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米7月雇用統計:男性の労働参加率が低下、黒人の失業率は上昇

by • August 8, 2022 • Latest News, NY TipsComments Off3303

Impresssive Job Growth Has Blind Side, Male Labor Force Participation Falls 2-Month In A Row.

米7月雇用統計は、こちらで紹介した通りNFPが一段と加速し、失業率はコロナ前となる20年2月以来の水準を回復した。一方で、労働参加率は2ヵ月連続で低下し労働不足に瀕しながら、平均時給は生産労働者・非管理職で前月比と前年同月比ともに6月を下回るなど、賃金インフレのピークアウト感も漂います。

では、業種別や性別や人種、学歴などではどうなったのか、詳細は以下の通りです。

〇業種別、生産労働者・非管理職部門の平均時給

生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は平均時給は前月比で0.4%上昇、前月の0.5%を下回った。前年同月比は6.2%と、前月の6.4%を下回り年初来で最も低い伸びとなった。

業種別を前月比でみると、同部門の平均時給の伸び0.4%以上だったのは13業種中で5業種にとどまり、前月の速報値時点と変わらず。今回の1位は前月に続き金融に加え、その他サービス(0.8%上昇)が並んだ。3位は教育・健康と小売(0.5%上昇)、4位はその他サービスと健康(0.5%上昇)、5位に専門サービス(0.4%上昇)が入った。一方で、今回は鉱業・伐採(0.3%の下落)のほか、夏休みの需要ピークアウトを見据えたのか娯楽・宿泊(9.2%下落)がそろってマイナスとなった。

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

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(作成:My Big Apple NY)

〇労働参加率

労働参加率は62.1%と前月の62.2%から低下、2020年3月以来の水準を回復した3月(64.4%)から一段と遠のいた。働き盛りの男性(25~54歳)をみると、25~34歳の間での若い世代での低下が目立ち、4ヵ月連続で前月以下となった。以下は全米男性が季節調整済みで、白人は季節調整前となる。

・25~54歳 88.4%、2月以来の低水準に並ぶ=前月は88.4%、2月は88.8%と20年3月以来の高水準、20年2月は89.1%
・25~54歳(白人) 89.4%>前月は89.2%と5ヵ月ぶりの低水準、3月は90.0%と20年3月(90.3%)以来の高水準、20年2月は90.6%
・25~34歳 88.3%、6ヵ月ぶりの低水準<前月は88.9%、4月は89.5%と19年11月以来の高水準だった
・25~34歳(白人) 89.5%、6ヵ月ぶりの低水準<前月は89.7%、3月は90.5%と20年2月(90.7%)以来の高水準

チャート:働き盛りの男性、25~34歳は4ヵ月連続で低下

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(作成:My Big Apple NY)

男性と逆に、働き盛りの女性は25~54歳で低下した一方で、25~34歳で改善した。

・25~54歳 76.4%=前月は76.4%、5月は76.5%と20年2月(76.8%)以来の高水準
・25~34歳 78.0%>前月は77.3%、5月は78.4%と20年1月以来の高水準

65歳以上の高齢者の労働参加率は、男性で低下も女性が改した。
・男性 23.2%、21年7月以来の水準へ低下<前月は23.3%、2月は24.3%と20年2月(25.2%)以来の水準を回復
・女性 15.3%>前月は15.1%と21年8月以来の低水準、21年12月は15.9%と20年3月(16.1%)以来の水準を回復

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は前月比で4.5%増の591.0万人(男性は285.6万人、女性は305.4万人)と、大幅に3ヵ月ぶりに増加した。女性がけん引しており前月比10.3%増、男性は逆に前月比1.0%減と2ヵ月連続で減少した。

チャート:職を望む非労働力人口、男性が減少し女性が増加

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(作成:My Big Apple NY)

〇男女別の労働参加率と失業率

男女別の労働参加率は、男性が低下したものの女性は改善した。男性は前月の67.8%→67.6%と2ヵ月連続で低下した結果、21年7月以来の水準に。逆に女性は56.9%と、20年3月(57.1%)以来の高水準だった5月の57%乗せに近づいた

チャート:男女別、労働参加率、直近は女性が上向き

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(作成:My Big Apple NY)

男女の失業率は男女ともに低下。男性は20年2月の水準である3.5%に女性は労働参加率が上昇したにも関わらず、20年2月の低水準となる3.4%に並んだ

チャート:男女別の失業率は、働き盛り世代で労働参加率が改善した女性で上昇

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(作成:My Big Apple NY)

〇男女別の就業者、20年2月比

人種・男女別の就業者数を20年2月比でみると、7月は白人男性が初めてプラス圏に転じた。そのほか、引き続き黒人男性を始めヒスパニック系男性、ヒスパニック系女性がプラスだった。ただし、男女別ではまちまちで、黒人男性は前月の7.9%増→6.8%増と6ヵ月連続でプラスながら伸びを縮小。ヒスパニック系男性も前月の6.1%増→4.1%増と13ヵ月連続で増加しつつ増加幅をせばめた。逆に、ヒスパニック系女性は前月の1.3%増→1.8%増(5ヵ月連続でプラス)と伸びを広げた。

白人女性(前月は2.3%減→2.7%減)は引き続き、マイナスをたどり下げ幅も前月通り2.7%減だった。黒人女性は前月の1.7%減→0.4%減と下げ幅を縮小、4月に続きプラス圏回復が視野に入った。

