U.S. Auto Sales Slows Down Again, Incentives Fade.
ワーズオートが発表した米2月新車販売台数は、年率換算1,747万台と市場予想の1,770万台を下回った。1月の1,748万台とほぼ変わらず。トランプ政権発足で消費者信頼感指数は急伸し、ダウも1,000ドルの上昇幅を過去最短の5週間で達成するなど楽観度が急速に高まる半面、金利上昇のハンデも重なり新車販売は前年末から減速した状態だ。なお、ワーズオートの数字は米国内総生産(GDP)の算出に使用される。
オートデータが発表した米2月新車販売台数は、前年同月比1.6.6%増の133万3,637台だった。営業日数は、1月と同じく前年同月比較で変わっていない、年率では1,758万台と前月の1,761万台を下回り6ヵ月ぶりの低水準だった。ただし2ヵ月連続で年間ベースにて過去最高だった2016年通期の1,755台を超えている。
車種ではSUVは力強さを取り戻した。販売奨励金(インセンティブ)効果が一因だが、前月から縮小していたためセダンなどその他の車種で販売動向に影響を与えた可能性がある。ガソリン価格は原油先物が2016年半ば以来の54ドル台を回復する過程で、一時2.314ドルと2016年6月以来の高値付近で推移した。
新車販売台数、直近はインセンティブ頼みの状況。
(作成:My Big Apple NY)
ケリー・ブルー・ブックによると、平均販売価格は前年同月比2.3%上昇の3万4,352万ドル(約390万円)と1月の3.3%に届かなかった。前月比では0.9%下落、前月の1.3%に続き2ヵ月連続でマイナスを示す。メーカー別の平均価格を前月比でみると、1月に続きホンダやスバル、ヒュンダイ・キアが上昇。一方でフォルクスワーゲンは3.8%と最大の落ち込みをみせたほか、ゼネラル・モーターズ(GM)をはじめフォード、フィアット・クライスラーの米系3社のほか日産が1%以上の下落となった。前年比ではヒュンダイ・キアのみ下落した。
自動車メーカー別ではゼネラル・モーターズと日産が増加し、市場予想を上回った。フォードは減少も市場予想ほど悪化しなかった一方、フィアット・クライスラーとトヨタはともに減少し市場予想より弱い。ホンダは増加したが、あと一歩で市場予想に届かなかった。
以下、米国をはじめメーカー別動向。
【GM】
GMは前年同月比4.2%増の23万7,388台となり、市場予想の2.5%増を上回った。あらためて増加に転じている。小売販売台数は4.9%増の18万8,715台と、5ヵ月ぶりに減少した前月から改善した。全体の新車販売台数で4大ブランド別をみると2ブランドで増加し、GMCを除き全て減少した前月より増えている。小売販売台数では前月に反しキャデラックのみ減少した。年間の販売台数は3年連続で過去最高を更新するか過去最高近くに到達するとし、1月より若干強気な見通しを後退させた。
・GMC 17.2%増の4万6,339台、4ヵ月連続で増加
→SUVの「アカディア」が25.9%増の8,781台と2ヵ月連続で大幅増となり、主力SUV「シエラ」も15.9%増の1万7,618台と貢献した。小売販売台数は15.6%増の3万8,417台と増加に転じた。
・シボレー 3.4%増の16万4,095台、3ヵ月ぶりに減少した前月から改善
→SUVで改善が目立ち「シルバラード」は17.1%増の5万504台、「エキノックス」も22.0%増の2万2,464台とそれぞれ前月から増加に転じた。ガソリン価格の上昇を一因に、小型車「クルーズ」が18.2%増の1万5,367台と2ヵ月連続で支えている。小売販売台数は2.8%増の12万5,007台と前月から増加に転じた。
・キャデラック 8.4%減の1万823台、2ヵ月連続で減少
→主力セダンの「XTS」が25.8%減の1,345台だったほか、その他も減少が続き、新型の中型SUV「XT5」のみ4,291台と好調だった。小売販売台数は9.8%減の9,611台と減少に転じた。
・ビュイック 9.4%減の1万6,131台、2ヵ月連続で減少
→主力のSUV「アンコール」が11.2%増の6,528台と3ヵ月連続で全体を支えたが、「エンクレーブ」や「エンビジョン」は前月に続き減少した。小売販売台数は8.1%増の1万5,840台と、3ヵ月ぶりに増加した。
