Can Trump Become ‘The Greatest Jobs Producer That God Ever Created’?
【追記】本記事投稿後に発表された設備投資並びに新規採用計画を順次追加していきます。
トランプ次期大統領が掲げる就任100日の優先課題と言えば、「移民・医療・雇用」です。そのうち雇用をめぐっては、11日の記者会見で「神が創造した最大の雇用創出者となるだろう」と宣言したように、意欲満々。就任前からツイッターを通じメキシコへの工場移転並びに工場新設を予定する企業を名指しで批判した甲斐あって、空調大手キャリアや自動車大手フォードが計画を撤回、米国内の雇用に注力する方針を打ち出してきました。
雇用創出を発表した企業の最高経営責任者(CEO)全員ではないものの、トランプ次期大統領は新設した戦略政策フォーラムの参加受け入れや顧問という見返りを与えています。新政権の発足前に新規採用と米国への投資計画を発表した主要企業一覧は、時系列順で以下の通り。
●キャリア 2016/11/29
・次期副大統領となるペンス知事のお膝元、インディアナ州での工場をメキシコに移転する計画を断念
・インディアナ州での雇用、1000件以上を確保
・インディアナ州は見返りに、700万ドルの税控除を付与
●ダウ・ケミカル 2016/12/9
・ミシガン州にイノベーション・センターを新設、100人を新規採用
・同日、トランプ次期大統領はリベリスCEO(2017年6月末までに退任予定)を国家製造業諮問委員会の首席顧問に指名、オバマ前大統領時代にも同様の役割を担う
・ダウ・ケミカルはデュポンと合併合意済みだが、当初2016年末に手続き完了予定のところ2017年に持ち越しへ
●IBM 2016/12/13
・向こう4年間で米国に10億ドル投資、2.5万人の雇用を創出へ
・ロムッティCEOはトランプ次期大統領が新設した戦略政策フォーラムに参加
●スプリント 2016/12/28
・5000人を新規採用、ソフトバンクの雇用計画の一環
・ソフトバンクの孫社長は、トランプ次期大統領との会談で2020年までに500億ドルの投資と5万件の雇用創出を約束
●フォード 2017/1/3
・ミシガン州の工場拡張を通じ7億ドル投資、700件の雇用創出を発表⇔メキシコでの工場建設含む16億ドルの投資を断念
・電気自動車に対し2020年までに45億ドル投資する計画の一環
●テスラ 2017/1/4
・パナソニックと立ち上げたネバダ州にあるギガファクトリーの生産を開始、新たに数千人の雇用計画を発表
・IT企業幹部とトランプ次期大統領の面談が行われた2016年12月14日、マスクCEOはペプシコのヌーイCEOとウバーのカラニックCEOを含め戦略政策フォーラムに追加で参加が決定
●フィアットクライスラー 2017/1/8
・“ジープ”のラインナップ強化を目指し、ミシガン州とオハイオ州の工場最新化に向け10億ドル投資し2000件の雇用を創出
・12日には排ガス不正問題が発覚
●トヨタ 2017/1/9
・向こう5年間で米国に100億ドル投資
・テキサス州で建設中の北米拠点や工場の改築など、発表時点でメキシコ事業継続で新設工場は政策みて判断
●アマゾン 2017/1/12
・正社員を2018年半ばまでに10万人採用、従業員を18万人から56%増加させ28万人へ
・対象者はエンジニア、ソフトウェア開発者、新卒など
・採用の多くはテキサス州やカリフォルニア州、フロリダ州、ニュージャージー州などの建設中の施設向け
●ウォルマート 2007/1/17
・2017年度(2018年1月終了)に68億ドルの設備投資、新店舗の建設のほか既存店舗の改築、オンライン部門の強化狙う
・小売部門で1万人を新規採用、建設セクターは2.4万人の雇用創出につながる可能性
●GM 2017/1/17
・米国の生産部門に10億ドル投資、7,000人の雇用
●ヒュンダイ、キア 2017/1/17
・向こう5年間に米国へ31億ドル投資
全体でみると、自動車メーカーをはじめ製造業関連ではオハイオ州やミシガン州での投資並びに採用計画が目立ちます。それもそのはず、こちらで指摘させて頂いたようにトランプ次期大統領の誕生を決定づけた6州のうち4州はラスト・ベルトと呼ばれる斜陽の製造業を抱える州でした。しかもミシガン州は製造業が占める州内総生産の割合が20%とトップで、オハイオ州でも2位の17%と高いことが分かります。米国の国内総生産(GDP)に占める製造業の割合は12.0%と産業別では4位なので、順位と比率でみれば両州における製造業の依存度の高さは明白ですよね。
米国産業別のGDPシェア、首位は金融・保険・不動産で20.3%、2位は政府で13.0%、3位は専門サービスで12.2%。
華々しい採用計画発表の裏で百貨店メイシーズは年始の恒例行事と化しつつあるリストラを今年も発表しました。シアーズは傘下のKマートと合わせ150店舗の閉鎖を決定し、ウォルマートもコーポレート部門で1,000人のリストラに踏み切ります。ネットしてみれば断然、雇用は増加する見通しで労働市場が悪化する可能性は低いものの、各社の採用計画がどれだけ就労者数を押し上げるのかは未知数。またトランプ次期大統領と共和党が結託して検討中の国境税(国境調整、海外から逆輸入する米国製品に課税する一方で、輸出には税控除を与える仕組み)も、世界貿易機関(WTO)と整合的か不透明であり、かつ原材料や中間財をメキシコへ輸出した上で完成品を米国へ輸入させれば税負担が相殺されるというオチがついてきます。また中間財や原材料を輸出できない小売業へは税負担が増大すること必至で、最終価格に上乗せされ消費者が悪影響をこうむるリスクも否定できません。そうなれば雇用を米国内にとどめきれるのか定かではなく、為替への影響もニュートラルにとどまる可能性をはらむ。個人的には、なぜ共和党がこのような込み入った荒業を検討しているのか理解に苦しんでおります。
(カバー写真:Gage Skidmore/Flickr)
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