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5月のADP全国雇用者数は大幅増も、採用予定数は引き続き低迷

by • June 3, 2021 • Finance, Latest NewsComments Off1679

Private Payrolls Suggest Block Buster Jobs Report With Latest Initial Claims Below 400K, But Hires Remain Low.

5月のADP全国雇用者数、チャレンジャー人員削減予定数、新規失業保険申請件数をおさらいしていきます。

米5月ADP全国雇用者数は前月比97.8万人増となり、市場予想の65万人増を大幅に上回った。前月の65.4万人増(74.2万人増から下方修正)を超え、2020年6月以来の大幅増となる。ワクチン接種が広がるに伴い経済正常化が進む上、5月に共和党知事州が失業保険給付の上乗せ停止を発表した事情もあり、力強い回復が期待される。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。

チャート:ADP全国雇用者数、約1年ぶりの増加幅に

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(作成:My Big Apple NY)

セクター別では、サービス部門が85.0万人増と前月の56.3万人増(修正値)を超え、5ヵ月連続で増加した。20年6月以来の増加幅となる。内訳は以下の通り。

・娯楽/宿泊→44.0万人増、5ヵ月連続で増加>前月は25.1万人増
・教育/健康→13.9万人増、13ヵ月連続で増加>前月は8.0万人増
・貿易/輸送→11.9万人増、5ヵ月連続で増加>前月は25.1万人増
・その他→6.9万人増、5ヵ月連続で増加>前月は4.0万人増
・専門サービス→6.8万人増、13ヵ月連続で増加>前月は8.1万人増
・金融→2.0万人増、10ヵ月連続で増加>前月は1.1万人増
・情報→0.3万人減、7ヵ月連続で減少=前月は0.3万人減

財部門(製造業、建設、鉱業)は12.8万人増と前月の9.1万人増を超え、20年9月以来の高い伸びとなった。3ヵ月連続で増加している。内訳は以下の通り。

・鉱業→1.1万人増、4ヵ月連続で増加>前月は0.9万人増
・建設→6.5万人増、3ヵ月連続で増加>前月3.7万人増
・製造業→5.2万人増、過去5ヵ月間で4回目の増加>前月は4.5万人増

ADPリサーチ・インスティチュートのニラ・リチャードソン首席エコノミストは、結果を受け「足元数ヵ月から目覚ましい改善を遂げ、回復初期以来の高い伸びを記録した」と振り返った。特に「製造業が堅調なペースだったなかで、サービス業が増加の多数を占め6ヵ月平均を上回った」と指摘。パンデミックから回復しつつある経済動向を反映し、企業の規模に関係なく増加したとの見方を寄せた。

▽米5月人員削減予定数、2000年6月以来の低水準

米5月チャレンジャー人員削減予定数は、前年同月比で93.8%減の2万4,586人と4ヵ月連続で前年比で減少した。2000年6月以来の低水準となった前月からは、7.3%増。感染者数の減少やワクチン普及の加速に加え、追加経済政策を通じた現金給付で個人消費が急拡大する見通しのなか、企業は削減予定を手控えつつある。

年初来では、前年同期比86.4%減の19万2,185人だった。

チャート:人員削減予定数、2ヵ月連続で2万人台と低水準

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(作成:My Big Apple NY)

発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのアドリュー・チャレンジャー副社長は、今回の結果を受け「多くの企業主、特にパンデミックで大打撃を受けた小売りや娯楽・宿泊などの企業は、採用が困難となっている」と指摘。その上で「賞与や賃上げで労働者を引き付けている」と説明した。労働市場はひっ迫する状況下「従業員は賃上げや福利厚生の充実などを求められるようになってきた」とし、労働市場が売り手市場になっているとの見方を寄せた。

人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。4月は1位がサービス、2位がヘルスケア、3位が食品、4位が政府、5位が娯楽・宿泊だった。

1位 ヘルスケア 2,775人
2位 教育 2,617人
3位 輸送 2,185人
4位 製薬 2,134人
5位 自動車 2,109人

年初来では、以下の通り。4月時点までの年初来では1位が航空・防衛、2位が通信、3位が小売、4位が倉庫、5位娯楽・宿泊だった。

1位 航空・防衛 3万2,779人
2位 通信 2万4,824人
3位 サービス 1万6,608人
4位 小売 1万3,594人
5位 娯楽・宿泊 1万1,848人

