IMF Cut Global Growth, China’s Outlook Unchanged Again.
国際通貨基金(IMF)は19日、最新の世界経済見通し(WEO)を公表しました。2016年の世界成長見通しは3.4%増とし、前回2015年10月時点の3.6%増から下方修正。2017年も従来の3.8%増から3.6%増へ引き下げました。原油安によるブラジルやロシアなど、産油国の経済見通しの下方修正が響いた格好です。IMFは、1)中国経済の鈍化とリバランス(内需主導型経済への移行にかかる調整)、2)商品先物価格の下落、3)エマージング諸国での緊張、4)米国の利上げに伴うドル高及び金融環境引き締めに関わるバランシート及び資金繰り問題、5)リスク回避、6)地政学的リスク——を指摘。先進国、エマージング国そろって見通しを下方修正しています。ただし、前回と同じく中国は据え置きました。
国・地域別でみると、米国は2016年につき従来の2.8%増から2.6%増へ引き下げています。緩和的な金融環境と労働市場が成長を支援すると見込むものの、ドル高の影響を理由に挙げています。ホリデー商戦に象徴されるようにガソリン価格の下落を受けながら個人所費が伸び悩んだ点も、検討されたに違いありません。2017年も、従来の2.8%増から2.6%増へ下方修正。ゆるやかな利上げが見込まれるものの、エネルギー関連企業の資金調達問題を抱えることもあって、引き下げを決断した模様です。
ユーロ圏は、2016年につき前回の1.6%増から1.7%増へ上方修正されました。エネルギー価格の下落による好影響が意識されたほか、欧州中央銀行(ECB)による追加緩和が期待されています。2017年は従来通り、1.7%増でした。日本は2016年につき1.0%増で変わらず。ユーロ圏と同じく原油安が個人消費を支えると予想されています。2017年は消費税増税が材料視されたのか、0.1%ポイント下方修正の0.3%増でした。
注目の中国は、前回に続き修正なし。2016年は6.3%増、2017年は6.0%増でした。予想こそ据え置かれたものの、2015年の成長率が6.9%で25年ぶり低水準だったことを踏まえると、大幅な減速が見込まれていることも事実。景気鈍化や人民元安による投資減速のほか、輸出・投資主導型成長モデルから消費・内需主導型へシフトする過程でのリスクにも引き続き注意を払っていました。
WEOのまとめ役であるモーリス・オブストフェル主席エコノミストは、CNBCに出演し「先進国に対しては2016年に上振れの可能性を見ているものの、3ヵ月前ほどではない」と指摘。中国の見通しについては「1年前こそ市場と比較し悲観的だったが、今では我々の見通しが正しかったと証明された」と振り返る。
以下は、各国・地域の成長見通しで()内の数字は前回7月分あるいはその後の改定値となります。
2016年成長見通し
世界経済→3.4%(3.6%)
先進国→2.1%(2.2%)
米国→2.6%(2.8%)
ユーロ圏→1.7%(1.6%)
独→1.7%(1.6%)
仏→1.3%(1.5%)
伊→1.3%(1.2%)
西→2.7%(2.5%)
日本→1.0%(1.0%)
英国→2.2%(2.2%)
カナダ→1.7%(1.7%)
新興国→4.3%(4.5%)
中国→6.3%(6.3%)
インド→7.5%(7.5%)
ASEAN5ヵ国→4.8%(4.9%)
ブラジル→マイナス3.5%(マイナス1.0%)
メキシコ→2.6%(2.8%)
ロシア→マイナス1.0%(マイナス0.6%)
2017年成長率
世界経済→3.6%(3.8%)
先進国→2.1%(2.2%)
米国→2.4%(2.4%)
ユーロ圏→1.7%(1.7%)
独→1.7%(1.5%)
仏→1.5%(1.6%)
伊→1.2%(1.2%)
西→2.3%(2.2%)
日本→0.3%(0.4%)
英国→2.2%(2.2%)
カナダ→2.1%(2.4%)
新興国→4.7%(4.9%)
中国→6.0%(6.0%)
インド→7.5%(7.5%)
ASEAN5ヵ国→5.1(5.3%)
ブラジル→0%(2.3%)
メキシコ→2.9%(3.1%)
ロシア→1.0%(1.0%)
2015年成長率見通し
世界経済→3.1%(3.1%)
先進国→1.9%(2.0%)
米国→2.5%(2.6%)
ユーロ圏→1.5%(1.5%)
独→1.5%(1.5%)
仏→1.3%(1.1%)
伊→1.3%(0.8%)
西→3.2%(3.1%)
日本→0.6%(0.6%)
英国→2.2%(2.5%)
カナダ→1.2%(1.1%)
新興国→4.0%(4.0%)
中国→6.9%(6.8%)
インド→7.3%(7.3%)
ASEAN5ヵ国→4.7%(4.6%)
ブラジル→マイナス3.8%(マイナス3.0%)
メキシコ→2.5%(2.3%)
ロシア→マイナス3.7%(マイナス3.8%)
(カバー写真:International Monetary Fund)
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