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IMF、世界経済見通しを下方修正も中国は据え置き

by • October 6, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off2670

IMF Cuts Global Growth Again While China Unchanged From July.

国際通貨基金(IMF)は6日、最新の世界経済見通し(WEO)を公表しました。2015年の世界成長見通しは3.1%増と、前回7月分の3.3%増から下方修正。2016年は7月分こそ3.8%増で据え置いたものの、今回は3.6%増へ引き下げました。IMFは、1)中国における内需主導型経済への移行、2)商品先物価格の下落、3)米国の利上げ見通し——を指摘。先進国、エマージング国そろって見通しを下方修正しています。

国・地域別でみると、米国は2015年は従来の2.5%増から2.6%増へ上方修正しています。ドル高・原油安・年初の寒波を受けながら米1−3月期国内総生産(GDP)がプラス成長へ転じたほか米4−6月期GDP確報値も力強かったため、見通しを引き上げてきました。2016年は逆に、従来の3.0%増から2.8%増へ下方修正しました。9月FOMCでこそ利上げを見送ったとはいえIMFの再三にわたる要求を尻目に年内利上げを目指す方向を維持しているためか、ドル高とともに2016年の成長を鈍化させると見込んでいます。

ギリシャ債務危機が一段落したユーロ圏は、2015年につき4月、7月と変わらず1.5%増。2016年のみ、0.1%ポイント引き下げられ1.6%増でした。これまでユーロ圏経済の優等生だったドイツの下方修正が目立った点は、興味深い。成長の約3割を輸出に依存するだけに、中国やエマージング国の影響に配慮したのでしょう。ただ、本文で明記されていなかったとはいえ直前になって9月18日に襲ったフォルクスワーゲン・ショックを反映させた可能性を微かに残します。日本は2015〜2016年ともに0.2%ポイントずつ下方修正されそれぞれ0.6%増、1.0%増でした。輸出の伸び悩みを一因に挙げています。

注目の中国は、前回に続き2015年および2016年そろって修正なし。それぞれ6.8%増、6.3%増で据え置きました。中国株安と景気減速が渦を巻きながら、現状の経済動向は「予想通り」と冷静そのものです。インド準備銀行(RBI)が利下げを実施しつつ、インドは2015年につき0.2%ポイント引き下げられ7.3%増に。2016年は7.5%増で据え置かれ、いずれにしても1999年以来で初めて中国を抜く見通しで変わりません。

WEOのまとめ役として初登場したモーリス・オブストフェル主席エコノミストは、「世界経済が足並みをそろえて力強い成長を達成するという目標は依然として遠い」と指摘。ダウンサイド・リスクは甚大とした上で、リスクシナリオに 1)商品価格の下落 2)中国の景気減速スピード加速、3)資産価格の急変動および金融市場のボラティリティ急伸——を挙げました。

以下は、各国・地域の成長見通しで()内の数字は前回7月分あるいはその後の改定値となります。

2015年成長率見通し

世界経済→3.1%(3.3%)
先進国→2.0%(2.1%)
米国→2.6%(2.5%)
ユーロ圏→1.5%(1.5%)
独→1.5%(1.6%)
仏→1.2%(1.2%)
伊→0.8%(0.7%)
西→3.1%(3.1%)
日本→0.6%(0.8%)
英国→2.5%(2.4%)
カナダ→1.0%(1.5%)

新興国→4.0%(4.2%)
中国→6.8%(6.8%)
インド→7.3%(7.5%)
ASEAN5ヵ国→4.6%(4.7%)
ブラジル→マイナス3.0%(マイナス1.5%)
メキシコ→2.3%(2.4%)
ロシア→マイナス3.8%(マイナス3.4%)

2016年成長見通し

世界経済→3.6%(3.8%)
先進国→2.2%(2.4%)
米国→2.8%(3.0%)
ユーロ圏→1.6%(1.7%)
独→1.6%(1.7%)
仏→1.5%(1.5%)
伊→1.3%(1.2%)
西→2.5%(2.5%)
日本→1.0%(1.2%)
英国→2.2%(2.2%)
カナダ→1.7%(2.1%)

新興国→4.5%(4.7%)
中国→6.3%(6.3%)
インド→7.5%(7.5%)
ASEAN5ヵ国→4.9%(5.1%)
ブラジル→マイナス1.0%(0.7%)
メキシコ→2.8%(3.0%)
ロシア→マイナス0.6%(マイナス0.2%)

2014年成長率

世界経済→3.4%(3.4%)
先進国→1.8%(1.8%)
米国→2.4%(2.4%)
ユーロ圏→0.9%(0.8%)
独→1.6%(1.6%)
仏→0.2%(0.2%)
伊→マイナス0.4%(マイナス0.4%)
西→1.4%(1.4%)
日本→マイナス0.1%(マイナス0.1%)
英国→3.0%(2.9%)
カナダ→2.4%(2.4%)

新興国→4.6%(4.6%)
中国→7.3%(7.4%)
インド→7.3%(7.3%)
ASEAN5ヵ国→4.6%(4.6%)
ブラジル→0.1%(0.1%)
メキシコ→2.1%(2.1%)
ロシア→0.6%(0.6%)

(カバー写真:International Monetary Fund

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