州別動向は、年初来で以下の通り。航空・防衛が最多だったことから、ボーイングが本社を置くワシントン州が1~4月に続き前年の圏外から1位のままだ。2位以下は4月と変わらず。ミズーリは2ヵ月連続でイリノイ州に代わってランクインした。

1位 ワシントン州 3万8,164人
2位 テキサス州 2万8,351人
3位 カリフォルニア州 2万5,237人
4位 ミズーリ州 1万420人
5位 イリノイ州 9,723人

リストラ実施の理由別ランキングは、年初来で以下の通で前月と変わらず。一方で、新型コロナウイルスは3~4月の6位から今回は7位に転落した。

1位 市場動向 4万8,047人
2位 需要低下 3万9,444人
3位 閉鎖 3万1,328人
4位 再編 2万7,275人
5位 M&A 9,260人

採用予定数は、前年同月比で26.0%増の4万9,118人だった。ただし前月比では35.6%減となったように年初来で最低となっただけでなく、2020年5月以来で最小にとどまった。1~5月期では、前年同期比で65.0%減の44万1,698人だった。

チャート:採用予定数、年初来ではコロナ前の2019年の45万2,652人以下に。

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(作成:My Big Apple NY)

セクター別では、単月で以下の通り。

1位 小売 4万1,000人
2位 消費財 2,345人
3位 航空・防衛 1,082人
4位 テクノロジー 979人
5位 自動車 800人

年初来では、以下の通り。1~3月の通り1位は小売、2位が政府、3位が娯楽・宿泊、4位がヘルスケア、5位のみ公益がランクダウンしテクノロジーが入った。

1位 小売 7万7,665人
2位 政府 6万6,230人
3位 娯楽・宿泊 5万4,462人
4位 ヘルスケア 3万564人
5位 テクノロジー 2万3,818人

チャート:人員削減予定数と採用予定数をみると、採用が人員削減を上回る推移が続く。

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(作成:My Big Apple NY)

▽米新規失業保険申請件数、40万件を割り込みコロナ禍での最低を更新

5月29日週までの米新規失業保険申請件数は38.5万件と、市場予想の39.3万件を下回った。前週の40.5万件(修正値)だけでなく、2020年3月14日以降で初めて40万件割れを果たした。共和党知事州で、バイデン政権下で成立した失業保険支給上乗せなど特例措置を当初予定の9月6日から前倒しで廃止されることとなった影響が現れたようだ。期限切れ前の廃止は、6月3日時点で全米の半数を数える。

5月22日週までの継続受給者数は377.1万人と、ぜんしゅうの360.2万人を上回った。米4月雇用統計で長期失業者の割合が高止まりするように、継続受給者数の減少ペースは緩慢なままだ。関連指標の果は、以下の通り。。

・新規失業保険申請件数(5/29週)→2.0万人減の38.5万件、5週連続で減少
・継続受給者数(5/22週)→前週比16.9万人増の377.1万人、過去6週間で4回目の増加
・失業者に占める被保険者の割合(同)→2.7%、20年3月28日週以来の最低水準である前週の2.6%から上昇
・PAU(同) 7万6,098人、前週の9万3,559人から1万7,461人減少

チャート:米新規失業保険申請件数は、20年3月以来の40万件割れ

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(作成:My Big Apple NY)

――米5月ADP全国雇用者数と米新規失業保険申請件数を見ると、再び雇用が急増しそうな気配です。その一方で、採用が困難な事情を反映したのか、採用予定数はいまひとつ。4月は個々の伸び悩みを反映したかのように、雇用統計・NFPも期待を裏切る低い伸びにとどまりました。今回は前述したように共和党知事州での失業保険給付上乗せなど特例措置の前倒し撤廃もあって、これまでより潜在労働者が市場に帰ってくる見通しですが、100万人増を果たすのか・・。

(カバー写真:Mike Cohen/Flickr)

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