【フォード】
フォードは前年同月比4.0%減の20万8,440台となり、市場予想の4.3%減より下げ幅を縮小した。2ヵ月連続で減少している。2大ブランド別では、フォードが3ヵ月連続で減少し、リンカーンは6ヵ月連続で増加した。なお同社は2016年1月、日本とインド市場から撤退を決定した。詳細は、以下の通り。
・フォード 4.5%減の19万9,696台、3ヵ月連続で減少
→アルミ製ボディのトラック「Fシリーズ」が8.7%増の6万5,956台と、単月ベースで2004年以来にて最高を記録した。SUVはまちまちで「エスケープ」が15.9%増の2万7,637台と増加に転じた一方、「エクスプローラー」は4.3%減の2万7,637台と4ヵ月ぶりに減少した。小型車は前月に続き振るわず「フォーカス」は31.8%減の1万2,691台と9ヵ月連続で減少、「フュージョン」も35.1%減の1万6,512台と7ヵ月連続で減少した。
・リンカーン 8.8%増の8,744台、6ヵ月連続で増加
→主力の「MKZ」が2.5%減の2,074台と減少に転じたが、「MKX」も0.6%増の2,390台となり全体を支えた。
【フィアット・クライスラー】
フィアット・クライスラー・オートモビルは前年同月比10%減の16万8,326台となり、市場予想の8.4%減より下げ幅を拡大した。2016年9月に増加トレンドを78ヵ月で止めた後、6ヵ月連続で前年比マイナスとなる。5大ブランド別では2016年9月~2017年1月に続き、1ブランドのみ増加した。詳細は、以下の通り。
・ラム 4%増の4万2,785台、9ヵ月連続で増加
→主力の「ラム」が5%増の3万9,046台と6ヵ月連続で増加した程度で、これまで増加していた「プロマスター・バン」は2%減の2,648台と減少に転じた。
・ジープ 715の6万2,345台、6ヵ月連続で減少
→「チェロキー」が11%減の1万3,615台と減少トレンドを維持したほか、「ペイトリオット」も51%減の5,512台と4ヵ月連続で減少した。一方で「グランド・チェロキー」は11%増の1万8,925台と3ヵ月連続で増加。「ラングラー」も2%増の1万3,641台、「レネゲード」も11%増の7,915台と増加したが、ジープ全体でプラスを回復できなかった。
・ドッジ 7%減の4万3,878台、6ヵ月連続で減少
→主力の「ジャーニー」が55%増の9,909台と3ヵ月連続で増加したが、「キャラバン」が2%減の1万3,682台と5ヵ月連続で減少した。「チャージャー」も21%減の6,930台と3ヵ月連続で減少した。
・クライスラー 28%減の1万6,730台、13ヵ月連続で減少
→新型「パシフィカ」が9,042台だったものの、セダンの「200」も65%減の2,194台と減少トレンドをたどった。
・フィアット 19%減の2,145台、14ヵ月連続で減少
→「500X」や「500L」などが軒並み2桁減を示したほか、新型「スパイダー」も302台と前月比でも1月に続き減少し全体を牽引するほどの馬力をみせなかった。
自動車メーカー別、米国市場シェアはGMが17.8%で首位を堅持。2位はフォードで15.6%、3位のトヨタは11.4%まで後退し4位の日産にあと0.4%へ迫られている。
(出所:Good Car Bad Car)
【トヨタ】
トヨタは7.2%減の17万4,339台と、市場予想の4.8%減から下げ幅を広げた。2ヵ月連続で減少している。ブランド別ではトヨタが3ヵ月ぶりに減少に反転、レクサスは4ヵ月連続で減少した。詳細は、以下の通り。
・トヨタ 5.4%減の15万6,001台、3ヵ月ぶりに減少
→SUVやトラックが回復、日本では春に販売・生産を打ち切る計画のSUV「RAV4」が3,2%増の2万6,351台と4ヵ月連続で増加し単月で過去最高を更新した。「ハイランダー」も27.8増の1万5,928台と、6ヵ月連続で増加し単月で過去最高の記録を塗り替えている。さらに「4ランナー」まで28.7%増と1万912台と、力強い伸びを達成した。しかしセダンが足を引っ張り「カローラ」が11.4%減の2万7,161台と3ヵ月連続で減少、「カムリ」も15.1%減の2万7,498台と9ヵ月連続で減少した。
・レクサス 20.6%減の1万8,838台、4ヵ月連続で減少