チャート:男女・人種別の就業者数、20年2月との比較

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(作成:My Big Apple NY)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。

人種別の労働参加率は、まちまち。白人は4ヵ月連続で変わらず。黒人とヒスパニック系は低下し、特に後者は0.8%ptも急低下した。逆に、アジア系は再び19年10月以来の水準へ戻した。

・白人 61.9%、4ヵ月連続=前月は61.9%、3月は62.3%と2020年3月(62.6%)以来の水準を回復、20年2月は63.2%
・黒人 62.0%、6ヵ月ぶりの低水準<前月は62.2%、5月は63.0%と20年2月(63.2%)以来の高水準
・ヒスパニック系 65.7%、21年10月以来の低水準<前月は66.5%、20年3月は67%、20年2月は68.0%
・アジア系 64.9%、再び19年10月以来の高水準>前月は64.4%
・全米 62.1%<前月は62.2%、3月は62.4%と2020年3月(62.7%)以来の水準を回復、20年2月は63.3%

チャート:人種別の労働参加率、黒人とアジア系が上昇

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(作成:My Big Apple NY)

人種別の失業率は、労働参加率が伸び悩むなか低下が優勢。ただし、労働参加率したにも関わらず黒人は上昇した。

・白人 3.1%、20年2月(3.0%)以来の低水準<前月は3.3%
・黒人 6.0%>前月は5.8%と19年11月以来の低水準
・ヒスパニック系 3.5%、20年2月以来の低水準<前月は4.3%
・アジア系 3.9%、過去最低を更新<前月は4.3%
・全米 3.5%、20年2月の水準に並ぶ<前月は3.6%

白人と黒人の失業率格差は、拡大。白人は労働参加率が横ばいでも失業率が低下した一方で、黒人は労働参加率の低下にも関わらず失業率が上昇したためで、失業率格差は20年4月以来の水準に低下した前月の2.5ポイントから、2.9ポイントへ広がった。引き続き、トランプ前政権で記録した19年8月の1.9ポイント超えの水準を保つ。

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、中卒を除いて全て低下した。

・中卒以下 46.2%>前月は44.7%、2月は46.8%と20年2月(47.8%)以来の高水準
・高卒 56.1%、21年12月以来の低水準<前月は4ヵ月連続で56.8%、1月は57.2%と20年2月(58.3%)以来の水準を回復
・大卒以上 73.0%<前月は73.1%、5月は73.3%と20年1月以来の高水準
・全米 62.1%<前月は62.2%、3月は62.4%と2020年3月(62.7%)以来の水準を回復、20年2月は63.3%

チャート:学歴別では、中卒以外が振るわず

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(作成:My Big Apple NY)

学歴別の失業率は、まちまち。労働参加率が著しく改善した中卒で上昇したほか、労働参加率が低下したにも関わらず大卒と大学院卒以上は上昇した。高卒は、労働参加率に合わせ低下した。

・中卒以下 5.9%>前月は5.8%、2月は4.3%と1992年の統計開始以来で最低
・高卒 3.6%、2ヵ月連続で19年9月(3.5%)以来の低水準=前月は3.6%
・大卒 2.2%>前月は2.1%、5月は2.0%と20年2月(1.9%)以来の低水準
・大学院卒以上 2.7%、21年7月以来の高水準>前月は2.2%、5月は1.8%と20年2月(1.7%)以来の低水準、ただし21年12月は1.2%と1992年1月の統計開始以来で最低
・全米 3.5%、20年2月の水準に並ぶ<前月は3.6%

--米7月雇用統計の詳細のポイントは、以下の通り。

①生産労働者・非管理部門の平均時給の水準を上回った業種は、前月と変わらずの5業種。ただし、鉱業/伐採と娯楽/宿泊が下落に転じ、賃上げ圧力のピークアウトを示唆

②労働参加率は男性が下押し、特に25~34歳の若い世代で下振れ。一方で、女性は25~54歳や65歳以上で上昇

③男女とも、失業率は低下。女性は労働参加率が上昇しても失業率は改善

④白人は労働参加率が横ばいだったにも関わらず、失業率は低下。白人男性の就業者数は20年2月比でプラス圏を回復

⑤黒人のみ、労働参加率が低下したにも関わらず失業率は上昇

⑥学歴別では、大卒以上の労働参加率が低下したにも関わらず、大学院卒で失業率が2ヵ月連続で上昇。高学歴職で雇用拡大ペースが鈍化か

男性特に25~34歳の間で労働参加率が低下しているのは、求人が自身のスキルと希望に合致しない事情が垣間見れます。その他、非常に気掛かりな点として、黒人の労働参加率が低下したにも関わらず失業率が上昇していました。黒人は輸送や倉庫などで就業者が多い傾向にあるため、アマゾンの10万人雇用削減計画が響いたのかもしれません。一方で、大学院卒の失業率が労働参加率が低下した陰で前月比で0.5ポイントも上振れしたのは、マイクロソフトメタなど大手テクノロジーなどのリストラが影響した可能性があります。

男性における労働参加率の低下も、懸念材料です。経済活動の正常化を受けて子供を持つ女性が働きに出やすくなったと考えられる半面、正常化の動きは男性にも恩恵を与えるはずですが、男性は2ヵ月連続で低下しています。前述の企業に加えテスラやグーグルなど大手企業を始め人員削減、採用凍結が発表されるように、労働市場は米7月雇用統計・NFPが示すほど活況と言えそうにありません。

(カバー写真:Johnny Silvercloud/Flickr)

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