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米7月貿易赤字は拡大、経済活動再開で輸出入とも増加

by • September 11, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off2387

U.S.Trade Deficit Widens To 2-Year High As Economic Activity Resumes.

米7月貿易収支は635.56億ドルの赤字となり、市場予想の580億ドルを上回った。前月の534.61億ドル(修正値)から18.9%増加。新型コロナウイルスの感染者が急増した3月以降、経済活動の再開を手掛かりに輸出乳が増加した結果、過去5カ月間で4回目の赤字増加となる。赤字の規模は、2008年7月以来の水準へ拡大した。原油関連を除く貿易赤字も656.75億ドルと、前月の547.98億ドル(修正値)を上回り、少なくとも2000年以降で最大に膨らんだ。

内訳をみると、輸出が前月比8.1%増の1,681億ドルとなり、2ヵ月連続で増加した。輸入は同10.9%増の2,317億ドルと2ヵ月連続で増加し、4カ月ぶりの水準を回復した。ただ輸入の増加が輸出を上回り、赤字拡大につながっている。

国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの貿易赤字は904.87億ドルと、前月の803.39億ドル(修正値)から拡大した。2018年12月以降で最大となる。経済活動の再開を受け、輸入が上回り赤字が膨らんだ。

チャート:輸入の伸びが輸出を上回り、実質ベースのモノの赤字は2018年12月以降で最大

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(作成:My Big Apple NY)

サービスの黒字額は173.54億ドルと3カ月ぶりに縮小し、2012年8月以来の低水準だった。サービス収支における輸出がコロナ禍で2番目の規模に縮小、特に旅行収支で黒字に相当する分が5カ月連続で減少し、全体を押し下げた。逆に輸入は3ヵ月連続で増加し、4カ月ぶりの高水準。保険や金融サービスなど幅広く増加した。

当該単月の輸出の内訳をみると、モノは前月比11.9%増と前月の14.9%増を含め2ヵ月連続で増加した。サービスを含めた6大項目別では、全て増加。中国を始め世界各国で経済活動の再開が進むなか、輸出の品目別動向は前月比で以下の通り。品目の順は金額ベースで増加、減少が激しかったものとなる。

(増加項目)

・自動車 46.3%増、2ヵ月連続で増加<前月は144.5%増
乗用車が前月比81.3%増と大幅増だったほか、その他関連部品が27.3%増、トラック・バスも49.4%増とそろって増加した。

・消費財 21.2%増、2ヵ月連続で増加>前月は12.4%増
ダイヤモンド宝飾品が約3倍に増加したほか、芸術・古美術・切手も約2.5倍増、宝飾品が65.7%増となった。また、スマートフォンは14.8%増、コロナ禍で需要が拡大中の医療品も4%増だった。

・産業財 7.7%増、2ヵ月連続で増加<前月は9.5%増
原油が38.6%増と金額に支えられ拡大したほか、石油製品も20.6%増、燃料が14.8%増と前月に続きエネルギー関連が押し上げた。

・資本財 7.0%減、2ヵ月連続で増加<前月は12.0%増
半導体が18.4%増だったほか、民間航空機向けエンジンが23.5%増、電気機器が13.1%増となった。

・食品/飲料 2.3%増、過去6カ月間で初の増加>前月は4.5%減
→米中貿易協議・第1段階の合意が維持され且つ中国で食料不足が深刻化するなか、肉類が14.6%増だったほか、大豆も6.1%増、小麦は20.8%増となった。

・サービス 0.7%増、3ヵ月連続で増加<前月は1.0%増
→徐々に国境を越えた移動規制が緩和されつつあるとはいえ旅行が9.9%減と再び下げ幅を広げ、金融サービスや保険も減少した。

(減少項目)

なし

輸入の内訳をみると、モノは10.9%増と2ヵ月連続で増加した。油価が40ドル付近で安定して推移したが、米国での新規感染者数の増加が重石となり量ベースでのエネルギー関連輸入は0.7%減と3ヵ月ぶりに減少。ただし、金額ベースでは2ヵ月連続で上昇した。エネルギー製品を除いたモノの輸入は前月比で12.2%増と、前月の4.7%増を含め2ヵ月連続で増加した。5大項目別では、鉱工業生産でV字回復を示す自動車を始め、産業財や資本財が牽引し全て増加した。項目別動向は、前月比で以下の通り。

(増加項目)

・自動車 41.5%増、2ヵ月連続で増加>前月は107.8%増
乗用車が47.9%増、その他関連部品が41.7%増、エンジン・エンジン部品が43.2%増とそろって2桁増だった。

