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米4月雇用統計・NFPは利上げ後も堅調、ただし労働参加率は低下

by • May 6, 2022 • Finance, Latest NewsComments Off1944

The U,S. Labor Market’s Recovery Held Strong In April, But Labor Force Participation Rate Declines.

<本稿のサマリー>

米4月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、引き続き堅調な伸びを記録しました。引き続き、貯蓄率の低下やインフレ加速が労働市場への回帰を後押ししたとみられます。しかし、今回は労働参加率が低下しても失業率は下がらず、NFPを除けば質的な改善にブレーキが掛かった内容でした。とはいえ、労働市場のひっ迫を表す結果であり、FOMCは6月14~15日開催の次回会合でも50bpを含めた大幅利上げを決定することでしょう。

米4月雇用統計のポイントは、以下の通り。

(労働市場にポジティブ)

・NFPの伸びは、堅調な伸びを維持

(労働市場にネガティブ/ニュートラル)

・過去2ヵ月分のNFPが下方修正
・平均時給は前月比、前年比とも3月以下
・週当たり労働時間は、前月と変わらずも市場予想以下
・失業率は前月と変わらず
・労働参加率は、2021年5月以来の低下
・就業率は上昇トレンドを9ヵ月で止める
・不完全就業率は、コロナ前の20年1月以来の低水準だった前月から上昇
・長期失業者の割合は、20年9月以来の低水準から上昇

米4月雇用統計の詳細は、以下の通り。

米4月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比42.8万人増となり、市場予想の40万人増を上回った。前月の42.8万人増(43.1万人増から下方修正)と変わらず、16ヵ月連続で増加した。

2月分の3.6万人の下方修正(75.0万人増→71.4万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で3.9万人の下方修正となった。2月~4月の3ヵ月平均は52.3万人増となった。2021年平均の56.2万人増を年初来で初めて下回った。

就労者数は20年5月以降、今回で2,080万人の雇用を取り戻した。ただ、同年3~4月の記録的な減少(2,199万人)を打ち消し同年2月の水準を回復するには、あと約119万人必要となる。

チャート:コロナ禍で失った雇用を取り戻すには、あと約158万人増加する必要あり

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(作成:My Big Apple NY)

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比40.6万人増と市場予想の38.5万人増を上回った。前月の42.4万人増(42.6万人増から下方修正)を含め、16ヵ月連続で増加した。民間サービス業は34.0万人増、前月の35.7万人増(36.6万人増から下方修正)を下回った

チャート:NFPは16ヵ月連続で増加、失業率は20年2月以来の低水準だった前月と変わらず

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向は、11業種中で前月と同じく10業種が増加し前月の9業種を上回った。今回最も雇用が増加した業種は5ヵ月連続で娯楽・宿泊、前月3位だった教育・健康、輸送・倉庫が続いた。一方で、公益のみ横ばいにとどまった。

(サービスの主な内訳)

―増加した業種

・娯楽/宿泊 7.8万人増、16ヵ月連続で増加<前月は10.0万人増、6ヵ月平均は13.6万人増(そのうち食品サービスは4.4万人増<前月は5.9万人増、6ヵ月平均は8.8万人増)
・教育/健康 5.9万人増、24ヵ月連続で増加>前月は5.7万人増、6ヵ月平均は6.4万人増(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は4.1万人増、10ヵ月連続で増加<前月は4.5万人増、6ヵ月平均は4.4万人増)
・輸送/倉庫 5.2万人増と24ヵ月連続で増加>前月は1.0万人増、6ヵ月平均は4.1万人増

・専門サービス 4.1万人増、12ヵ月連続で増加<前月は9.4万人増、6ヵ月平均は8.5万人増(そのうち派遣は0.2万人増、12ヵ月連続で増加>前月は0.1万人増、6ヵ月平均は1.9万人増)
・金融 3.5万人増、10ヵ月連続で増加>前月は1.2万人増、6ヵ月平均は2.1万人増
・小売 2.9万人増、11カ月連続で増加>前月は2.5万人増、6ヵ月平均は5.7万人増

・卸売 2.2万人増、15ヵ月連続で増加<前月は2.5万人増、6ヵ月平均は2.0万人増
・政府 2.2万人増、6ヵ月連続で増加>前月は0.4万人増、6ヵ月平均は1.6万人増
・情報 1.2万人増、18ヵ月連続で増加<前月は2.1万人増、6ヵ月平均は1.1万人増
・その他サービス 1.3万人増、15ヵ月連続で増加<前月は3.7万人増、6ヵ月平均は2.4万人増

―横ばいの業種

・公益 横ばい=前月は横ばい、6ヵ月平均は横ばい

―減少した業種

なし

財生産業は、前月比6.6万人増だった。前月の6.7万人増(修正値)を小幅に下回ったとはいえ、12ヵ月連続で増加した。業種別をみると、製造業が12ヵ月連続で増加した。建設は小幅に10ヵ月連続で増加。油価がロシアによるウクライナ侵攻で概ね100ドル台を維持するなか、鉱業・伐採も小幅ながら14ヵ月連続で増加した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・製造業 5.5万人増、12ヵ月連続で増加>前月は4.3万人増、6ヵ月平均は4.4万人増
・建設 0.2万人増、10ヵ月連続で増加<前月は0.4万人増、6ヵ月平均は2.9万人増
・鉱業/伐採 0.9万人増(石油・ガス採掘は5,100人増)、14ヵ月連続で増加<前月は0.4万人増、6ヵ月平均は0.6万人増

