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米1月雇用統計:黒人労働者、失業率や労働参加率の改善を主導

by • February 5, 2023 • Finance, Latest NewsComments Off2115

Black Unemployment Rate Declines To The Second Lowest, While Others Increase.

米1月雇用統計・NFPはこちらで紹介しましたように市場予想を大幅に上回りました。引き続き、NFPの増加を牽引したのは娯楽・宿泊に含まれる外食サービスでしたが全体の23%と、前月の42%から縮小しています。なお、食品サービスがNFPに占める割合は2022年1月~23年1月の平均で7.7%でした。

チャート:NFPの増加幅に占める食品サービスの割合

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(作成:My Big Apple NY)

そのほか失業率は1969年5月以来の低水準を記録し、労働参加率も改善するなど文句なしの好結果と言えるでしょう。

では、業種別や性別や人種、学歴などではどうなったのか、詳細は以下の通りです。

〇業種別、生産労働者・非管理職部門の平均時給

生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比0.2%上昇し、前月の0.4%を下回り、2020年10月からの上昇トレンドで最も小幅な水準に並んだ。前年同月比は5.1%と、前月の5.3%(上方修正)に届かず、2021年6月以来の5%割れが迫った。

業種別を前月比でみると、同部門の平均時給の伸び0.2%以上だったのは13業種中で9業種と、前月の速報値時点と変わらず。今回の1位は前月と変わらず鉱業・伐採(1.1%上昇)、続いて製造業(0.8%上昇)、小売、建設、輸送・倉庫、教育・健康(0.5%上昇)、その他サービスと専門サービス(0.3%上昇)、金融(0.2%上昇)だった。一方で、NFPを最も押し上げた娯楽・宿泊は0.8%下落しており、労働参加率の改善に従い賃上げ圧力が後退したことが分かった

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:平均時給は、労働参加率の改善に合わせて伸びが鈍化

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(作成:My Big Apple NY)

〇労働参加率

労働参加率は62.4%と、2020年3月(62.6%)以来の水準に並んだ。全米の働き盛りの男性(25~54歳)は前月と比較し横ばいだったが、25~34歳と白人の間で改善した。全体的に、若い層が労働参加率の押し上げを主導した格好だ。以下は全米男性が季節調整済みで、白人は季節調整前となる。

・25~54歳 88.5%=前月は88.5%、20年2月は89.1%
・25~54歳(白人) 89.8%、7カ月ぶりの水準を回復>前月は89.7%、22年3月は90.0%と20年3月(90.3%)以来の高水準、20年2月は90.6%
・25~34歳 88.7%、3カ月ぶりの水準を回復>前月は88.5%、22年4月は89.5%と19年11月以来の高水準
・25~34歳(白人) 89.7%、3カ月ぶりの水準を回復>前月は89.5%、22年10月は90.4%と22年3月の90.5%に次ぐ高水準、20年2月は90.7%

チャート:働き盛りの男性、25~34歳は4ヵ月連続で低下

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(作成:My Big Apple NY)

働き盛りの女性(25~54歳)は、25~54歳が上昇も25~34歳は低下した。

・25~54歳 76.9%、5カ月ぶりの水準を回復>前月は76.4%、22年8月は77.2%と2004年4月(76.8%)以来の高水準
・25~34歳 77.9%、3カ月ぶりの水準を回復>前月は77.1%、22年8月は78.6%と20年1月に並び過去最高

65歳以上の高齢者の労働参加率は、男女ともにそろって低下した。

・男性 23.4%と6カ月ぶりの低水準<前月は23.6%、22年10月は24.3%と2月と並び20年2月(25.2%)以来の水準を回復
・女性 15.5%、5カ月ぶりの低水準<前月は15.7%、22年10月は16.1%と2020年3月と同水準

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は、労働参加率が上昇したものの前月比2.7%増の531.7万人と、4ヵ月ぶりに増加した。男性が前月比15.9%増の272.2万人と4カ月ぶりに増加し押し上げた半面、女性は同8.3%減の259.2万人と4カ月連続で減少した。

チャート:職を望む非労働力人口、男性が減少し女性が増加

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(作成:My Big Apple NY)

〇病気が理由で働けなかった人々

雇用増加を支えたのは、「病気が理由で働けない」とする人々が減少したことが一因と考えられよう。1月は前月比23万人減(2カ月連続で減少)の128万人で、過去2カ月間の労働参加率の改善と整合的だ。

チャート:病気が理由で働けなかった人々は高水準を維持したが、労働参加率は改善

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(作成:My Big Apple NY)

〇男女別の労働参加率と失業率

男女別の労働参加率は、まちまち男性は若い世代で改善したものの全体では67.9%と5カ月ぶりの水準へ低下した。前月までは4カ月連続で68.1%と20年3月(68.5%)以来の高水準を保っていた。女性は逆に57.0%と、20年3月の水準に並んだ22年8月の57.1%に接近した。