・産業財 12.3%増、過去5カ月間で4回目の増加>前月は19.0%減
完成金属品が30.6%増だったほか、非貨幣用金は30.1%増と増加トレンドを維持。世界経済がコロナ禍から回復しつつあるなか、原油も15.7%増だった。

・資本財 8.2%増、2ヵ月連続で増加>前月は4.7%増
民間航空機が約3.5倍増と急増したほか、電気機器が10.7%増、発電機が19.4%増だった。

・消費財 7.0%増、3ヵ月連続で増加>前月は10.4%増
→経済活動の再開が進むなかスマートフォンが20.0%増服飾・繊維が39.2%増好調な住宅市場を追い風に家具・寝具は29.2%増だった。

・食品/飲料 3.2%増、3ヵ月連続で増加>前月は2.5%増
アルコール飲料(ワイン除く)が45.7%増と牽引、次いで魚・貝類が9.8%増、その他が11.0%増だった。

(減少項目)

なし

主要国・地域別でのモノの貿易収支動向の前月比は、通関ベースで以下の通り。

・中国 6.0%増の283.48億ドルの赤字、2019年8月以来で最大
・香港 34.5%増の13.93億ドルの黒字、前月に届かなかったが3月以来の水準に
・日本 89.4%増の33.68億ドルの赤字、3ヵ月ぶりの高水準(日米貿易交渉は2019年8月末のG7首脳会談で合意)
・欧州連合 0.2%減の131.18億ドルの赤字(2019年10月にWTOがエアバスの補助金に対する報復関税を承認、20年6月に米国は仏以外のデジタル課税導入国に通商法301条調査を行うと発表)
・英国 52.8%減の5.91億ドルの黒字、黒字転換した過去3ヵ月間で最も小幅(EUと同じく今年、通商協議入り)

主な産油国・地域との貿易収支は前月比、通関ベースで以下の通り。石油輸入は減少したが、自動車の輸入が急増した結果、メキシコで突出して赤字が拡大しカナダも増加した。逆に、対石油輸出国機構(OPEC)では、石油関連の輸入が減少したため黒字が大幅に拡大した。

・カナダ 約4倍増の5.45億ドルの赤字、6月は2019年3月以降で2番目の低水準
・メキシコ 27.8%増の115.23億ドルの赤字、少なくとも2000年以降で最大
・OPEC 約3倍増の14.52億ドルの黒字、4カ月ぶりの高水準で少なくとも12ヵ月連続で黒字

年初来の貿易収支、貿易額、輸出入額をみると、コロナ禍でランキングが微妙に変化した。要点は以下の通り。

〇貿易赤字額
→スイスが5月に3位へ浮上してからその地位を維持
→ベトナムが6月の5位から4位へ浮上、代わりにアイルランドが1ランクダウンし5位へ下落、合わせてドイツや日本などそれぞれ1つずつランクダウンし6位と7位に転落
→台湾が前月の10位から9位へ浮上、代わりにイタリアが10位へ転落

〇貿易額
→メキシコが自動車関連の輸入額拡大を背景に3ヵ月ぶりに1位へ浮上、代わりに5~6月に1位だったカナダが2位へ転落
→他トップ10へ順位変わらず
→スイス、台湾、ベトナムは前年比プラスを維持

〇輸出
→順位に変化なし、トップ10位全て前年比は減少で変わらず

〇輸入
→順位に変化なし、トップ10位中、ベトナム、アイルランド、台湾は前年比プラスを維持

チャート:年初来の貿易収支など、()内の数字は前年同月のランキング

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(作成:My Big Apple NY)

――7月は輸出入がそろって増加し、経済活動再開の息吹を感じさせます。例えば、自動車は新車販売台数が改善し、鉱工業生産で自動車V字回復していましたよね。住宅市場の好調ぶりを現すように、家具・寝具の輸入も2桁増。景気回復のペースは決して加速していませんが、服飾やスマートフォンを始め消費財の輸入も増加しており、米国景気は着実に正常化への道を進んでいます。

国別の貿易赤字を振り返ると、中国の対米輸入は引き続き前年割れを維持しています。米中第1段階の合意の履行を8月24日に確認しつつ、トランプ政権はファーウェイの禁輸措置を強化し、同社含む中国企業5社の政府調達排除を決定、さらに動画アプリTikTokの米国事業売却を命じるなど貿易以外で対中圧力を増す状況。トランプ再選ならば引き続き米中関係の緊張深刻化が懸念される半面、貿易戦争に反対するバイデン氏が追加関税措置を始めトランプ政権の対中政策への対応が注視されます。

(カバー写真:Victor Reynolds/Flickr)

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