チャート:4月のセクター別、就労者の増減

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:20年2月との比較、民間サービス部門は前月の0.7%減→0.3%減と下げ幅を縮小させた。11業種中で当時の水準を上回るのは5業種で変わらず。輸送・倉庫(18ヵ月連続)、専門サービス(7ヵ月連続)、情報(5ヵ月連続)、小売(4ヵ月連続でプラス)、金融(3ヵ月連続)となる。財部門は前月の0.9%減→0.6%減と、こちらも下げ幅を縮小。建設のみ0.1%増とプラス圏を回復した。製造業は前月の0.9%減→0.4%減と粛々と改善を続けるが、鉱業・伐採は10.6%減と引き続き2桁減を保つ。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.3%上昇の31.85ドル(約4,140円)と、市場予想の0.4%に届かず。前月の0.5%(0.4%から上方修正)も下回り、15カ月連続で上昇したなかで2番目に小幅な伸びにとどまった。パウエルFRB議長が5月FOMC後の記者会見で言及したように、あらためて賃金インフレは頭打ちの兆しを確認した。前年比は5.5%上昇し、市場予想と一致。しかし、やはり20年5月以来の高い伸びだった前月の5.6%をわずかながら下回った。

チャート:平均時給は、管理職などを含む全体は20年5月以来の高い伸び

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(作成:My Big Apple NY)

週当たりの平均労働時間は34.6時間と前月通りだったが、市場予想の34.7時間を下回った。2006年以来の最長を記録した2021年1月の35時間を14ヵ月連続で下回った。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.0時間と、前月の40.1時間を下回った。コロナ禍で最高となった21年9月に並んだ前月の40.4時間以下が続く。全体の労働者の約7割を占める民間サービスは前月通り33.6時間と、2006年以降で最長を記録した21年5月の33.9時間以下が続く。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が引き続き増加したため、週当たり労働時間が3月通りでも、前月比0.3%増だった。一方で、平均時給は伸びが引き続き伸びた結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比0.6%増だった。

失業率は3.6%と前月通りだったが、市場予想値でありコロナ直前にあたる2020年2月の3.5%に届かなかった。失業者は1.1万人減少したが、新型コロナウイルス感染者が徐々に増加する過程で離職者数が前月比で小幅ながら増加し失業率の低下を妨げた。また、後述するように27週以上の長期失業者が増加したことも、失業率の上昇につながった。

チャート:自発的離職者数は前月比0.8%増の79.3万人、失業者に占める自発的離職者数の割合は13.1%と、前月の13.0%を上回る

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(作成:My Big Apple NY)

労働参加率は62.2%と、20年3月(62.7%)以来の高水準となった前月の62.4%を下回った。2021年5月以来の低下を迎えた。なお、コロナ感染拡大直前の20年2月は63.4%である。労働力人口は前月比36.3万人減と、2021年9月以来の減少に転じた。なお、後述の通りコロナを理由として職探しできなかった潜在労働者は減少しており、新規感染者の増加が一因かは不透明だ。人種別にみると、白人男性やヒスパニック女性の労働参加率の低下が著しく、反対に黒人男性は1.0%も改善したほかアジア系も上昇し、人種別ではまちまちだった。男女別では、そろって前月以下だったが、働き盛りの女性は前月比0.3%も低下していた。

就業率は60.0%と、前月の60.1%を下回った。コロナ感染拡大の20年2月の61.2%から一歩遠のき、上昇トレンドを9ヵ月で止めた。就業者数が35.3万人減少したことが響いた。

コロナ禍を理由に在宅勤務を行ったとする労働者の割合は7.7%と、新型コロナウイルス感染者の減少を受けて前月の10.0%を下回り、パンデミック下で最低を更新した。

コロナ禍が理由で過去4週間に職探しをしなかった労働者は58.6万人と、前月の87.4万人から減少しコロナ禍で最低を更新。ただし、労働参加率は低下した。

チャート:職探しをしなかった労働者は減少トレンドへ戻し、労働参加率は2ヵ月連続で改善

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(作成:My Big Apple NY)

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.5%減(65.1万人減)の1億3,206万人だった。パートタイムは同0.7%増(18.9万人増)の2,609万人と、2ヵ月連続で増加した。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全就業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全就業率 採点-△
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全就業率は7.0%と、2020年1月以来の低水準となった前月の6.9%を上回り改善にブレーキが掛かった

チャート:労働参加率は上昇基調を3ヵ月、就業率も上昇トレンドを9ヵ月で止める

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(作成:My Big Apple NY)

2)長期失業者 採点-△
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の平均値は25.0週と、20年12月以来の水準となった前月の24.2週から延びた失業期間の中央値は前月と変わらず7.5週、20年5月以来の低水準を保った。27週以上にわたる失業者の割合は25.2%と、1回目の失業保険給付上乗せが終了した2020年9月以来の低水準だった前月の23.9%を上回った。27週以上にわたり失業者の割合は2021年後半は急低下していたが、足元は改善の足取りが鈍くなっている。全体を通じ、長期失業者が労働市場から退出し、労働参加率を押し下げた可能性がある。

チャート:長期失業者が全失業者に占める割合は、4月に再び上昇

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(作成:My Big Apple NY)

3)労働参加率 採点-×
労働参加率は62.2%と前月の62.4%を下回り、2020年3月以来(62.7%)の水準回復が遠のいた。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。

4)賃金 採点-△
今回は前月比0.3%上昇し、前月の0.4%に届かず過去15カ月連続で上昇しなかで2番目に小幅な伸びにとどまった。前年比は5.5%と、こちらも20年5月以来の高い伸びを記録した前月の5.6%にわずかに追いつかず。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で0.4%と、過去15カ月間で2番目に低い伸び前年比は6.4%の上昇と、4ヵ月ぶりの低い伸びだった。

(カバー写真:Mike Mozart/Flickr)

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