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米9月CPI、生活必需品が上振れしスタグフレーションのリスク鮮明

by • October 14, 2021 • Finance, Latest NewsComments Off2612

Not Only Foods And Energy, But OER Pushed Consumer Price Index In September.

米9月消費者物価指数(CPI)は前月比0.4%上昇し、市場予想の0.3%を上回った。前月の0.3%を上回りつつ、年初来で2番目に低い伸びに。2008年6月以来の高い伸びだった6月の0.9%からは、鈍化を続けた。ガソリンなど一部のエネルギーの伸びが鈍化した一方で、電力・ガスや食費が高止まり全体を押し上げた。特殊要因や経済活動が停止していた反動で上振れした費目が落ち着きを取り戻しつつあるなか、半導体不足に直面する新車や、新型コロナウイルス感染者減少を支えに上昇に転じた自動車保険なども物価上昇を促した。

内訳を前月比でみると、エネルギー(全体の7.3%を占める)が1.3%、ガソリンは1.2%とそろって前月の伸びを下回ったが4ヵ月連続で上昇した。なおエネルギー情報局(EIA)によると、ガソリン価格は9月20日週に一時3.184ドルと、2014年10月以来の高値をつけた。その他のエネルギーでは、電力など公益が1.2%上昇し前月の0.8%から加速し5ヵ月ぶりの高水準。そのうち電力が0.8%と3ヵ月連続で上昇したほか、ガスに至っては2.7%上昇し20年11月以来の高い伸びとなった。

エネルギー以外では食品・飲料(全体の14.9を占める)が0.9%上、前月の0.4%を超えコロナ禍で経済活動が停止した2020年4月以来の力強さをみせた。引き続き肉類・卵・魚が主導し同2.2%と前月の0.7%からインフレが加速外食もデルタ株感染が拡大するなかで同0.5%となり、米9月雇用統計で外食が含まれる娯楽・宿泊の平均時給が高止まりするように力強い上昇トレンドを維持した。

CPIコアは前月比0.2%上昇し、市場予想と一致した。6ヵ月ぶりの低い伸びとなる前月の0.1%を上回った。1982年6月以来の伸びへ加速した6月の0.9%からは、ヘッドラインと同じく鈍化を続けた。

チャート:CPIの品目別寄与、前月比

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(作成:My Big Apple NY)

食品とエネルギー以外をみると、ワクチン普及と経済正常化を受け上振れしていた費目では、引き続き落ち着きがみられた。ただし、前述したように自動車保険は再び上昇に反転。その他、半導体不足に伴う減産を受け新車は高止まりを続けた。CPIの23.6%を占める帰属家賃は2016年9月以来の高い伸びとなり、家賃に至っては立ち退き猶予期間の撤廃も重なり1992年10月以来の上昇率を記録。NY市などは、経済活動停止時期から一転し8月には前年同月比36%も急騰する有様です。逆に、服飾はセールが響き20年5月以来の低い伸びだった。エネルギー関連と食品・飲料以外で主な項目の前月比は、以下の通り。

(上昇品目)

・自動車保険 2.1%の上昇、3ヵ月ぶりにプラス>前月は2.8%の低下
・新車 1.3%の上昇、6ヵ月連続でプラス>前月は1.2%の上昇
・家賃 0.5%の上昇、上昇トレンドを維持し1992年10月以来の高い伸び>前月は0.3%の上昇
・住宅 0.4%の上昇、上昇トレンドを維持>前月は0.2%の上昇
・帰属家賃 0.4%の上昇、上昇トレンドを維持し16年9月以来の高い伸び>前月は0.3%の上昇
・娯楽 0.4%の上昇、8ヵ月連続でプラス>前月は0.2%の上昇
・教育 0.4%の上昇、6ヵ月連続でプラス>前月は0.2%の上昇

(横ばい、低下項目)

