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米3月雇用統計、春の到来に合わせ雇用に芽吹き

by • April 2, 2021 • Finance, Latest NewsComments Off2983

March Madness Comes With Blowout Jobs Report.

<本稿のサマリー>

米3月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、コロナ感染者数の減少やワクチンの普及に加え、追加経済対策の成立で需要が喚起された結果、予想以上の増加を遂げました。春の訪れとともに、2月の大寒波の悪影響が払拭され、雇用の芽吹きを感じさせます。ポイントは、以下の通り。

(ポジティブ)

・NFPが大幅増加、前月に続き娯楽/宿泊が雇用を支え全体の約3割を担う(飲食業は娯楽/宿泊のうち約6割を占める)だけでなく、建設や鉱業/掘削ほか、政府部門も増加に反転するなど雇用改善の裾野に広がり
週当たり労働時間が2006年以来の最長に並び、需要拡大を示唆
失業率が6.0%に低下、失業者が減少し就業者が増加しただけでなく、労働参加率も61.5%と0.1ポイントながら前月から改善
・家計調査では、前月と逆にフルタイムが牽引し、フルタイムは前月比93.5万人増加に対し、パートタイムは同3.1万人減少
不完全失業率は10.4%と、1~2月の11.1%から改善
・労働者の8割を占める管理職を除いた場合の平均時給は前年同月比4.4%上昇、管理職を含めた全体の4.2%超え

(ネガティブ/ニュートラル)

平均時給が前月比0.1%下落、前年比も4.2%と2月から1ポイントも急低下、低賃金職の雇用改善により統計の歪みが修正され平均時給の数字も正常化し始めたか
長期失業者の割合が43.4%と2011年9月以来の高水準を示すなど、そろって長期失業の指標は悪化、追加経済対策で失業保険の上乗せが9月6日まで延長された影響か
・労働市場の先行指標ともいえる派遣が20年4月以来の減少、フルタイムの増加と共に改善トレンドを表すのか注意

米3月雇用統計の詳細は、以下の通り。

米3月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比91.6万人増となり、市場予想の64.7万人増を上回った。前月の46.8万人増(37.9万人増から上方修正)を含め、3ヵ月連続で増加。増加幅は、20年8月以来の高水準となる。1月25日のカリフォルニア州が外出禁止措置を解除したほか、NY市も2月からレストランの店内営業を承認するなど規制が緩和され、さらに2月のテキサス州大寒波の影響も払拭され、サービス業を中心に雇用が回復した格好だ。

1月分の6.7万人の上方修正(16.6万人増→23.3万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で15.6万人の上方修正となった。1~3月の3ヵ月平均は53.9万人増と、コロナ禍前の2019年平均である16.8万人増を大幅に上回り、コロナ禍が深刻化した1年経過し雇用回復の足取りが固まりつつある。

今回までで20年5月以降、1,396万人の雇用を取り戻した。ただ、同年3~4月の記録的な減少(2,236万人)を打ち消し同年2月の水準を回復するには、あと931.9万人必要となる。

チャート:コロナ禍で失った雇用を取り戻すには、あと931.9万人増加する必要あり

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(作成:My Big Apple NY)

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比78.0万人増と市場予想の57.5万人増を大幅に上回った。前月の55.8万人増(46.5万人増から上方修正)を含め、3ヵ月連続で増加した。民間サービス業が59.7万人増、ヘッドラインと逆に前月60.2万人増(51.3人増から上方修正)を下回るペースとなり、民間でも今回は財部門の雇用が活発だったことが分かる。

チャート:NFPは大幅に3ヵ月連続で増加、失業率は低下トレンドを維持

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向は、政府を含め11業種中9種が増加し、前月から1業種増えた。今回最も雇用が増加した業種は2月に続き娯楽・宿泊で、2ヵ月連続で全体を支え、20年12月~21年1月分の減少を相殺した。続いて2月に雇用減となった政府が入り、3位は前月に続き教育・健康が入った。一方で、情報のみ5ヵ月ぶりに減少した。

(サービスの主な内訳)

―増加した業種
・娯楽/宿泊 28.0万人増、3ヵ月連続で増加<前月は38.4万人増、6ヵ月平均は7.1万人増(そのうち食品サービスは17.6万人増、3ヵ月連続で増加>前月は30.9万人増、6ヵ月平均は5.3万人増)
・政府 13.6万人増、増加に反転>前月は9.0万人減、6ヵ月平均は4.1万人減
・教育/健康 10.1万人増、2ヵ月連続で増加>前月は2.6万人減、6ヵ月平均は3.7万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は10.1万人増、2ヵ月連続で増加>前月は5.7万人増、6ヵ月平均は3.7万人増)

・専門サービス 6.6万人増、11ヵ月連続で増加>前月は7.8万人増、6ヵ月平均は12.2万人増(そのうち派遣は0.1万人減、20年4月以来の減少<前月は5.0万人増、6ヵ月平均は6.3万人増)
・輸送/倉庫 4.8万人増、3ヵ月連続で増加>前月は3.6万人増、6ヵ月平均は4.0万人増
・その他サービス 4.2万人増、3ヵ月連続で増加>前月は1.9万人増、6ヵ月平均は1.7万人増

・卸売 2.4万人増、8ヵ月連続で増加>前月は0.6万人増、6ヵ月平均は1.4万人増
・小売 2.3万人増、3ヵ月連続で増加<前月は2.8万人増、6ヵ月平均は3.4万人増
・金融 1.6万人増>前月は0.9万人減と10ヵ月ぶりに減少、6ヵ月平均は1.3万人増

