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米4月雇用統計:黒人は一段と改善した半面、白人の労働参加率は低下

by • May 8, 2022 • Latest News, NY TipsComments Off1858

Black Americans Only Major Group To See Improvements In Both Unemployment Rate And Labor Force Participation Rate.

米4月雇用統計は、こちらで紹介した通りNFPは堅調なペースを維持した一方で、失業率は横ばい、労働参加率は低下し、平均時給は前月を小幅に下回りつつ高止まりし、引き続き労働市場がひっ迫した状況を表しました。

では、業種別や性別や人種、学歴などではどうなったのか、詳細は以下の通りです。

〇業種別、生産労働者・非管理職部門の平均時給

生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で0.4%上昇の27.12ドルと、3月の0.3%を上回った。一方で、前年比は6.4%の上昇と、4ヵ月ぶりに低い伸びとなった。

業種別を前月比でみると、同部門の平均時給の伸びが0.4%以上だったのは13業種中で7業種と、前月の速報値ベースの6業種を上回った。今回の1位は公益(0.8%上昇)2位は輸送・倉庫と専門サービス(0.6%上昇)、4位は娯楽・宿泊を始め教育・健康、金融(0.6%上昇)、7位は卸売(0.4%上昇)だった。一方で、情報は横ばい、鉱業・伐採のみマイナス(0.5%下落)だった。

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

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(作成:My Big Apple NY)

〇労働参加率

労働参加率が62.2%と、2020年3月以来の水準を回復した前月(64.4%)から一転して低下した。働き盛りの男性(25~54歳)では、まちまち。全米の25~34歳で黒人を中心に(後述)大幅に改善し2019年11月以来の水準を回復した半面、白人男性の低下が目立つ。以下は全米男性が季節調整済みで、白人は季節調整前となる。

・25~54歳 88.7%=前月は88.7%、2月は88.8%と20年3月以来の高水準、20年2月は89.1%
・25~54歳(白人) 89.5%<前月は90.0%と20年3月(90.3%)以来の高水準、20年2月は90.6%
・25~34歳 89.5%、19年11月以来の高水準>前月は88.9%
・25~34歳(白人) 90.2%<前月は90.5%と20年2月(90.7%)以来の高水準

チャート:働き盛りの男性、前月と異なり白人男性で上昇

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(作成:My Big Apple NY)

働き盛りの女性の労働参加率も、改善にブレーキが掛かった。

・25~54歳 76.2%<前月は76.5%と20年2月(76.8%)以来の高水準
・25~34歳 77.6%、20年2月(78.2%)以来の高水準=前月は77.6%

65歳以上の高齢者の労働参加率は、そろって低下した。
・男性 23.4%、21年7月以来の水準へ低下<前月は23.9%、2月は24.3%と20年2月(25.2%)以来の水準を回復
・女性 15.1%、21年8月以来の水準へ低下<前月は15.2、21年12月は15.9%と20年3月(16.1%)以来の水準を回復

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は前月比で2.1%増の585.9万人(男性は278.4万人、女性は307.5万人)、2ヵ月連続で増加した。男性が前月比8.3%増と2ヵ月連続で増加し押し上げた半面、女性は2.9%減と3ヵ月ぶりに減少した。

チャート:職を望む非労働力人口、男性が増加し女性が減少

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(作成:My Big Apple NY)

〇男女別の失業率と労働参加率

男女の失業率は、男性は20年2月以来(男性:3.5%、女性:3.4%)の低水準となった前月から一転し上昇、前月の3.6%→3.8%となた。女性は逆に前月と変わらず3.6%と20年2月以来の低水準を維持した。

チャート:男女別の失業率は、男性のみ上昇

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(作成:My Big Apple NY)

男女別の労働参加率はそろって低下男性は前月の68.3%→68.0%と3ヵ月ぶりの低水準となり、20年3月(68.6%)以来の水準から転落した。女性は20年3月以来の水準を回復した前月の56.8%→56.7%へ低下した。

チャート:男女別、労働参加率、直近は女性が上向き

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(作成:My Big Apple NY)

〇男女別の就業者、20年2月比

人種・男女別の就業者数を20年2月比でみると、4月も引き続き黒人男性を始めヒスパニック系男性、ヒスパニック系女性がプラスだった(黒人男性:7.5%増と4ヵ月連続、ヒスパニック系男性:4.6%増と10ヵ月連続、ヒスパニック系女性:0.9%増と2ヵ月連続)。さらに、今回は黒人女性が0.1%増と初めてプラスに転じた。一方で、白人男性(前月は0.7%減→1.2%減)、白人女性(前月は2.1%減→2.5%減)と、白人は男女それぞれ就業者が減少した。白人の間で就業者数の回復が鈍い理由は①娯楽・宿泊などコロナ禍で回復が進む業種の従事者が比較的少ない、②引退が多い――などが考えられる。

