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米3月雇用統計:労働参加率の改善、牽引役は女性と非白人

by • April 4, 2021 • Latest News, NY TipsComments Off2567

Women And Minorities Push Labor Participation Rate Higher In March.

米3月雇用統計は、非常業部門就労者数(NFP)が爆発的に増加しグッドフライデーで休場だったものの市場関係者の間でどよめきが走ったに違いありません。こちらでお伝えしたように、利上げ観測が高まることでしょう、その裏側で、質的な改善はどうなったのか探ってみました。業種別の平均時給を始め、人種や学歴別などでどのような結果になったのか、詳しく見てみましょう。

〇業種別、生産労働者・非管理職部門の平均時給

生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で0.1%上昇の25.21ドル。前年比では4.4%上昇し、管理職を含めた全体の4.2%を超えた。業種別を前月比でみると、平均時給の伸び0.1%を上回ったのは、13業種中で9業種となった。娯楽・宿泊が1.5%と最も力強く伸び、続いて小売が0.4%となり、コロナ禍で対面サービスを余儀なくされ、且つ失業保険の上乗せを踏まえると低賃金での業種で上昇が目立つ。一方で、鉱業・伐採が下落したほか、公益や金融もマイナスに陥った。

チャート:業種別、前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

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(作成:My Big Apple NY)

〇労働参加率

働き盛りの男性(25~54歳)の労働参加率は、全米が61.5%と1~2月から61.4%から小幅改善したように、同じく2020年10月以来のレベルへ戻した。全米の男性は季節調整済み、白人は季節調整前の数字で以下の通り。

・25~54歳 89.0%、5ヵ月ぶりの水準を回復>前月は88.9%、6ヵ月平均は87.6%
・25~54歳(白人) 89.0%、5ヵ月ぶりの水準を回復>前月は86.8%、6ヵ月平均は88.9%
・25~34歳 87.3%、5ヵ月ぶりの水準を回復>前月は86.8%、6ヵ月平均は87.0%
・25~34歳(白人) 88.5%、5ヵ月ぶりの水準を回復>前月は88.3%、6ヵ月平均は88.5%

チャート:働き盛りの男性、労働参加率はそろって5ヵ月ぶりの水準を回復

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(作成:My Big Apple NY)

労働参加率は25~54歳の働き盛りの女性で、遂に2020年3月以来の水準を回復した。また、25~34歳も全体より改善ペースが加速し20年7月以来の水準へ切り返した。このように男女別では女性での労働参加率の改善が顕著で、16歳以上で男性が2月の67.4%→3月に67.3%、20歳以上の男性で2月の69.6%→69.5%と低下した一方で、女性は16歳以上で55.8%→56.1%、20歳以上で57.0%→57.4%と上昇していた。また、65歳以上でも男性は23.0%→22.8%だったが、女性は14.8%→15.5%と改善した。

・25~54歳 76.0%、2020年3月以来の水準を回復>前月は75.3%、6ヵ月平均は75.2%
・25~34歳 75.2%、2020年7月以来の水準を回復>前月は74.9%、6ヵ月平均は74.8%

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は前月比で1.2%減の685万人(男性は316.9万人、女性は368.1万人)。過去最多をつけた20年4月でピークアウトしたとはいえ、8ヵ月連続で700万台を挟んだ推移となる。また、9ヵ月連続で女性が男性を上回った。労働市場の需要と供給が引き続きマッチせず、雇用が進まない状況を表す。

チャート:就職を望む非労働力人口

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(作成:My Big Apple NY)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の労働参加率は、白人が1~2月と変わらず20年5月以来の水準を保った。一方で、黒人が0.6ポイントと著しく改善し20年3月以来の水準を回復、アジア系が0.7ポイント上昇し20年8月以来の水準へ切り返した。ヒスパニックも上昇したが、5ヵ月ぶりの水準を戻すにとどまった。