→SUVやトラックが7.0%減の1万2,162台と2ヵ月連続で減少し、4車種全てマイナスだった。乗用車部門も38.3%減の6,176台と、3ヵ月連続で7車種中全て減少した。
【ホンダ】
ホンダは前年同月比2.3%増の12万1,686台となり、市場予想の2.4%増を下回り4ヵ月連続で増加した。単月ベースでは、2ヵ月連続で過去最高を更新した。2大ブランド別では、ホンダが4.3%増の11万822台で全体に寄与。特に「CR-V」が26.3%増の3万1,898台と、単月で過去最高を塗り替えた。もっとも、「シビック」が2.4%減の2万7,039台と減少している。アキュラは逆に14.9%減の1万864台だった。
【日産】
日産は3.7%増の13万5,740台となり、市場予想の1.8%減より力強い結果となった。2大ブランドでは日産、インフィニティが1月に続きそろって増加した。詳細は、以下の通り。
・日産 1.2%増の12万2,003台、4ヵ月連続で増加し単月で過去最高
→SUV・トラックで主力の「ローグ」が53.7%増の3万3,149台となり、引き続き映画「ローグ・ワン/スターウォーズ」限定版のフォースが働いた。「パスファインダー」も24.2%増の8,997台と、前月に続き3桁増を維持。一方で「ムラノ」は25.2%減の5,569台と、2ヵ月連続で2桁減だった。主力セダン「アルティマ」は6.3%減の2万6,543台と4ヵ月連続で減少、「マキシマ」も6.2%減の4,898台と弱い。
・インフィニティ 32.5%増の1万3,737台、4ヵ月連続で増加
→セダンの「Q50」が2.4%増の3,444台と3ヵ月連続で増加したが、SUVの「QX60」が2.6%減の2,658台を示すなど増加トレンドに終止符を打った。
その他の海外メーカーは、以下の通り。
・フォルクスワーゲン(VW) 12.7%増の2万5,145台、4ヵ月連続で増加
→排ガス不正が発覚した2015年9月に続き、同年11月にはガソリン車にも火種が及んだ影響からか以降は11ヵ月連続で減少しつつ、2016年11月から4ヵ月連続で増加した。アウディは17.3%増の1万3,471台と増加トレンドをたどる。グループ全体では14.4%増の3万9,112台と4ヵ月連続で増加した。
・テスラ(推計値)は43.7%減の3,700台、増加トレンドを維持
・ヒュンダイは±0%の5万3,020台と横ばいに反転
・キアは14.2%減の4万2,673台と2ヵ月連続で減少
自動車メーカーからディーラーへの1台当たりインセンティブは前年同月比13.5%増の3,443ドルで、1月の21.6%上昇の3,635ドルを下回った。とはいえ前年比で2桁増を示し、2016年10月~2017年1月に続き新車販売台数が大幅に改善した最大の理由はインセンティブ拡大にあることを確認している。前年比での伸び率はもともとインセンティブが非常に低かったスバルが60.9%の上昇と群を抜き、2位はホンダ(43.5%の上昇)、3位はフォード(23.5%の上昇)だった。
高級車部門別ランキングは、以下の通り(%は全て前年比)。今回、高級車御三家のメルセデス・ベンツ、レクサス、BMWがトップ3を維持した。しかし、トップ3では順位が全て入れ替わり前月に2位だったメルセデス・ベンツがレクサスをかわし1位の座を奪回した。2位はBMWが3位から浮上、1位だったレクサスは3位に甘んじた。そのほか日産が躍進し6位にランクアップした。
1位 メルセデス・ベンツ 7.2%増の2万7,035台
→2月は2ヵ月連続で1位、年初来でも5.5%増の5万4,611台と首位。2016年は前年比0.4%増の37万4,541台で、2015年に続きトップの座に堅持した。なお2013年は1位だったが、2014年ではBMWに1位を明け渡していた。
2位 BMW 0.3%増の1万8,109台
→2月は2ヵ月連続で2位、年初来でも0.2%増の2万2,824台で2位。2016年は9.5%減の31万3,174台で3位、2015年は1.8%増の34万6023台で首位の座を宿敵メルセデス・ベンツに明け渡していた。2014年では1位、2013年は2位だった。
3位 レクサス 20.6%減の1万8,838台
