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米12月ADP雇用者数など堅調な数字並び、ドル円は134円迫る

by • January 5, 2023 • Finance, Latest NewsComments Off2026

Private Payrolls Increased More Than Expected, Job Openings Still High.

米12月ADP全国雇用者数は前月比23.5万人増と、市場予想の15万人増を上回った。前月の12.7万人増を超え、5カ月ぶりの高水準となる。雇用を支えたのは、中小企業で大企業は減少した。

業種別では、以下の通り。

・財部門
→建設のみ増加
→製造業と鉱業は減少

・サービス部門
→娯楽・宿泊、専門サービス、教育・健康などが増加
→輸送・倉庫、金融が減少

企業サイズ別では、以下の通り。
→中小企業 38.6万人増
→大企業 15.1万人減

以下、米12月チャレンジャー人員削減予定数と米11月求人件数などをおさらいしていきます。そろって堅調な結果となり、ドル円は134円回復が迫る勢いです。

チャート:ドル円、昨年末の下落を打ち消す勢い

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(出所:Tradingview)

▽米12月チャレンジャー人員削減予定数は前年同月比2.3倍増、労働市場の減速を確認

米12月チャレンジャー人員削減予定数は前年同月比で約2.3倍増の4万3,651人だった。7ヵ月連続の増加となる。前月比では43.2%減と4カ月ぶりに減少したが、人員削減予定数としては年初来では2番目の高水準だった。

チャート:人員削減予定数、11月に2021年1月の数字に逆戻りした後で12月に減少

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:人員削減予定数、12月単月では2019年以降で最多

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(作成:My Big Apple NY)

2022年では前年比13.2%増の36万3,824人となった。10月までの単月では1993年の統計開始以来で最低を更新していたが、11月の急増を受けデータ公表後で2番目の低水準となった。

チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社のアンドリュー・チャレンジャー・シニア・バイス・プレジデントは、結果を受け「米経済は雇用を引き続き創出しているが、企業は景気減速に積極的に備えつつあり2023年にかけ採用には慎重」と指摘。また「利上げとインフレ上昇が住宅市場に打撃を与え、金融や不動産、建設などの業種でのレイオフにつながった」とも説明した。

人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。12月は米銀大手のウェルズ・ファーゴやモルガン・スタンレー、フードデリバリー大手ドアダッシュの他、FTX破綻に関連して急落した暗号資産の影響で取引所大手クラーケンなどリストラが目立った。なお、前月は1位がテクノロジー、2位がサービス、3位が倉庫、4位がヘルスケア、5位が建設だった。

1位 テクノロジー 1万6,193人
2位 金融 6,866人
3位 保健 2,461人
4位 フィンテック 2,351人
5位 消費財 2,101人

人員削減が多かったセクターのランキングは、年初来で以下の通り。上位圏外だったフィンテックは、1,669.6%も急増し1万476人を数えた。なお、前月は1~3位まで12月の結果と変わらず、4位はサービス、5位は小売だった。

1位 テクノロジー 9万7,171人、前年は1万2,2975人、648.9%増
2位 自動車 3万912人、前年は1万469人、195.3%増
3位 ヘルスケア 3万626人 前年は3万1,997人、4.3%減
4位 金融 2万4,437人 前年は1万784人、126.6%増
5位 サービス 2万4,405人 前年は2万8,650人、21.8%減

州別動向は年初来で以下の通りで1、2、5位は人口別でのトップ5に入る州が並んだ。1位のカリフォルニア州が突出して多いのはIT関連の人員削減が響いたとみられる。11月に5位のテキサス州に代わって3位に入ったワシントン州も、テクノロジー関連の人員削減で急速に増加したもようだ。ミシガン州は自動車セクターのリストラ増加が背景とされよう。なお、11月と順位は変わらない。

1位 カリフォルニア州 12万625人 前年同期は5万239人
2位 ニューヨーク州 3万9,813人 前年同期は1万6,113人
3位 ミシガン州 1万9,693人 前年同期は4,102人
4位 ワシントン州 1万9,491人 前年同期は4万596人
5位 ペンシルべニア州 1万4,980人 前年同期は1万1,493人

リストラ実施の理由別ランキングは、前月比で以下の通り。今回は需要低下が前月の圏外から1位に急伸したほか、閉鎖も圏外から5位にランクインした。なお、前月は1位がコスト削減、2位が市場動向、3位が理由不明、4位がM&A、5位が住宅市場の減速だった。