・白人 61.4%、3ヵ月連続で20年5月以来の低水準を維持=前月は61.4%、6ヵ月平均は61.5%
・黒人 60.7%、20年3月以来の水準を回復>前月は60.1%、6ヵ月平均は60.2%
・ヒスパニック 65.6%、5ヵ月ぶりの水準を回復<前月は65.3%、6ヵ月平均は65.4%
・アジア系 63.0%、20年8月以来の水準を回復>前月は61.8%、6ヵ月平均は62.6%
・全米 61.4%、4ヵ月ぶりの低水準<前月は61.5%、6ヵ月平均は61.5%

チャート:人種別の労働参加率

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(作成:My Big Apple NY)

人種別の失業率は、アジア系を除き改善。ヒスパニック系の改善が著しく前月から0.6ポイントも低下した。黒人の場合、労働参加率が上昇したに割に改善ペースは限定的で、その結果、黒人と白人の失業率格差は4.2ポイントと開いたままだ。トランプ前政権で記録した19年8月の1.8ポイントから程遠い水準を保つ。アジア系に至っては、労働参加率の大幅改善した半面、0.9ポイントも悪化した。

・白人 5.4%、20年3月以来の低水準<前月は5.6%、6ヵ月平均は5.9%
・黒人 9.6%<前月は9.9%、6ヵ月平均は10.2%
・ヒスパニック 7.9%、20年3月以来の低水準<前月は8.5%、6ヵ月平均は8.8%
・アジア系 6.0%>前月は5.1%と20年3月以来の低水準、6ヵ月平均は6.7%
・全米 6.0%、20年3月以来の低水準<前月は6.2%、6ヵ月平均は6.7%

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は中卒以上で上昇した。とはいえ、経済活動が停止した20年4月以来の低水準からの回復に過ぎない。

・中卒以下 44.4%、20年9月以来の低水準<前月は45.9%、6ヵ月平均は45.3%
・高卒 54.8%>前月は54.7%、20年4月以来の低水準、6ヵ月平均は55.2%
・大卒以上 72.0%>前月は71.8%と20年4月以来の低水準、6ヵ月平均は72.0%
・全米 61.5%>前月は61.4%、6ヵ月平均は61.5%

学歴別の失業率は、大学院卒以上を除き低下した。特に労働参加率が低下していた中卒以下や、高卒での改善が目立ち、大学卒も含め20年3月以来の水準へ改善した。

・中卒以下 8.2%、20年3月以来の水準を回復<前月は10.1%、6ヵ月平均は9.4%
・高卒 6.7%、20年3月以来の水準を回復<前月は7.2%と20年3月以来の低水準、6ヵ月平均は7.8%
・大卒 3.7%、20年3月以来の水準を回復<前月は3.8%、6ヵ月平均は3.6%
・大学院卒以上 3.6%=前月は3.6%、6ヵ月平均は3.6%
・全米 6.0%、20年3月以来の低水準<前月は6.2%、6ヵ月平均は6.5%

チャート:学歴別の失業率

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(作成:My Big Apple NY)

--3月の雇用統計を詳細にみると、①低賃金職の平均時給が上昇、②労働参加率は女性が改善を牽引、③人種別の労働参加率は白人で横ばい、黒人やヒスパニック系など非白人で改善、④学歴別では労働参加率の上昇に対し、大学院卒など高学歴での失業率の改善は限定的――といった実態が浮かび上がります。

つまり、引き続きコロナ禍で失われた娯楽・宿泊や小売など低賃金職での雇用改善が全体を押し上げている半面、高賃金職ではそれほどというわけです。バイデン政権は民主党らしく弱者救済の色が強い政策を打ち出していますが、果たして雇用改善のすそ野を低賃金以外に広げられるのか。インフラ計画や今後打ち出す育児や医療などの対策の財源として、法人税増税などが充てられるなかで、世論調査結果をみると米国民はその影響を慎重に受け止めているようにみえます。

(カバー写真:UN Women/Flickr)

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