→2月は2ヵ月連続で3位、年初来でも23.0%減の3万3,910台で3位。2016年は3.9%減の33万1,228台で2位に終わった。2015年は10.7%増の34万4601台で3位。2011年まで11年間連続で首位を飾ったが、東日本大震災後に順位を落とし2014年、2013年、2012年に続き3位にとどまる。
4位 ビュイック(GM)9.4%減の1万6,131台
→2月は前月の5位から4位へ浮上、年初来では18.9%減の2万9,248台で5位。2016年は2.9%増の22万9,631台、2015年も2.6%減の22万3055台で共に4位だった。
5位 アウディ(VW)17.3%増の1万3,741台
→2月は前月の4位から5位へ転落、年初来では14.3%増の2万9,642台と4位。2016年は4.0%増の21万213台、2015年は11.1%増の20万2202台で共に5位だった。
6位 インフィニティ 32.5%増の1万3,737台
→2月は2ヵ月連続で6位、年初来でも33.9%増の2万5,295台で6位。2016年は3.6%増の13万8,293台で8位だったが、順位を上げて2017年のスタートを切った。2015年は13.8%増の13万3498台で8位となる。
7位 アキュラ 14.9%減の1万864台
→2月は前月の8位から7位へ浮上、年初来では12.8%減の2万66台で8位。2016年は8.9%減の16万1,360台で7位、2015年は5.6%増の17万7165台で6位に収まっていた。
8位 キャデラック 8.6%減の1万823台
→2月は前月の7位から8位へ転落、年初来では6.5%減の2万1,121台で7位。2016年は3.0%減の17万6台で6位だったが、「インフィニティ」に追い抜かれた。2015年は2.6%増の17万5,262台で、7位だった。
新車販売台数:モデル別ランキング(%は前年同月比)で、日産「ローグ」が5位から4位へ浮上、代わりにホンダの「CRV」が5位から4位に転落した。他にはトヨタの「カローラ」が圏外に落ち込み、代わりに日産「アルティマ」がランクインした。
1位 Fシリーズ(フォード)8.7%増の6万5,956台、前月も1位
2位 シルバラード(GM)17.1%増の5万504台、前月も2位
3位 ラム(フィアット・クライスラー)5.3%増の3万9,046台 前月も3位
4位 ローグ(日産)53.7%増の3万3,149台、前月は5位
5位 CR-V(ホンダ)26.3%増の3万1,898台、前月は4位
6位 エスケープ(フォード)15.9%増の2万7,637台 前月は9位
7位 カムリ(トヨタ)15.1%減の2万7,498台、前月は10位
8位 シビック(ホンダ)13.6%減の2万3,095台 前月は6位
9位 アルティマ(日産)6.3%減の2万6,543台、前月は圏外
10位 Rav4(トヨタ)3.2%増の2万6,351台、前月は7位
SUV版:新車販売台数、ブランド別ランキング(%は前年同月比)は以下の通り。日産「ローグ」がトップの座をホンダ「CRV」が奪い返している。下位でも変動があり、トヨタがランクアップしたほか9位と10位にフィアット・クライスラーのジープ・ブランドが入り、スバルの「アウトバック」や「フォレスター」が圏外に落ち込んだ。順位が入れ替わった。
1位 ローグ(日産)53.7%増の3万3149台、前月は2位
2位 CR-V(ホンダ)26.3%増の3万1,898台、前月は1位
3位 Rav4(トヨタ)3.2%増の2万6,351台 前月も3位
4位 エスケープ(フォード)15.9%増の2万7,637台 前月も4位
5位 エキノックス(GM、シボレー)13.3%増の2万2,464台、前月は6位
6位 エクスプローラー(フォード)3.1%減の2万1,696台、前月は5位
7位 ジープ・グランドチェロキー(フィアット・クライスラー)11.4%増の1万8,925台、前月も7位
8位 ハイランダー(トヨタ)27.8%増の1万5,928台、前月は10位アウトバック(スバル)8.0%増の1万3,186台、前月は9位
9位 ジープ・ラングラー(フィアット・クライスラー)2.2%増の1万3,641台
10位 ジープ・チェロキー(フィアット・クライスラー)11.3%減の1万3,615台
(カバー写真:Ford)
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