チャート:男女別、労働参加率、直近は女性の低下が顕著に

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(作成:My Big Apple NY)

男女の失業率は、まちまち労働参加率が低下した男性が1970年1月以来の低水準だった3.4%から3.6%へ上昇した。一方で、女性は労働参加率の上昇にも関わらず、前月まで2カ月連続で3.6%だったところ3.3%と1952年9月以来の低水準に並んだ

〇人種・男女別の就業者、20年2月比

人種・男女別の就業者数を20年2月比でみると、引き続き黒人男性を始めヒスパニック系男性、ヒスパニック系女性がプラスだったほか、黒人女性が22年4月以来、9カ月ぶりにプラスに転換した(前月は1.3%減→0.3%増)。黒人男性は前月の8.0%増→8.2%増と再び上げ幅を拡大した。一方で、ヒスパニック系男性は前月の4.0%増→3.3%増、ヒスパニック系女性も前月の5.2%→4.8%とそれぞれ伸びを縮めた。

一方で、マイナス圏をたどる白人男性と女性はそれぞれ下げ幅を拡大。白人男性は前月が0.5%減のところ1.0%減、白人女性は前月の2.7%減に対し3.1%減となった。

チャート:男女・人種別の就業者数、20年2月との比較

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(作成:My Big Apple NY)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。

人種別の労働参加率は、黒人が労働参加率の改善を牽引した一方で白人とヒスパニック系は横ばい、アジア系は2カ月連続で低下した。

・白人 62.1%=前月は62.1%、22年3月は62.3%と2020年3月(62.6%)以来の水準を回復、20年2月は63.2%
・黒人 62.9%、20年2月(63.2%)以来の高水準>前月は62.4%
・ヒスパニック系 66.3%、22年8月以来の水準を維持=前月は66.3%、20年3月は67%、20年2月は68.0%
・アジア系 64.1%、10カ月ぶりの低水準<64.2%、22年8月は65.3%と19年10月以来の高水準に並ぶ
・全米 62.4%、22年3月に並び2020年3月(62.7%)以来の水準を回復>前月は62.3%、20年2月は63.3%

チャート:人種別の労働参加率、アジア系以外は上昇し特にヒスパニック系が上振れ

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(作成:My Big Apple NY)

人種・男女別では以下の通り。黒人の男女、ヒスパニック系女性で上昇傾向、白人女性は改善も、白人男性とヒスパニック系男性は直近で伸び悩んだ。

チャート:黒人の男女、ヒスパニック系女性を中心に直近でゆるやかに上昇、黒人男性のみ20年2月を上回る水準

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(作成;My Big Apple NY)

人種別の失業率は、黒人のみ低下し他は上昇した。黒人は前月比0.3%ポイントも低下し、2019年8月は過去最低を記録した5.3%に次ぐ水準を記録した。一方で、白人は労働参加率が横ばいだったにも関わらず、20年3月以来の低水準だった前月から小幅ながら上昇。ヒスパニック系やアジア系に至っては0.4%ポイントも大幅上昇した。

・白人 3.1%>前月は3.0%と20年2月(3.0%)以来の低水準
・黒人 5.4%、過去最低を記録した19年8月(5.3%)に次ぐ水準<前月は5.7%
・ヒスパニック系 4.5%>前月は4.1%、22年9月は3.9%とデータが公表された1973年以来の低水準
・アジア系 2.8%>前月は2.4%と19年6月以来の低水準に並ぶ
・全米 3.4%、1969年5月以来の低水準<前月は3.5%と20年2月の水準に並ぶ

チャート:人種別の失業率、全米と白人以外は低下

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(作成:My Big Apple NY)

人種・男女別では以下の通り。ヒスパニック系は男女ともに失業率が上昇したほか、白人男性、黒人男性も上昇。白人女性は横ばい、黒人女性は9カ月ぶりの水準に低下した。

チャート:ヒスパニック系の男女の上昇が顕著に。

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(作成:My Big Apple NY)

白人と黒人の失業率格差は縮小。白人の失業率が上昇したものの黒人が低下したため、失業率格差は前月の2.7ポイントから2.3ポイントへ縮小し、2019年10月以来の低水準に並んだ。トランプ前政権で記録した19年8月の1.9ポイントが徐々に視野に入ってきた。

チャート:白人と黒人の失業率格差、2019年10月以来の水準まで縮小

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(作成:My Big Apple NY)