1位 需要低下 1万6,429人
2位 市場動向 7,735人
3位 理由不明 5,952人
4位 コスト削減 5,085人
5位 閉鎖 5,085人

リストラ実施の理由別ランキングは、年初来で以下の通り。前月を振り返ると1~2位は12月と変わらず、3位が閉鎖、4位が市場動向、5位が需要低下だった。

1位 コスト削減 8万2,219人
2位 理由不明 6万5,295人
3位 市場動向 5万9,174人
4位 閉鎖 5万8,705人
5位 需要低下 3万2,243人

採用予定数は11月に前年同月比42.6%減の5万1,693人となり、3カ月ぶりに減少した。ただし、前月比では逆に71.2%増と、年初来で5回目の増加となった。

チャート:12月の採用予定者数、過去4年間で2番目に低い水準

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(作成:My Big Apple NY)

セクター別では、単月で以下の通り。年末商戦を受け小売が牽引した。前月は1位が小売、2位がサービス、3位がテクノロジー、4位が食品、5位が化学だった。

1位 ヘルスケア 1万1,006人
2位 エネルギー 7,254人
3位 自動車 5,800人
4位 資本財 4,381人
5位 建設 4,082人

12月の人員削減予定数は採用予定数を比較すると、採用予定数が8,042人多い結果となった。なお、11月は年初来ではじめて人員削減予定数が逆転、ヒストリカルでは2021年11月以降で初めてだった。

チャート:人員削減予定数が採用予定数を上回るのは、21年11月以降で初めて

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(作成:My Big Apple NY)

▽米11月求人数は2カ月連続で減少も高止まり、失業者比で1.74倍と前月比で概ね横ばい

米11月雇用動態調査(JOLTS)によると、求人数は1,046万人と前月の1,051万人(修正値)を0.5%下回った。過去8ヵ月間で6回目の減少となる。求人数は19ヵ月連続で失業者数を上回ったが、引き続き両者の乖離は大きい。

チャート:求人数と失業者数の推移

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(作成:My Big Apple NY)

求人数と合わせ失業者も減少した結果、求人数は失業者の1.74倍と前月の1.73倍と概ね変わらずだった。

チャート:22年9月FOMCでパウエルFRB議長が「労働市場を見る上で良い手段」と発言した求人数は失業者数の1.74倍

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(作成:My Big Apple NY)

採用数は前月比1.4%減の601万人で、過去6カ月間で4回目の減少となる。水準としては2021年1月以来の600万人割れが迫った。

離職者数は587万人と、前月の576万人(修正値)を2.0%下回った。過去4カ月間で3回目の増加となる。ただし、離職者数を押し上げたのはその他で前月比31.4%増の34.7万人だったほか、定年や自己都合による自発的離職者数も同2.0%増の587万人。解雇者数は逆に同6.6%減の135万人だった。

▽米新規失業保険申請件数は前週比減少、2019年平均以下に

2022年12月31日週までの米新規失業保険申請件数は20.4万件と、市場予想の22.5万件を下回った。前週の22.3万件(22.5万件から下方修正)だけでなく、2019年平均の21.8万件以下となる。

同年12月24日週までの継続受給者数は169.4万人と、約7カ月ぶりの水準へ増加した前週の171.8万人(修正値)を下回った。

チャート:米新規失業保険申請件数は2019年平均超えを維持、継続受給者数は約7カ月ぶりの160万人乗せ

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(作成:My Big Apple NY)

――米12月ADP全国雇用者数を始め米12月チャレンジャー人員削減予定数、米11月求人件数など、堅調な労働市場を表す内容でした。米12月雇用統計・NFPの市場予想は20万人増のところ、上振れする期待が高まります。

ところで、人員削減予定件数を2000年以降の月別の増減をみると、12月はクリスマスと年末と家族のイベントを控えるだけに平均で11.9%減と最も減少する時期にあたります。一方で、年明けの1月になると平均で41.3%増と急増する傾向するのですよ。1月の増加が突出しているのは、季節調整済みの数字ではないためでしょう。

チャート:人員削減予定数、1月に急増する傾向あり

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(作成:My Big Apple NY)

それにしても、既に今年は年明け2日間でアマゾンはリストラ規模を22年11月に発表した約1万人から1.8万人超へ引き上げ、セールスフォースは従業員の10%のリストラを発表するなど、人員削減のニュースが相次いでいます。12月に堅調な数字が並んだ労働市場が1月以降に変調をきたすのか。そのヒントは、米12月雇用統計が握っていることでしょう。

(カバー写真:Maryland GovPics/Flickr)

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