―横ばいの業種
・公益 横ばい=前月は横ばい、6ヵ月平均は横ばい

―減少した業種
・情報 0.2万人減、5ヵ月ぶりに減少<前月は0.3万人増、6ヵ月平均は0.2万人増

財生産業は前月比18.3万人増と、前月の4.4万人減(修正値)を含め3ヵ月ぶりに増加した。2月の大寒波で落ち込んだ建設が今回は大幅に増加した。製造業は、2ヵ月連続で増加。鉱業/伐採は、3ヵ月ぶりに増加した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)
・建設 11.0万人増>前月は5.6万人減と10ヵ月ぶりに減少.、6ヵ月平均は3.5万人増
・製造業 5.3万人増、2ヵ月連続で増加>前月は1.8万人増、6ヵ月平均は2.7万人増
・鉱業/伐採 2.0万人減、3ヵ月ぶり増加(石油・ガス採掘は600人増)>前月は0.6万人減、6ヵ月平均は0.3万人増

チャート:3月のセクター別増減

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:労働市場は改善続くも、どの業種もコロナ前の回復に至らず

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.1%下落の29.96ドル(約3,300円)と、市場予想の0.1%の上昇に反する結果となった。前月の0.3%(0.2%から上方修正)にも届かず、9ヵ月ぶりに下落した。前年比は4.2%上昇し、こちらも市場予想の4.5%以下に。前月の5.2%(5.3%から下方修正)も大きく下回った。ただし、前年比の3%超えは15ヵ月連続となる。今回は低賃金の職が増加したため、統計上の上振れが是正されたとみられる。

チャート:平均時給は前年比で伸び鈍化も、正常化の一環か

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(作成:My Big Apple NY)

週当たりの平均労働時間は34.9時間と、市場予想の34.7時間を上回った。前月の34.6時間も超え、2006年以来で最長に並ぶ。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.3時間と、前月の39.7時間(修正値)を超え、新型コロナウイルス感染拡大直前の20年2月の水準に並んだ。全体の労働者の約7割を占める民間サービスは33.8時間と前月の33.6時間を下回り、2006年以降で最長を記録した1月の33.9時間に近づいた。

失業率は6.0%と、市場予想に並んだ。前月の6.2%を下回り、20年3月以来の水準となった。過去最悪だった20年4月の14.7%でピークアウトを示す。労働参加率が小幅改善するなか、失業者が26.2万人減少しただけでなく、就業者数が60.9万人増となり低下につながった。労働統計局によれば、引き続き一時解雇された労働者が「雇用されているが休職中」として扱われるなど正確に反映されていない場合があり、これを考慮すると失業率は6.4%だったという。

就業率は過去最低だった20年4月の51.3%から上昇を続け、今回は57.8%と20年3月以来の水準へ改善した。

労働参加率は61.5%と、1~2月の61.4%を小幅に上回った。感染者数の減少を受け、労働人口の増加は34.7万人増となり、労働参加率を押し上げた。労働参加率は、コロナ禍を受け1973年1月以来の低水準だった20年4月の60.2%上回る水準を維持し、伸び悩みが解消されるか試されよう。

在宅勤務を行ったとする労働者の割合は21.0%と、前月の22.7%を下回った。

チャート:在宅勤務を行う労働者の割合

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(作成:My Big Apple NY)

コロナ禍が理由で過去4週間に職探しをしなかった労働者は3月に372万人と、2020年10月以来の400万人割れとなった

チャート:職探しをしなかった非労働人口が減少し、労働参加率を小幅ながら押し上げ

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(作成:My Big Apple NY)

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比で0.7%増の1億2,580万人、前月から93.5万人増加した。一方で、パートタイムは同0.1%減の2,508万人となり、前月から3.1万人減少した。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が大幅増加を遂げただけでなく、平均労働時間が延びたため、前月比1.5%増と大幅増加に転じた。平均時給は前月比で下落したものの、労働時間が延びた事情もあって労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比1.4%増と、こちらも増加に転じた。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-〇
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は10.4%と、前月に続き20年3月以来の低水準だった。不完全失業率は前月比で横ばいだったが、経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は、前月比4.3%減の583万人と減少していた。

チャート:不完全失業率と労働参加率はゆるやかに改善続く

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(作成:My Big Apple NY)

2)長期失業者 採点-×
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の平均は29.7週と、前月の27.6週を超え2015年5月以来の30週に接近した。失業期間の中央値は19.7週と、前月の18.3週を上回り2012年10月以来の水準へ延びた。27週以上にわたる失業者の割合は43.4%と前月の41.5%を超え、2011年9月以来の高水準となった。追加経済対策で失業保険の上乗せ300ドルが9月6日まで延長されたことが影響した可能性がある。

チャート:長期失業者が全失業者に占める割合

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(作成:My Big Apple NY)

3)賃金 採点-△
今回は前月比0.1%下落し9ヵ月ぶりにマイナス、前年比は2月から1ポイント下げ4.2%の上昇となった。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で0.1%上昇の25.21ドル。前年比では4.4%上昇し、管理職を含めた全体の4.2%を上回った。

4)労働参加率 採点-〇
労働参加率は61.5%と、1~2月を小幅に上回った。1973年1月以来の低水準だった20年4月の60.2%を上回った水準を保つ。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。

(カバー写真:Paula Satijn/Flickr)

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