チャート:男女・人種別の就業者数、20年2月との比較

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(作成:My Big Apple NY)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。

人種別の労働参加率は、まちまち白人とヒスパニック系はそれぞれ20年3月、20年2月以来の水準から転落した。一方で、黒人は20年2月以来の水準を回復アジア系は再び19年11月以来の水準へ戻した(なおアジア系は、21年10~11月に65.3%と2012年12月以来の高水準を記録)。

・白人 61.9%<前月は62.3%と2020年3月(62.6%)以来の水準を回復、20年2月は63.2%
・黒人 62.3%、20年2月(63.2%)以来の高水準>前月は62.1%
・ヒスパニック系 66.1%<前月は66.4%、2月は66.6%と20年3月(67%)以来の高水準、20年2月は68.0%
・アジア系 64.4%、19年11月水準の高水準>前月は64.0%
・全米 62.2%<前月は62.4%と2020年3月(62.7%)以来の水準を回復、20年2月は63.3%

チャート:人種別の労働参加率、黒人とアジア系が上昇

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(作成:My Big Apple NY)

人種別の失業率は、まちまち。白人とヒスパニック系は労働参加率が低下した結果、前者は20年2月以来の低水準を維持し、後者は低下した。黒人は労働参加率が改善した上に、失業率が一段と低下し19年11月以来の6%割れを達成。過去最低を記録した19年8~9月の5.4%が視野に入った。アジア系のみ、労働参加率につれ失業率も上昇した。

・白人 3.2%、20年2月(3.0%)以来の低水準=前月は3.2%
・黒人 5.9%、19年11月以来の低水準<前月は6.2%と20年2月(6.0%)以来の低水準
・ヒスパニック系 4.1%、19年10月(4.0%)の水準<前月は4.2%
・アジア系 2.8%、20年2月(2.5%)以来の低水準<前月は3.1%
・全米 3.6%、20年2月(3.5%)以来の低水準=前月は3.6%

白人と黒人の失業率格差は黒人の労働参加率が改善しながら失業率で低下し、白人の失業率が上昇した結果、前月の3.0ポイントから2.7ポイントと、20年4月以来の水準へ縮小した。ただし引き続き、トランプ前政権で記録した19年8月の1.9ポイント超えの水準を保つ。

チャート:黒人と白人の失業率格差、20年4月以来の水準へ縮小

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(作成:My Big Apple NY)

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、大卒のみ上昇した。

・中卒以下 44.4%、21年6月以来の低水準<前月は45.6%、2月は46.8%と20年2月(47.8%)以来の高水準
・高卒 56.8%=前月は56.8%、1月は57.2%と20年2月(58.3%)以来の水準を回復
・大卒以上 72.9%、20年3月以来の水準に並ぶ>前月は72.8%、20年2月は73.2%
・全米 62.2%<前月は62.4%、20年3月(62.7%)以来の高水準、20年2月は63.3%

チャート:学歴別では、大卒が20年3月以来の水準に並び最も改善が進む

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(作成:My Big Apple NY)

学歴別の失業率は、中卒を除き上昇。中卒は労働参加率につれ、失業率は低下した。高卒以上は労働参加率が前月横ばいだったものの、失業率は上昇。大卒は逆に労働参加率の上昇につれ、失業率も上向いた。大学院卒も前月から上昇した。

・中卒以下 3.8%、1992年1月の統計開始以来で最低<前月は4.0%、20年2月は5.7%
・高卒 3.1%>前月は3.0%と1992年1月の統計開始以来で最低、20年2月(3.7%)
・大卒 1.8%>前月は1.7%、1月は1992年1月の統計開始以来で最低、20年2月(1.9%)
・大学院卒以上 1.8%>前月は1.7%と20年2月(1.7%)以来の水準に並ぶ、21年12月は1.2%と1992年1月の統計開始以来で最低
・全米 3.6%、20年2月(3.5%)以来の低水準=前月は3.6%

--米4月雇用統計の詳細を見ると、①労働参加率は男女別で改善にブレーキ、特に高齢の男性で低下が目立つ、②男性で労働参加率が低下が鮮明だった半面、失業率が上昇、③人種別の労働参加率は白人の低下が顕著に、④学歴別では労働参加率の改善したわけではないものの、中卒以外で失業率が上昇――といった動向を確認できました。新型コロナウイルス感染者数が徐々に増加していく過程で、質的な改善が小休止したように見えます。

同時に、こちらにある通り雇用の回復が特に低賃金職が目立つなか、今回の結果は黒人の間で労働市場の改善が際立ったと言えそうです。その裏で白人の労働参加率の上昇は、引退者の増加が一因と考えられます。この辺りの詳細は、またの機会にお伝えしていきますね。

(カバー写真:Johnny Silvercloud/Flickr)

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