・医療サービス 0.1%の低下、4ヵ月ぶりにマイナス<前月は0.3%の上昇
・宿泊 0.6%の低下、2ヵ月連続でマイナス>前月は2.9%の低下
・中古車 0.7%の低下、2ヵ月連続でマイナス>前月は1.5%の低下
・服飾 1.1%の低下、6ヵ月ぶりにマイナスで20年5月以来の下落率>前月は0.4%
・航空運賃 6.3%の低下、3ヵ月連続でマイナス<前月は9.1%の低下

CPIは前年比で5.4%上昇し、市場予想と前月の5.3%を上回った。2008年4月以来の上昇率に並ぶ。CPIコアは4.0%上昇し、市場予想と前月と一致。インフレの一段の加速を免れた。

チャート:CPIの前年比、費目別の寄与など

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チャート:CPIとCPIコア、前年比

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(作成:My Big Apple NY)

――米9月CPIは食費関連やエネルギーに加え、家賃など住宅関連が押し上げました。経済活動再開に伴い上振れした費目が低下をたどるなど一部上昇を相殺するとはいえ、CPIは前年比で高止まりを維持。引き続き、米国人の裁量消費余地が縮小するリスクに瀕しています。

チャート:経済活動の再開で4~6月に上振れした費目、20年2月からみた上昇率

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(作成:My Big Apple NY)

CPIの14.9%を占める食費は、供給網の制約を受け肉・魚・卵が記録的な伸びとなり家計に重く圧し掛かります。

チャート:食費の費目全てが20年2月から右肩上がりを継続

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チャート:食品関連は全て上振れ、特に肉類・魚・卵は際立つ

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(作成:My Big Apple NY)

7.3%を占めるエネルギーを始め、前述の生活必需品の費目も高止まりしています。米エネルギー情報局(EIA)は1013日、今冬に家計が負担する天然ガス代は前年同期比30%増、電気代は同6%との見通しと発表。足元のエネルギー価格高騰に加え、今年の冬は「ラニーニャ現象」により北半球で気温が低下し暖房需要の拡大が予想されるだけに、家計にとっては頭痛の種となりそうです。

チャート:食費に加え生活必需品のガソリン、電力・ガス料金のほか、家賃も家計を圧迫

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(作成:My Big Apple NY)

当然ながら、インフレ加速により実質賃金が圧迫されています。9月の実質平均時給は前年同月比0.8%下落し、6ヵ月連続でマイナスでした。

チャート:実質賃金の下落に加え、生活必需品のインフレ加速で裁量消費余地は一段と限定的に

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(作成:My Big Apple NY)

物価上振れにより、以前にお伝えしたようにエンゲル係数も4~6月期に14.2%と2008年以来の高水準となっています。ゴールドマン・サックスは供給者制約や物価上昇を受けた個人消費の回復鈍化を理由に、2021~22年の実質GDP成長率予想を9月に続き下方修正してきました。米連邦公開市場委員会も9月21~22日開催時に公表された参加者の経済見通しで、成長率の中央値が引き下げ国際通貨基金(IMF)が10月12日に公表した世界経済見通しのうち、米国は従来の7.0%増→6.0%増へ修正したものです。

インフレ加速の主因は供給網の途絶ですが、バイデン政権は年末商戦での品不足に警鐘を鳴らすと同時に、供給網の制約解消に向けた異例の対策を発表。太平洋の玄関口で、輸入品の4割を請け負うロサンゼルス港とロングビーチ港での運営を24時間とし、滞留する50万個のコンテナ処理を進める方針を打ち出しました。フェデックスなど配送業やウォルマートなど小売業も、操業時間を延長し貨物対応で足並みをそろえます。

それでも、米国にスタグフレーションのリスクが迫っていることに変わりません。さらに今年の冬は中国の問題も重なり、原油や天然ガス価格の高騰を通じ暖房料金も跳ね上がること間違いなしで、バンク・オブ・アメリカはWTI原油先物の100ドル突破シナリオを指摘。食費やガソリン、家賃だけでなく暖房料金まで急騰するならば、米国人の財布の紐は固くなってしまうでしょう。

(カバー写真:atramos/Flickr)

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