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米1月人員削減予定数は3カ月連続で倍増、企業の6割は今年のリストラを計画

by • February 2, 2023 • Finance, Latest NewsComments Off1887

Job Cuts Surge In January, 61% Of Companies Plan Layoffs This Year.

米1月ADP全国雇用者数は前月比10.6万人増と、市場予想の17.8万人増を下回りました。前月の25.3万人増(23.5万人増から上方修正)に届かず、2021年1月以降の増加トレンドで最も低い伸びにとどまっています。パウエルFRB議長が2月FOMC後の記者会見で、利上げについて道半ばという表現を使用せず、利上げ打ち止めを示唆しましたが、それをサポートする内容と言えるでしょう。

チャート:米11月ADP全国雇用者数、22カ月連続で増加したなかで最も小幅な伸びに

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(作成:My Big Apple NY)

以下、米1月チャレンジャー人員削減予定数と米11月求人件数などをおさらいしていきます。

▽米1月チャレンジャー人員削減予定数は前月比2.4倍増、1月としては2009年以来の高水準

米1月チャレンジャー人員削減予定数は前年同月比で約5.4倍増の10万2,943人だった。8ヵ月連続の増加となる。前月比でも約2.4倍と3カ月連続で2倍を超える急増を迎えただけでなく、4カ月連続で増加人員削減予定数自体は2020年9月以来、1月としてはリーマン・ショックが直撃してまもない2009年以来で最多を記録した。

チャート:米1月人員削減予定数は2020年9月以来の高水準、1月としては2009年以来の高水準

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:過去4年間と比較し、2020年を除き突出した増加に

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(作成:My Big Apple NY)

チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社のアンドリュー・チャレンジャー・シニア・バイス・プレジデントは、結果を受け「コロナ禍を経て、採用ブームが起こった反動が発生している」と指摘。また「企業は経済減速に備え始め、人員を削減し採用を凍結しつつある」との見解を寄せた。

人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。アマゾンやマイクロソフト、アルファベットなど1月はテクノロジーの人員削減だけでなく、ゴールドマン・サックスやダウ、3Mなど他分野にも広がった。22年12月の1位はテクノロジー、2位はサービス、3位は倉庫、4位はヘルスケア、5位は建設だった。

1位 テクノロジー 41,829人、前年同月は72人
2位 小売 13,000人、前年同月は391人
3位 金融 10,603人、前年同月は696人
4位 ヘルスケア 6,733人、前年同月は5,053人
5位 サービス 4,497人、前年同月は1,786人

州別動向は年初来で以下の通りで1、3、5位は人口別でのトップ5に入る州が並んだ。1位のカリフォルニア州が突出して多いのはIT関連の人員削減が響いたとみられる。4位のワシントン州も、テクノロジー関連の人員削減で急速に増加したもようだ。ミシガン州は自動車セクターのリストラ増加が背景と考えられる。22年12月は1位がカリフォルニア、2位がニューヨーク、3位がミシガン、4位がワシントン、5位がペンシルベニアだった。

1位 カリフォルニア州 10万3,433人 前年同期は4万5,114人
2位 ワシントン州 2万9,283人 前年同期は1万4,572人
3位 ニューヨーク州 1万9,554人 前年同期は4,102人
4位 ミシガン州 1万9,194人 前年同期は4万596人
5位 テキサス州 1万4,580人 前年同期は9,966人

リストラ実施の理由別ランキングは、1月分で以下の通り。22年12月は1位が市場動向、2位が理由不明、3位が閉鎖、4位が再編、5位が住宅市場の減速だった。

1位 市場・経済動向 8万6,526人
2位 理由不明 5,777人
3位 閉鎖 5,744人
4位 再編 2,031人
5位 コスト削減 1,992人

採用予定数は1月に前年同月比57.8%減の3万2,764人となり、2カ月連続で減少した。前月比では逆36.6%減と、減少に転じた。

チャート:採用予定者数、過去4年間と比較しても低い

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(作成:My Big Apple NY)

セクター別では、単月で以下の通り。どちらかと言えば、労働集約型の産業が並んだ。前月は1位が小売、2位がサービス、3位がテクノロジー、4位が食品、5位が化学だった。

1位 娯楽 1万5,859人
2位 エネルギー 2,884人
3位 非営利団体 1,900人
4位 建設 1,670人
5位 食品 1,475人

▽米12月求人数は予想外に増加、失業者比で1.92倍に上昇

米12月雇用動態調査(JOLTS)によると、求人数は1,101万人と前月の1,044万人(修正値)を5.5%上回った。3カ月ぶりに増加した。求人数は19ヵ月連続で失業者数を上回った。

チャート:求人数と失業者数の推移

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(作成:My Big Apple NY)

求人数が増加し失業者が減少した結果、求人数は失業者の1.92倍と前月の1.74倍から上昇した。5ヵ月ぶりの水準を回復した。

チャート:22年9月FOMCでパウエルFRB議長が「労働市場を見る上で良い手段」と発言した求人数は失業者数の1.92倍に上昇

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(作成:My Big Apple NY)

採用者数は前月比2.2%増の617万人で、3カ月ぶりに増加した。求人数が高水準の割りに、採用者数の伸びは極めて限定的だ。

チャート:求人数に対し、採用者数の伸びは伸び悩み

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(作成:My Big Apple NY)

離職者数は589万人と、前月の583万人(修正値)を1.0%上回り3カ月連続で増加した。離職者数を押し上げたのは解雇者数で前月比3.5%増の147万人だった。一方で、定年や自己都合による自発的離職者は同0.4%減の408万人だった。

▽米新規失業保険申請件数、2019年平均の水準近くを維持

1月28日週までの米新規失業保険申請件数は18.3万件と、市場予想の20.0万件をわずかに下回った。前週の18.6万件を下回り、2022年4月以来の低水準。2019年平均の21.8万件以下の水準も保った。

1月21日週までの継続受給者数は165.5万人と、前週の166.6万人(修正値)を下回った。

チャート:米新規失業保険申請件数は2022年4月以来の低水準、継続受給者数は160万人超えを維持

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(作成:My Big Apple NY)

――米1月ADP全国雇用者数と米1月チャレンジャー人員削減予定数、並びに米12月雇用動態調査のうち離職者数は労働市場の減速を表しました。人員削減の波がテクノロジー部門を超え、金融は製造業に波及していることも確認。パウエルFRB議長が言及するように、需要は明らかに減退しつつあります。

人員削減をめぐっては、こちらでご紹介した通り、全世界で1月30日までに219社が6万8,000人のリストラを発表したといいます。2022年全体で1,000社、15万4,336人だった結果を踏まえれば、金利上昇や需要の落ち込みに合わせ、企業は人員削減に踏み切らざるを得ない様子が見て取れます。

チャート:1月の主な人員削減発表、テクノロジーから製造業まで裾野広がる

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(作成:My Big Apple NY)

また、人材派遣大手レジメビルダーが2022年12月に米企業1,000社に対して実施した調査でも、人員削減を進める方向性を確認しました。今年「リストラを行う予定」と回答した企業は61%に及び、規模については57%が「従業員の30%以上」と回答。また、70%は「採用凍結」を決定する公算が大きいといいます。

その割りに米新規失業保険申請件数が低水準なのは、高所得層のレイオフが多いためなのか。複数の職を持つ者が増加するように個人事業主に転じている可能性もあり、労働参加率が低い状況で短期的に失業率の急伸は回避されそうです。

(カバー写真:infradept/Flickr)

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