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、大卒以外で上昇した

・中卒以下 46.0%、3カ月ぶりの水準を回復>45.6%、5カ月ぶりの低水準を維持、22年2月(46.8%)は20年2月(47.8%)以来の高水準
・高卒 56.4%、5カ月ぶりの水準を回復>前月は56.2%、22年1月は57.2%と20年2月(58.3%)以来の水準を回復
・大卒以上 72.7%=72.7%、22年5月は73.3%と20年1月以来の高水準
・全米 62.4%、22年3月に並び2020年3月(62.7%)以来の水準>前月は62.3%、20年2月は63.3%

学歴別の失業率は、中卒以外で上昇。労働参加率が上昇したにも関わらず、中卒は0.5%ポイントも改善した。一方で、高卒は労働参加率に合わせ失業率は上昇、大卒と大学院卒は労働参加率が横ばいだったにも関わらず、失業率は上昇した。

・中卒以下 4.5%<前月は5.0%、22年10月は4.4%と1992年のデータ公表開始以来で最低
・高卒 3.7%>前月は3.6%と19年9月の低水準に並ぶ
・大卒 2.0%>前月は1.9%、22年9月は1.8%と07年3月以来の低水準に並ぶ
・大学院卒以上 1.6%>前月は1.3%と21年12月以来の低水準
・全米 3.4%、1969年5月以来で最低<前月は3.5%

チャート:失業率は中卒以下と全米以外、全て上昇

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(作成:My Big Apple NY)

--今回の雇用統計の詳細のポイントは、以下の通り。

生産労働者・非管理部門の平均時給の上昇ペースは引き続き鈍化、労働参加率の上昇と米景気減速を一因に1月公表分のベージュブックの通り売り手市場から買い手市場へのシフトを示唆。特に娯楽・宿泊はNFPで最も増加幅が大きかった一方で、賃金上昇率は1年ぶりにマイナスに反転。

②働き盛りとされる25~54歳の労働参加率は25~34歳で改善を主導。ただし、男女別でみると労働参加率は男性が低下し女性が上昇したように、女性が改善を促した

チャート:年齢別をさらに細かく分けると、以下の通り。20~24歳が労働参加率の改善を主導。

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(作成:My Big Apple NY)

病気で働けなかった人々はコロナ禍以降の平均を下回るなか、労働参加率は20年3月以来の水準を回復した62.4%に並んだ。低水準にある貯蓄率が示すように、労働市場への復帰を決意した洗剤労働者が増加か。

人種別で労働参加率と失業率共に改善を主導したのは黒人、一方でヒスパニック系は労働参加率が低下したにも関わらず、失業率は上昇。白人は労働参加率が横ばいでも失業率は上昇した。過去を振り返ると、米景気減速局面で最も早く打撃を受けるのは黒人層であり”炭鉱のカナリア”とされるため、米景気が堅調な証左と評価する報道も。

学歴別では、中卒のみ労働参加率が上昇しつつも失業率も改善。一方で大卒以上は労働参加率が横ばいでも失業率は上昇する結果となり、労働参加率と失業率の改善は比較的学歴が低い労働者がけん引したと言えよう。

全体的にまとめると、他と比較して低賃金の層が労働市場の質並びに雇用の改善を主導したと結論づけられます。最低賃金の割合は人種別、年齢別で以下の通り。

チャート:年齢別、時間当たり労働者に占める最低賃金労働者の割合

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:人種別、時間当たり賃金労働者に占める最低賃金労働者の割合、ヒスパニック系が低い理由は家計調査をベースにしてあるため、不法労働者などを含まないことが挙げられる。

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(作成:My Big Apple NY)

以上の結果は、足元でリストラを進める企業動向と概ね整合的です。米大手企業のリストラ対象は、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が「ホワイトカラー・リセッション」と報じ、NBCも足元のトレンドとして伝えるように主にホワイトカラーや管理職でした。もう一つ興味深い事実として、人員削減の憂き目にあったテクノロジー職の労働者は、比較的短期間に再就職しているとの調査もあります。2022年11月時点でのジップリクルーターの調査では、レイオフされたIT職の約8割が3カ月以内に再就職できたのだとか。ここは、専門サービスでの雇用増加に表れているのでしょう。

チャート:IT職の約8割、3カ月以内に再就職

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(作成:My Big Apple NY)

また、1月ベージュブックでは採用凍結に関わる報告に加え、人員削減後に必要な人材を新たに確保できるか不透明としてリストラに踏み切れないとの内容も確認できます。

Fedによる22年3月以降の利上げでも、足元で労働市場は堅調そのものといった印象。実際、インフレ減速を一因に消費者センチメントは改善しつつあります。このままいけばソフトランディングが視野に入る半面、米1月ADP全国雇用者数や米1月チャレンジャー人員削減予定数との結果と乖離しているだけに、そのギャップが埋まるリスクにも留意したいところです。

(カバー写真:WOCinTech Chat/Flickr)

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