の上昇、6ヵ月平均は20.8%の上昇
・機械 6.4%の上昇、2ヵ月連続でプラス>前月は3.7%の上昇、6ヵ月平均は2.5%の低下
・コンピュータ/電子部品 5.6%の上昇、4ヵ月ぶりにプラス>前月は1.5%の低下、6ヵ月平均は0.1%の低下
・家具関連 5.3%の上昇、2ヵ月連続でプラス<前月は13.0%の上昇、6ヵ月平均は2.0%の低下
・航空機/輸送機 4.5%の上昇、2ヵ月連続で上昇<前月は8.1%の上昇、6ヵ月平均は4.3%の低下
・一次金属 2.5%の上昇、6ヵ月ぶりに上昇>前月は5.1%の低下、6ヵ月平均は0.9%の低下
・木材 1.7%の上昇、2ヵ月連続でプラス=前月は1.7%の上昇、6ヵ月平均は1.5%の低下
・電気製品 1.7%の上昇、4ヵ月ぶりにプラス>前月は2.5%の低下、6ヵ月平均は1.5%の低下
・組立金属 1.7%の上昇、2ヵ月連続でプラス<前月は2.4%の上昇、6ヵ月平均は1.7%の低下

▽非耐久財 3.4%の上昇、2ヵ月連続でプラス>前月は1.4%の上昇、6ヵ月平均は1.3%の低下

・服飾 10.3%の上昇、2ヵ月連続でプラス<前月は16.8%の上昇、6ヵ月平均は0.9%の低下
・プラスチック/ゴム 8.7%の上昇、2ヵ月連続でプラス>前月は4.4%の上昇、6ヵ月平均は2.0%の低下
・繊維 4.7%の上昇、2ヵ月連続でプラス<前月は12.5%の上昇、6ヵ月平均は1.9%の低下
・石油製品 4.3%の上昇、2ヵ月連続でプラス>前月は2.1%の上昇、6ヵ月平均は2.8%の低下
・食品/飲料/タバコ 3.6%の上昇、2ヵ月連続でプラス>前月は1.3%の上昇、6ヵ月平均は1.0%の低下
・化学品 1.8%の上昇、2ヵ月連続でプラス>前月は0.9%の上昇、6ヵ月平均は0.7%の低下

■公益 4.2%の上昇>前月は2.3%の低下、6ヵ月平均は0.3%の低下

・電力 4.6%の上昇、4ヵ月ぶりにプラス>前月は2.1%の低下、6ヵ月平均は0.3%の低下
・天然ガス 2.1%の上昇>前月は9.7%の低下、6ヵ月平均は0.7%の上昇

■鉱業 6.1%の低下、4ヵ月連続で低下<前月は1.1%の低下、6ヵ月平均は1.3%の低下

――米6月鉱工業生産はコロナ禍で需要が蒸発していた分、服飾や自動車が2ヵ月連続で改善し前月に続き全体を支えました。また、新学期セールの売上見通しが好調なように、リモート学習の浸透を受けノートパソコンやIT関連の需要がコンピュータ・電子機器も寄与。ただ足元で経済活動再開の一時停止はレストランや美容室など、対面のサービス業での活動が制限されている状況ですが、個人消費減速の痛手がめぐりめぐって米経済に影を落とすリスクも。また組立金属や一次金属などの戻りが鈍く、製造業の間でも明暗が分かれている点も気掛かりです。

何より、コロナ禍直前の2月の水準を10.9%下回る状況

チャート:2月時点の指数と今回の比較

ip_20jun4
(作成:My Big Apple NY)

生産活動など実体経済には、7月ベージュブックの通り高い不確実性が残ります。

(カバー写真:neukomment/Flickr)

Comments

comments

Pin It

Related Posts

Comments are closed.