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ADP全国雇用者数はハリケーンで鈍化、ISMサービス業は約12年ぶりの高水準

by • October 5, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off1972

ISM Services Sector Index Hits 12-Year High, But National Employment Slows.

米9月全国雇用者数、米9月ISM非製造業景況指数、米9月マークイット非製造業PMI確報値をおさらいしていきます。

米9月ADP全国雇用者数は前月比13.5万人増となり、市場予想と一致した。前月の22.8万人増(23.7万人増から下方修正)には届かず。米大統領選を直前に控えた2016年10月以来で最低となる。ハリケーン“ハービー”や“イルマ”の影響で、雇用が押し下げられたもようだ。ただし、ADP全国雇用者数は2010年2月以来の増加トレンドを保つ。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。

ADP全国雇用者数、ハリケーンの影響で米大統領選前の水準へ逆戻り。

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(作成:My Big Apple NY)

セクター別では、サービス部門が8.8万人増と前月の18.2万人増(修正値)を下回り、少なくとも過去6ヵ月間で最低だった。雇用統計の就業者数の伸びランキングで上位常連での専門サービスが5.1万人増と前月の4.7万人増を上回ったものの、同じく雇用の牽引役である教育・健康が2.9万人増と6ヵ月ぶりの低水準だった。娯楽・宿泊は2.1万人増と、前月の4.1万人から半減し4ヵ月ぶりの低い伸びに。貿易・輸送・公益と情報はそれぞれ減少に転じ、前者は5ヵ月ぶり、後者は4ヵ月ぶりとなる。

一方で、ハリケーン直撃にも関わらず財部門(製造業、建設、鉱業)は4.8万人増と前月の4.7万人増を上回り足元で最高を示した。復興需要を反映したためか建設が2.9万人増と6ヵ月ぶり最大の伸びを迎え、全体を押し上げている。一方で、原油価格が50ドル付近で安定するなか、鉱業は0.1万人増と前月と変わらず。製造業は1.8万人増と、前月の2.4万人増から伸びをせばめた。

ADPとともに統計を担当するムーディーズ・アナリティクスのマーク・ザンディ主席エコノミストは、結果を受け「ハリケーン“ハービー”と“イルマ”は労働市場に打撃を与えたものの、特殊要因を除くと雇用環境は引き続き力強い」と評価した。

――ハリケーンが上陸したものの、高賃金の職が多い財部門で雇用の底堅さを確認しました。米8月雇用統計でもサービス部門より力強さをみせており、ポジティブ・サプライズと言えそうです。サービス部門については米8月雇用統計から鈍化がみられ、ハリケーンで小売店舗や学校などが閉鎖された影響だけで減速したとは想定しづらい。米9月新車販売台数がハリケーンの力強い買い替え需要の実態を現わしたとはいえ、いつまで継続するかも不透明です。幸い、年末はホリデー商戦の雇用増加が期待できるものの、サービス部門の雇用鈍化が続くのか要注意です。

▽米9月ISM非製造業景況指数、税制改革期待から約12年ぶりの高水準

米9月ISM非製造業景況指数は59.8となり、市場予想の55.5を上回った。前月の55.3も超え、2005年8月以来で最高に。ハリケーンの影響は限定的で、9月に入りトランプ政権が9月末の税制改革発表に向け地均しを進めるなか、センチメントが大幅に改善したとみられる。17業種別では、前月に続き15 業種が拡大を報告した。縮小を報告したのは“芸術/娯楽”と“鉱業”となり、8月の“管理/サポート”と“農業/木材/漁業”は拡大に転じた。

ISM非製造業景況の内訳をみると、全体的に下方向を示す。ビジネス活動をはじめ新規受注、雇用、新規輸出受注など軒並み前月を上回った。ただし、一連の項目は過去6ヵ月以内の高水準の範囲にあり、むしろ直近で最高に達した仕入れ価格の伸びが際立つ。詳細は、以下の通り。

・ビジネス活動 59.8>前月は57.5、6ヵ月平均は56.8
・新規受注 63.0>前月は57.1、6ヵ月平均は59.4
・雇用 56.8>前月は56.2、6ヵ月平均は55.3
・新規輸出受注 56.0>前月は55.0、6ヵ月平均は56.5
・在庫変化 51.5<前月は53.5、6ヵ月平均は54.3
・仕入れ価格 66.3>前月は57.9、6ヵ月平均は56.5

▽米9月マークイット非製造業PMI確報値、前月から低下も高止まり

米9月マークイット非製造業PMI確報値は55.3となり、市場予想並びに速報値の55.1を上回った。ただハリケーンの影響から、2015年11月以来の高水準だった前月の56.0には届いていない。内訳をみると、新規受注が前月を下回ったものの2015年11月以来の水準近くを維持。雇用は3ヵ月ぶりの低い水準だったが、約2年ぶりの高水準だった8月から大きく後退したわけではない。製造業と合わせた総合指数は54.8と、速報値の54.6から上方修正。ただし7ヵ月ぶりの高水準だった前月の55.3を下回った。

クリス・ウィリアムソン主席ビジネス・エコノミストは、結果を受け「ハリケーンの直撃を受けながら経済の耐性を示し、心強い」と評価した。むしろ、ハリケーンでもたらされた「復興需要や職場復帰が10~12月期の成長を押し上げる」と予想。7~9月期の成長率については「前期比年率2.0%増」を見込みつつ、「見通し指数が7ヵ月ぶりの水準へ低下した点は懸念材料」と付け加えた。

――ISM非製造業景況指数が約12年ぶりの高水準で、マークイット・サービス業PMIは前月以下となり、まちまちでした。雇用も対照的で前者が4ヵ月ぶりの高水準だった一方、後者は3ヵ月ぶりの低水準。過去の推移をみると、先行性で言えばマークイットとの整合性が高いように見えます。

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(作成:My Big Apple NY)

ブルームバーグのエコノミスト予想平均では、米9月雇用統計・NFPは前月比8.3万人増です。ハリケーン効果をにらみ弱い数字が織り込まれているので、正念場は10月以降になります。ホリデー商戦の雇用増が復興需要と合わせ米経済を活性化させるのでしょうか。

(カバー写真:Viewminder/Flickr)

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